先輩と悪魔
聞いてはいたものの、実際に見るとこれは本当にすごいな。予想をはるかに超えてた。
朝の始業前、『お前んとこのすごいかわいい先輩がすごいことになっとるぞ』、と同じクラスの子数名が興奮を隠さずあたしに事情を尋ねてきた。なので、
『ちょっと前分身の術が暴走して宇宙服で宇宙飛んでったけどその後のことは知らん』
と答えると、彼女らは一人の例外もなく頭の上に?マークをいくつも浮かべていた、
その後、お昼にはもう学校中その話題で持ちきりであった。あたし以外は。
今はテスト前で部活はないんだけど、うちの部は正式なものでもないし、その期間中、あたしと先輩は部室というか教室でちょっと勉強してから帰っているので、まあそのときでいいやと様子は見に行かなかった。
というわけで、すごいすごいと話だけは聞いていたんだけど、まあうちの先輩だし。大袈裟に言ってるだけで実際はそれほどでもないんじゃないの、と高をくくっていたんだけど。
先輩が悪魔になっていた。
頭にはゆるいS字状にくねった巨大な二本の角。
漆黒の髪は長く美しいままで以前と変わらず。
目は白目だった部分が黒、黒目だった部分が深い赤、中心の瞳孔は赤交じりの黒。
耳と鼻も以前と同じで、別に大きくなって尖っているということもない。
血色を増した唇の両端上側からは三角形の犬歯が二本飛び出している。
肌は紫がかった青色だけど、死体のようにくすんだ不健康なものではなく、違和感を超越して艶めかしく思える絶妙な色合いである。
手にはこん棒。指先の真紅の爪は鋭いけど長すぎず、それをちゃんと握れるぐらい。
以上、そんな圧倒的強者感をむんむんに漂わせる、ゲームの本編終了後の最強裏ボス第一形態という趣の造形である。
先輩の今回の冒険譚をまとめるとこう。
宇宙を飛んでたらでかい軽トラみたいな形の宇宙船に撥ねられて時空の裂け目に突っ込んだんだけど、それがとある異世界の召喚魔法によって開けられた穴で、先輩はその儀式を行った国で勇者として迎えられることになったそう。
でも、その国の人々の偉そうな態度が気に入らなかったので、敵対する悪魔側に寝返り、またこん棒一本でその国を滅ぼしたのだそう。
人類を殲滅したことについては、悪魔の方がいい奴らだったしまあ向こうの人類も悪魔も私にとっては見た目どっちも変わらんモンスターだから別に大したことじゃない、とのこと。
で、その気のいい悪魔たちの協力により、またこの世界へ送り返してもらうことができました。久々に思う存分棒を振り回せていいストレス解消になりました。と、めでたしめでたし。




