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【完結】大天使たち、日本昔話に異世界転生する。〜初恋成就作戦を決行するポンコツ地獄の王に振り回されています〜  作者: 久茉莉himari


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【5】大天使として行動しろ!?神も困る耳男ロールプレイ

その前には、後ろ手に縛られ、直に土の上に座らされたロクシーがいる。


ルシアンは痛くも痒くもないが、人間の目に“耳男”として完璧に映るように、左耳のところに布を巻いていた。

もちろん、左耳の再生などしていない。


やがてルチアーノが「揃いました!」と室内に向かって大声で叫ぶ。

簾の向こうに気配が走り、着席した長者の声が響いた。


「アナマロはおるか」


「これにおります」


「耳男に沙汰を申し伝えよ」


「かしこまりました」


ルチアーノはルシアンに向かって、次のように申し渡した。


「当家の女奴隷が耳男の耳を削ぎ落としたと聞こえては、飛騨の匠一同にも飛騨の国人一同にも申し訳が立たない。

よってロクシーを死罪に処するが、耳男が仇をうけた当人だから、耳男の斧で首を打たせる。

耳男、打て」


ルシアンが静かに答える。


「御親切は痛み入りますが、それには及びますまい」


「打てぬか」


長者の言葉に、ルシアンはすっくと立った。





斧を取り、ズカズカと進み、ロクシーの直前で一睨みする。

そのまま彼女の背後へ回り込み、斧を当てて縄をブツブツと切った。


そして元の座へ、さっさと戻る。


ルチアーノが笑って言った。


「ロクシーの死に首よりも、生き首が欲しいか」


ルシアンが口を開く。


「たわけたことを。

虫ケラ同然のハタ織女(おりめ)に、飛騨の耳男はてんで鼻もひっかけやしない。

東国の森に棲む虫ケラに耳を噛まれただけだと思えば、腹も立たない道理じゃないか。

虫ケラの死に首も生き首も欲しくはない」


棒読みで答えながら、ルシアンはハッとした。


昨日、ルチアーノに渡された脚本は、手をかざすだけで記憶した。

だが、長者の前では“耳男”として完璧に振る舞うことこそが、神の新たなる儀式に相応しいのでは……?


脚本通りだが、ここは……!


ルシアンの顔が真っ赤に染まり、汗が滝のように溢れ出す。


そう、“耳男”の心の弱点。

彼は巨大な耳の完璧な再生には拘っていたが、もう一つの弱点――


――普段は冷静沈着な天才匠だが、一度狼狽えると、それを恥じて気に病み、顔は熱く燃え、汗は滝の如くに湧き流れる――


という弱点を失念していた。


ゆえに、ルシアンはそれを忠実に再現した。


睨む芝居をするはずのロクシーは下を向き、笑いを堪えているせいで肩が小刻みに震えている。


ルシアンは燃えるように赤面し、ナイアガラの滝のように汗を流しながら、心の中で神に懺悔を捧げた。


――神よ……!

あなたの未熟なしもべをお許し下さい……!!

私は大天使として、してはならぬ過ちを犯しました!

“耳男”を理解したという、私の傲慢さは破綻しています!

今こそ“耳男”になりきり、聖なる儀式に挑みます……!


その時、ガブリエルの声が聞こえた。


「御簾を上げよ!」


凛とした声が響き、するすると御簾が上がっていく。


真っ白なコートを翻し、真っ赤なランジェリーを身にまとい、クリスタルのピンヒールで立つその姿は、朝日を浴びて神々しい美しさを放っていた――が。


ガブリエルは奥の庭を目にした瞬間、思わず叫んだ。


「……何をしている!?」

ガブリエルは一瞬、現実を疑った。

いや、いやいやいや……これは夢か?違う、悪夢だ。


粗末な服を着て地面に座るロクシー。

彼女は下を向き、肩を震わせて笑っている。


そして斧を片手にしたルシアンは燃えるように赤面し、全身から滝のような汗を噴き出していた。


ルシアン……!!

お前は、だから何がしたいの!?

なぜ“耳男ロールプレイ”を極めようとしている!? 大天使として行動しろ!!


この日本昔話的ワールドに合わせようとしているロクシーを、笑わせてどうするのだ!?


ガブリエルが心の中で絶叫していると、ルチアーノが妙にしおらしい声で告げた。


「夜長姫さま。ご覧下さい。耳男は耳を切り落とされても、なおロクシーの首を打たず、助けたのです……!」


だーかーらー!!

まず聞かせて!?

耳男ルシアンの耳をロクシーが切り落とした理由からだろう!?

しかもロクシーの首を打つ!?

ルシアンの持つあの斧でか!?

じゃあ、なぜルシアンは異常なほど赤面し、馬鹿みたいに汗を流しておるのだ!?

そこは「静かに佇む」で良いだろう!?

ルシアン! お前はいつもの無表情でいいんだよ!!


――ここは私が正さねばなるまい。

大天使ガブリエルとして……!


ガブリエルは疑問に満ちた心を微塵も見せぬ、威厳に満ちた声で言い放った。


「耳男よ。私の問いに答えよ。お前、ロクシーに耳を斬り落とされても、虫ケラに噛まれたようだと? それは本心であるか?」


ルシアンがさっと跪く。


「はい。アン……夜長姫さま。本心でございます」


「後で嘘だと言っても駄目だ。私に誓ってそう言えるのか?」


ルシアンは真剣な眼差しで答えた。


「そんなことは言いやしません。虫ケラだと思っているから、死に首も生き首も真っ平です」


――ハイ出た! 棒読み!!

なぜ!?

さっきまで大天使ガブリエルと大天使ルシアンの会話が成立していたのに……!!


頭を抱えそうになったガブリエルは、ぐっと堪えて新たに命じた。


「ロクシーよ。ならば耳男の片耳も噛んでやれ。虫ケラに噛まれても腹が立たないそうだから、存分に噛んでやるといい」


……良し、決まった!

これでロクシーの本心が分かる!

ルシアンは後回しだッ!!


「……ハイ。でも道具がありませんけど……」


ロクシーは笑いを堪えながら答えた。


ルチアーノがささっと前へ出る。


「虫ケラの歯を貸そう。夜長姫さまの亡くなったお母様の形見の品のひとつ――懐剣だ。だが、耳男の耳を噛んだ後でお前にやろう」


ルチアーノ……!!

なぜお前が手を貸す!?

ここはロクシーが「……ハイ。でも道具がありませんけど……」からの!

「耳を落としたりしたくないです」――「ではなぜ昨日は落とした?」と、私が理由を聞く流れだったのにッ……!!


ロクシーは笑いを引っ込め、「では……」とルチアーノから懐剣を受け取った。


ルシアンは尊敬に満ちた眼差しでガブリエルを見つめている。

ただし、再び燃えるように赤面し、ナイアガラの滝のように汗を流しながら。


………えーと。

でもまあ、ルシアンは耳男としてロクシーを助けたのだよな?

つまりロクシーが耳男ルシアンの耳を切り落とす必要は――無い。


……って、ロクシー!!

何その手の動き!?それ“耳を掴む仕草”じゃないの!?


ザクッ……。

滴る鮮血……。


ガブリエルはパタンと倒れた。


そして、なぜかルチアーノも倒れた。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

明日も17時更新です☆


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