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皇族姫  作者: 春香秋灯
契約紋の皇族姫-契約紋-
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 戦争によって、アタシの世界は一変した。怖い目にもあった。毒を盛られるなんてこともされた。何もかも、名もなき小国にいた頃にはなかったことだ。

 目を覚ますと、アタシは一人だ。小国にいた頃には、いつも弟リウがべったりとくっついていた。リウは妖精憑きだ。リウの側だと、快適に過ごせた。だから、毎日、寝起きがすっきりしていた。

 リウがいない朝は寂しい。快適だけど、そんなもの、もう望まない。国に帰りたい。

 泣きそうになるけど、堪えた。アタシはこれから、もっと頑張らないといけない。国にいた頃みたいにのんびりしていたら、あっという間に時間が過ぎていく。帝国の一日は、小国の一日とは違う。短いのだ。

 起きて、部屋を出れば、すでに食事が用意されている。さすがに皇帝の私室に出される食事に毒を盛るような人はいないよね、たぶん。

「もっとゆっくり休んでいていいのに」

「今日こそは、やれることをやります!」

 皇帝イーシャは優しくいうけど、そういうわけにはいかない。

 食事の席には、イーシャだけではない。イーシャの息子イズレン、そして、イーシャの甥エウトも食事をとっている。皆、しっかり着替えも終わっている。アタシだけ、寝巻だ!!

「もう、ずっと寝てればいいのに」

「起こしてくれればいいじゃない!!」

 毎日、添い寝してくれるエウトは冷たい!! さっさと先に起きて準備するなんて。

「別に、仕事なんてないんだから、ゆっくししていればいいだろう。皇族の仕事、出来ないんだからな」

「役立たずですみませんね!!」

 イズレンが痛いところをついてくる。つい、怒鳴り返してしまう。

「イズレン、言い過ぎだ。リーシャ、君はまず、ここに馴れなさい。皇族のことも、エウトに少しずつ習えばいい。急に色々と身に着けてしまうと、楽しみが減ってしまう」

「楽しみ?」

「こうやって、頼ってもらう楽しみだ。ナーシャの分まで、頼ってほしい」

 皇帝イーシャは、アタシの亡くなった母の兄だ。だから、アタシに優しい。アタシのことを、母の代わりだと見ているのだろう。

「でも、はやく独立して、部屋を貰いたい。部屋が出来れば、父さんとリウと一緒に暮らせるから」

「そ、そうだね」

 落ち込むイーシャ。仕方がない。アタシの家族は父さんとリウだ。イーシャには悪いけど、そこだけは譲れない。

 国に戻るのは不可能だろう。アタシには見えない監視がいっぱいだ。それに、迂闊に外に出れば、人が死ぬことがある。

 アタシには、筆頭魔法使いアイシャールの妖精だけでなく、弟リウの妖精もついている。アイシャールは、アタシに危害を加えた者全てに妖精の復讐をすることで、生かしておくという。だけど、リウの妖精は、ちょっと腕を強くつかまれただけで、相手の消し炭にしてしまう。迂闊に外に出ては、大変なことになる。

 だから、アタシは帝国の城の奥で大人しくしているしかない。だったら、出来ることを一つずつこなしていくしかない。

「今日も、あの幼馴染みの捕虜に会いに行くのか?」

 食事が終わったエウトがうんざりした顔で聞いてくる。最初は丁寧な言葉遣いで笑顔を貼り付けていたが、今では、本性丸出しある。

 エウト、実は、イズレンの前でも、イーシャの前でも、常に笑顔を貼り付けていたという。だけど、アタシと関わってから、二人の前でも取り繕うのをやめてしまった。そのお陰か、イーシャは嬉しそうだ。イズレンは、まだ戸惑っているけど。

「うん、キオン、目を覚ましているかもしれないから。話すこと、いっぱいあるの。もうそろそろ、起きるかな?」

「アイシャールがいうには、体のほうは完璧に回復しているって。あとは、魂がどこまで戻ってきているか、だと」

「大丈夫かな。神様の元に行ったキオンを連れ戻すようなことをして。天罰を食らうなら、アタシだけにしてほしい」

「君は優しいな」

 イーシャはそう言って、頭を撫でてくれる。だけど、アタシの我儘でキオンは生き返ったのだ。だったら、天罰はアタシが受けるべきだ。

「こういうのは、記録が残らないからな。ちょうどいいから、記録として残すように指示している」

 イズレンは、やっぱり皇帝になりたいだけあって、考え方が冷たい。だけど、仕方がない。為政者だから、こういうことは大事なんだ。

 着替えたアタシが食事の席につく頃には、皆、ほとんど食事が終わっていた。ここで残ってくれるのは、アタシの教育係りとなっているエウトだ。弟リウと同い年のエウトに教育されるアタシって、情けない。

