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第33話 ギムレットには早すぎる

挿絵(By みてみん)

「声優」と言うお仕事の存在を知らなかった女子高生が声優を目指して奮闘する、笑いあり涙ありの……いえ、ほとんど笑いだらけの楽しい青春ストーリーです。

声優の井上喜久子さんが実名で登場しますが、ご本人と所属事務所のアネモネさんには快く承諾をいただきました! ありがとうございます!!

第1話と第2話を井上さんに朗読していただきましたが、このたび第16話と17話も、朗読していただきました!

朗読を聞くには下のURLをコピペして飛んでください!

謎の対談も、聞いていただけると幸いです(笑)

https://x.gd/9kgir

更新情報はXで!「@dinagiga」「@seitsuku」

 秋の放課後、まだ新築の香り漂う部室棟の廊下にノックの音が響く。

「はい」

 と、ドア越しに女性の声が聞こえた。

「チーフ、演劇部に知り合いは?」

 コミュニティFM局“ラジオノむさしの”のディレクター・栗山の問いに、プロデューサー兼チーフディレクターの城島は首を横に振る。

「いいえ。栗山くんは?」

「放送部と違って、僕も演劇部に縁がなくて」

「演劇部だけに“えん”がない?」

「ダジャレじゃないですよ!」

 そんなやりとりのさなか、演劇部の扉がゆっくりと開いた。

「どちら様でしょう?」

 二人を迎えたのは、スラリとした細身の女生徒だ。サラサラの黒髪ロングが背中の真ん中まで伸びており、白いシンプルなカチューシャが清潔感に拍車をかけている。

「えっと僕たち、今日、ごあいさつにうかがうと電話を入れていた、ラジオノむさしの取材チームです」

「ああ。どうぞお入りください」

 その女生徒は、優雅な物腰で二人を部室に招き入れた。

 室内では、まるで芝居の立ち稽古のように部員全員が立ったまま話をしている。

「チーフ、これって、会議……ですかね?」

「そのようね。会議のお芝居のお稽古、なんて可能性もあるけど」

 その時、二人を迎えた女生徒が、会議の中心でなにやら話をしている一人の女性に声をかけた。

「青島部長、お客様です」

 部長と呼ばれた女生徒が、その声に顔を向け、少し大げさな動きで目を見開く。茶色がかった、貴族のような縦ロールがゆらゆらと揺れた。

「あなた! 伊勢麗華さんではありませんか!」

「そうですが?」

 首をかしげる麗華。

「伊勢さんが、どうしてここにいるのです!? あなたはアニ研に転部したはず!」

 いきなり始まった芝居のようなやりとりに、目を白黒させてしまう城島と栗山。

「チーフ、この状況、なんか見たことあるような……」

「デジャヴってやつね」

「これもスパイなんでしょうか?」

 苦笑する二人。

 麗華が上品な笑顔を青島に向ける。

「ですから、今日は退部届を持ってまいりましたの」

「あなた、まだ退部してなかったと!?」

 まるで舞台上のように大声をあげる青島と麗華の間に、一人の女生徒が割り込んだ。

「まぁまぁ、部長。いきなり来なくなるんじゃなくて、ちゃんと退部届持って来たんですし、いいじゃないですか」

 演劇部の一年生部員、雫、凛と同じクラスの志幾ひなただ。活発そうな黒髪ショートカット女子である。

「分かりました、退部届、わたくし自らが受理してさしあげましょう!」

 青島は、歌舞伎で見得を切るように首だけを麗華に向け、キッと睨みつけた。

「その前に――」

「まだ何かあるんですの!?」

「お客様がお見えです」

 その時初めて、青島の目は部室には場違いな二人を捉えた。大人の男女である。男性は二十代半ばほどで、薄いブルーの襟付きシャツにチノパン、チェック柄のジャケットを羽織っている。女性の方は大きめのブラウン系ワンピースで、彼よりも少し年上に見える。

