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第37話 完全に素人

挿絵(By みてみん)

「声優」と言うお仕事の存在を知らなかった女子高生が声優を目指して奮闘する、笑いあり涙ありの……いえ、ほとんど笑いだらけの楽しい青春ストーリーです。

声優の井上喜久子さんが実名で登場しますが、ご本人と所属事務所のアネモネさんには快く承諾をいただきました! ありがとうございます!!

第1話と第2話を井上さんに朗読していただきましたが、このたび第16話と17話も、朗読していただきました!

朗読を聞くには下のURLをコピペして飛んでください!

謎の対談も、聞いていただけると幸いです(笑)

https://x.gd/9kgir

更新情報はXで!「@dinagiga」「@seitsuku」

 城島と栗山のため息が、アニ研の部室に大きく響いた。

 たった今、雫たち声優部による「ハチドリのひとしずく」の朗読が終わったところである。

 顔を見合わせる城島と栗山。

「チーフ、はっきり言ってあげた方が、彼女たちのためになりますよ」

「そうね」

 苦笑する城島。そしてスッと顔を上げ、雫たちに視線を向ける。

「正直に言ってもいいかしら?」

「よろしくお願いします!」

 雫がそう言って頭を下げると、他の部員たちも後に続いた。

「お願いします!」

 城島は、ふうっとひとつ息を吐くと、皆を見渡す。

「桜田さんと伊勢さんは、なかなか上手いと思うわ」

「ありがとうございます」

 ニッコリと笑う麗華。

 だが結芽は、少し首をかしげた。

「でも、私と麗華、演技の種類が違うと思う」

「あら、鋭いわね」

 城島がニヤリと笑顔になる。

「伊勢さんは、朗読劇にしては少し演技が大げさかも」

 なるほどと、合点がいくとばかりにひとつうなづく麗華。

「そうですわね。わたくしの朗読は、演劇部でのレッスンを基礎にしていますから」

 そう言って麗華は、少し困ったような表情を見せた。

「桜田さんは逆。分かりやすい朗読だとは思うけど、強弱をあまり付けないからナレーションと言った方がいいかもしれないわ」

 その言葉に、結芽がうなづく。

「放送部としては満点」

 栗山が軽く吹き出した。

「いや、満点は言い過ぎだよ。でも、確かにJコンのナレーション部門だったらいい線行くかもしれないね」

「私もそう思うわ」

 城島がそう同意すると、結芽がなぜかガッツポーズをした。

 それに凛がツッコミを入れる。

「Jコンは放送部のコンクールじゃん! 声優部としてはダメだっつーの!」

「でも、褒められるとうれしい」

 そう言った結芽は、胸ポケットのぬいぐるみの頭をうんうんと動かした。

「伊勢さん桜田さんは、声優としての朗読がどんなものなのかを考えるといいと思うわ」

「恐れ入ります」

「分かったと、キクラゲも言ってる」

 その時、雫が一歩前に踏み出した。

「私と凛ちゃんはどうでしたか!?」

 城島をじっと見つめる瞳が、期待と不安に揺れている。

「まず高千穂さん。あなた、発声は出来てると思う。でも、表現が荒削りでムラだらけ。聞いていて疲れちゃう」

「あちゃー! そうじゃないかと思ってたんだぁ。中学卒業してから、なーんにも練習してないもんなぁ」

 頭をポリポリとかく凛。

「そして淡島さん」

「はい!」

 少し間を開けて、城島が雫にゆっくりと告げた。

「あなた、完全に素人ね。発声もイントネーションも無茶苦茶だったわ」

 がっくりと肩を落とす雫。

「でもね」

「でも?」

「演じたいという熱意は感じられたわよ」

 その言葉に雫は、自分の中にわずかに残されていた一縷の望みが、闇深くへ沈んでいくのを感じていた。

 熱意だけで、声優の演技に近づけるほど甘くはないだろう。

 本能的に、そう思ってしまう。

 雫の表情が、ますます暗くなった。

「あと、声質がとてもいいと思う」

「それ、ボクも思いました!」

 栗山も城島に同意した。

「なんていうか、魅力があるんですよね。人を惹きつけるというか」

「私もそう思うわ。だからこそもったいない」

「もったいない?」

 首をかしげる雫。

「せっかく、生まれつきいい声をもらっているんだから、ちゃんと練習すればいいのにって思う。たぶん、声優としてのレッスン、したことないんでしょ?」

 その問いに、雫が凛に顔を向けた。

「声優のレッスン?」

 そんな雫を助けるように、凛が城島に言う。

「雫、声優って仕事自体知らへんかったから、まだそこまでにはたどり着いておまへんのですわ!」

「どうして関西弁!?」

 姫奈と英樹が同時に突っ込んだ。

「なんとなく」

 凛がてへぺろと舌を出す。

 その時、雫が城島に詰め寄った。

「どうすればいいんですか!? 私に、いえ私たちに声優のレッスンを教えて下さい!」

 声優のことになると、とても情熱的になるのね。

 そう思い、城島は雫を見つめ、ニッコリと微笑んだ。

「チーフ」

 その時、栗山が深刻そうな声で城島に声をかけた。

「栗山くん、どうしたの?」

「放送部と演劇部は、部活としては十分にプロを目指してもいい程のクオリティです。この状況だと、それと対等に戦えない声優部を取材しても、番組のネタとして成立しないかもしれません」

「それはそうなんだけど……」

 城島は腕組みをして少し考え込む。

「そうね……私にいい考えがあるわ」

 パッと顔を上げ、雫たちを見渡した。

「実はね、去年うちの局で放送した番組に『声優入門』っていうのがあったの」

「ああ、あれか!」

 栗山も思い出したのか顔が明るくなる。

「週イチで四回、一カ月に渡って放送したんだけど、聞くだけで声優のレッスンになる、これまでに無い番組だったのよ」

 栗山が急に饒舌になる。

「その番組、ボクがディレクターやったんだけど、あれならピッタリかもしれない! 発声とか喜怒哀楽とかアクセントとか、声優レッスンの基礎が分かるんだよ!」

「そんな番組ラジオでやるなんて、ほんまチャレンジャーでんな!」

 凛が再び関西弁でそう言った。

「どうしてまた関西弁!?」

 なので姫奈と英樹がまた同時に突っ込んだ。

「天丼でんがな!」

「でんがなまんがな」

 結芽がボソリとチャチャを入れる。

 天丼とはお笑い用語で、同じボケやギャグを少し間を空けてからもう一度、あるいは何度も繰り返す手法のことだ。その由来は諸説あるが、天丼には海老の天ぷらなどが二本乗っていることが多いことから、同じネタが2回出てくることを「天丼」と呼ぶようになった、とも言われている。

「その音源を貸してあげるから、声優部のみんなでやってみない?」

 皆の顔がパッと明るくなる。

「よろしくお願いします!」

 部員全員の声が、キレイに揃っていた。

順調に進んでいるかに見えていた声優部に、とんでもない事態が勃発!

「完全に素人」って(笑)

声優のレッスンって、どんなことをするのでしょう?

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