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終章:美波の運命
どれほどの時閒が經ったのだろう。
叩きつける音が止み、鬪技場を包む歡聲が、遠くの地鳴りのように聞こえる。
私の身體は、鎖だけで辛うじて十字架に吊り下げられていた。顏は左右に異常に膨れ上がり、どこが目や口かも分からないほどに破壞され盡くしている。下半身は完全に肉が爆ぜ、自身の血によって赤黑く染まった肉の塊へと成り果てていた。かつて「美波」と呼ばれた、美しく誇り高かった女の原型は、そこには微塵も殘っていなかった。
「……ここまで、だな」
意識の底で、靜かに冷たい風が吹いた。
霸權爭いに卷き込まれ、ボスが變わるたびにその所有物として弄ばれ、最後はこうして、組織の新しい秩序の生贄として衆目の前で嬲り殺される。それが、私のたどるべき、最初から決まっていた運命だったのだ。
腫れ上がった瞼の隙閒から、天井の眩しい照明が、かすかに歪んで見えた。
私はもう、怒りも、悔しさも、痛みすらも感じなくなっていた。ただ、自分が守ろうとした誇りが、肉體と共に完全に粉碎されていく虛無感だけが、冷たく心を支配していく。
最後の一瞥が、私の歪んだ視界から消えていく。
觀客たちの滿足げな歡聲を聞きながら、私はゆっくりと、暗闇の底へと沈んでいった。
美波の運命は、ここで完全に、そして殘酷に幕を閉じた。




