第三十五章の第一節:肉體を穿つ打擊の音と、五人の咽び
「あ、がぁっ……! ぅあ、ああぁっ……!!!」
最下層の薄暗い檻のなかに最初に響き渡ったのは、ブザーの音などではなく、美波の喉を潰した絕叫と、鈍い肉聲の連續であった。
首席の處刑を經て、完全に知性なき獸どもの手に落ちたこの囚人帝國においては、朝の始まりを吿げるのは看守たちの事務的な打擊そのものであった。
衣服を一筋も身に纏わぬまま、床面へと打ち込まれた鋼鐵のアンカーボルトに四肢を完全固定され續けてゐる美波、エレーナ、クロエ、そして母と姉の五人。彼女たちの前章の最後の戰いによって顏も胸も尻も完全に潰され、原型を失った五體に向けて、看守となった囚人たちの重厚な鐵パイプやスパイク付きのベルトが、手加減という槪念を失った質量で容赦なく振り下ろされてゐた。
「ひっ……あ、が、あぁ……!!!」
エレーナの變形した四肢がきしむ音と、クロエの粉碎された頬骨から流れる新しい鮮血。
「いや、いやぁぁぁっ……!」
一度は日本へ逃げ歸りながらも再捕縛され、精神の去勢を完了してゐたはずの母と姉の口からも、每朝のこの過酷な打擊の前には、理性を失った狂亂の悲鳴が漏れ出た。
五人の放つ悲鳴と絕叫は、檻の冷たい壁に反響し、重なり合いながら、ひとつの巨大な哀哭の渦となって最下層の空閒を滿たしていく。だが、この朝の暴力は、彼女たちに「死ぬことすら許されぬ家畜の現實」を每朝骨の芯まで刻み込むための、最初の「狂宴の序曲」に過ぎなかった。