 栗山があわてて名刺を差し出した。

「“ラジオノむさしの”の栗山です!」

「おなじく、城島です」

 立ち稽古、のような会議、の輪の中心から一歩近づき、二人の名刺を受け取る青島。

「ラジオ局の方ですの?」

 不思議そうに名刺を見つめる青島に、志幾があわてて説明する。

「部長! 昨日言っておいたじゃないですか! ラジオノむさしののディレクターさんたちが取材にいらっしゃるって!」

「そうでしたかしら?」

 くるりと栗山と城島の方を向き、頭を下げる志幾。

「すいません! 部長、お芝居のことしか頭になくて、他のことはすぐ忘れてしまうので!」

「大丈夫ですよ」

 笑顔を見せる城島。

「そのくらい部活にひたむきな方が、取材しがいがあるというものです」

「お気遣い、恐れ入ります!」

 志幾が再びペコリと頭を下げる。

 高校生らしからぬ丁寧な言葉に、城島は感心して目を細めた。

 もしかすると、過去に演じた脚本か何かに、同様のセリフが出てきたのかもしれない。

「仕方ないじゃありませんか! 演劇部たるもの、日常生活全てがお芝居の稽古なのです!」

 決まった! とばかりに、輝くような笑顔を天高く、彼女の表情と同様に輝くような秋晴れの空、まぁ部室の天井なのだが、に向ける青島。

 そんな彼女を見つめながら、

 物忘れするのと芝居の稽古って、関係ない気がするよなぁ。

 と、栗山は考えていた。

「今日はご挨拶だけなので、私たちのことは気にせずに会議を続けてください」

 そんな城島の言葉に、志幾がすまなそうに三度目のペコリをした。

「お言葉に甘えまして、会議を続けますわよ!」

 バッと両腕を広げ、まるでステージで演技しているかのように、青島が部員たちを見渡した。

「本日の議題は、創造祭の演目ですわ! まず決めねばならないことは、クラシックな脚本なのか、現代劇なのか? そして原作を使うのか、オリジナルなのか? ですわ!」

 城島と栗山が顔を見合わせる。

「チーフ、まだ何も決まっていないようですね」

「ええ。いいところに出くわしたわね。彼女たちが舞台を作り上げていく、最初から取材できるってことになるわ」

 部員たちの中から、一年生らしい男子生徒が小さく手を上げた。

「本村くん、いいアイデアがあるのかしら?」

「あの……僕、演劇をするなら言ってみたいって、中学の頃から思ってたセリフがあるんです!」

「ほほぅ、言ってごらんなさい」

 本村と呼ばれた男子生徒は、意を決したように声を張り上げる。

「ギムレットには早すぎる! です!」

 青島の目がキラリと光った。

「チャンドラーね」

 だが、その言葉と被って、麗華の声が同時に聞こえた。

「『風都探偵』ですわね」

 サッと麗華に視線を向ける青島。

「ふうと、探偵?」

 麗華がとびきりの笑顔を青島に向ける。

「はい、アニメです!」

 青島の歯から、キィっと音がした。

「伊勢さんはいつもアニメとか声優の話ばっかりですのね! “ギムレットには早すぎる”は、レイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』、つまり『ロング・グッバイ』に決まっているのです!」

「あら? 違いましたか?」

 そう言うと麗華は、小脇に抱えていた巨大な本をめくり始めた。

最近疲れているのか、原稿を書いていてタイプミスがとても多くなっています。

「せいつく」ではないのですが、ラジオの台本は書く速度が会話と同じか、それ以上なので

とりこぼしてしまったり、ミスしてしまったり。

「最終回」と打ったつもりで変換したら「妻子誘拐」って出て、怖っ!(笑)

実は私、ローマ字入力ではなくカナ入力なので「さいしゅうかい」の「ゆ」をタイプする時に

シフトボタンを押せていなかったようでww

他にも「自己紹介」と打ったつもりで変換したら「事故死妖怪」って、怖っ!(笑)

これも「じこしょうかい」の「よ」で、シフト押してなかったんですよねぇ。

他にも「宣教師」が「占拠牛」になったりww

そんな日々を送っておりまする(笑)

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