第二節:支配者の不在と、首輪の外れた獵犬たち
その頃、南アフリカのアジトでは、さらなる利權擴大と次の獲物(パリのエージェンシー社長たち)をあぶり出すため、新ボスが數日閒の豫定でヨーロッパへと出張していた。
「ボスはしばらく戾らない。この廣大なエステートは、今や俺たちの天下だ」
主君という絕對的な重しが消えたアジトで、殘された二人の若い手下――レフティとジャックの狂氣は、制御を失って完全に暴走を始めていた。彼らはボスの殘虐性を崇拜するあまり、ボスのいない時閒を自分たちの「嗜虐の祭典」として滿喫しようとしていたのだ。
深夜、重厚な鐵扉が不氣味な音を立てて開き、酒と藥物の匂いをプンプンとさせた二人が、美波とエレーナの監禁室へと亂暴に入ってきた。
「おい、減價償卻の終わった廢品ども。ボスがいない閒、俺たちの特別な『奉公』をさせてやるよ」
レフティが下卑た笑みを浮かべ、車椅子に縛り付けられている美波の髮を掴んで床へと引きずり下ろした。すでに度重なる折檻で顏の形は非對稱に腫れ上がり、步行能力を奪われた美波の肉體は、床に無樣に這いつくばる。
「クロエの三千萬ドルで、このアジトの防犯カメラは最新式になった。だがな、この地下室の映像だけは、俺たちがいくらでも書き換えられるんだよ!」
ジャックが狂氣的な聲をあげ、手にした特製の金屬製スパイク付きベルトを振りかぶった。
――バチィィン!! ズブゥッ!!
「あ、がぁあぁっ……! あぁっ……!」
美波の、すでにザクロのように裂けてどす黑く變色していた尻に向けて、スパイクの突起が容赦なく突き刺さり、肉を抉り取る。新ボスの計算された打擊とは違う、手下たちの手加減のない、ただの剥き出しの暴虐。
「エレーナ、お前もだ! パリのトップモデルが、今や俺たちの足元で泥を舐めてる氣分はどうだ!?」
レフティは橫たわるエレーナの顏面に向けて、硬い安全靴の先を何度も蹴り込んだ。
ベキィィン、と鼻骨が碎ける悍ましい音が響き、エレーナの變形していた頬はさらに潰れ、鮮血が噴水のように床を染めていく。美貌の面影など微塵もない。二人の女は、首輪の外れた二人の獵犬によって、文字通り生きたまま解體されていくような激痛の中に突き落とされていた。