「せっかくだから、他の捕虜にも会ったらどうだろう。ほら、君と同じ国の者もいるんだ」

「そうなの!? アタシ、本当に最悪!! これっぽっちも心配してなかった」

「そういうふうに、こちら側が操作したんだよ」

 イーシャはやはり皇帝だ。言い方が怖い。

「そんな、簡単なことではないでしょう」

「君はわかっていない。私たちにとって、君の意識をよそに向けることなんて、簡単なんだ。あの幼馴染みの捕虜は無理だったけどね。そこは、仕方がないか。君の前で死んだんだから、どうしても、意識に残ってしまう」

「………」

「大丈夫、私は君の味方だ。だから、他の捕虜の話を出した」

「そうですね」

 単純だ。アタシのために、皇帝イーシャは、落ち着いた所で、他の捕虜たちのことを話してくれたのだ。アタシも、余裕が出来たんだし、会いに行って、力になれる所は力になろう。

 余裕が出来ると、油断も出る。

「今日、キオンが目を覚ましたらどうしよう。まだ、気持ちの整理が出来てないのに」

「そういう時は、アイシャールに言えばいい。眠らせるなんて、簡単だ」

「い、いえ、そういうのはいいです。アタシとキオンの問題だし」

 先送りは良くない。アタシはイーシャの提案を断る。後で、アイシャールにもしっかり言っておこう。勝手にイーシャがアイシャールに命じてしまいそうだ。

「ただの幼馴染みじゃないのかな」

「アタシは、ただの幼馴染みです。だけど、キオンは違うらしくて。戦争が起きる前に、結婚を申し込まれたんです。アタシ、戦争に出ると決まってたから、つい、勢いで頷いちゃって。しかも、戦争が終わったら初夜だって、キオンに言われていて」

「聞いてないぞ、そんな話!!」

「今、言いましたが」

 物凄く怒っているイーシャ。あれだ、娘がとられる父親の気持ちなんだろう。イーシャ、息子ばかりで娘がいないんだって。

「結婚の話は流れたって、アイシャールに聞かれた時、話してたじゃないか」

 驚いているイズレン。そうだよね。イズレン、いまだに独身だもんね。アタシみたいなお子様に先こされたら、驚くよね。

「父さんは、たぶん、知りません。その場にいなかったし。本当は、お互いの両親の許可をとってから、というのが正しいのだけど、戦争に出兵するとなると、そういうのはすっ飛ばして、勢いで考えてしまうんでしょうね。落ち着いたら、もう、どうしようか、とばかり考えちゃって」

「で、アンタは、あの捕虜と結婚したいの?」

 ただ一人冷静なエウトは感謝しかない。周りが冷静でない分、エウトが冷静に聞いてくれる。

「どうなんだろう。キオンは幼馴染みだけど、それ以上の気持ちはなかったし。それに、アタシ、あの国では妖精憑きでない異物だったから、そういうことしちゃいけないような気がしてたんだよね。結婚の話が出ても、流れてくれて、内心では安心してた」

「それ、答えになってない。あの捕虜と結婚したいのかどうかだ」

「………わからない」

 泣きたくなる。これっぽっちも考えたことがない。エウトはアタシの誤魔化しをしっかり読み取ってくれる。

「大衆本で読んだことだが、わからない、は、イヤを誤魔化す使い方をしている傾向がある」

「そうなの!?」

「………簡単すぎ」

「?」

 物凄く呆れたように見てくるエウト。イズレンなんか、アタシのことを心配そうに見ている。そして、イーシャはというと、ニコニコと笑顔だ。

「その捕虜との結婚、イヤなんだよ、そうに違いない」

「まずは、白紙に戻してから、考えてみます」

 イーシャにそう断言されるけど、アタシはいい加減なことはしたくない。だから、まずは、結婚の話も、初夜の話も、しっかりとなくさないといけない。





 つい、油断して、いらないことも話してしまった。だけど、一度、口から出てしまったのだ。先送りにしておくわけにはいかない。

 ここは、素敵な女性代表の筆頭魔法使いアイシャールに相談した。朝食でのことをそのまま話すと、アイシャールはあの素敵な笑顔のまま固まる。

「あの、そういう話、皇帝陛下とイズレン様とエウト様にしたのですか?」

「ダメだった? 父さんには包み隠さず話してるけど」

「あ、そういうことですか。家族なのですね」

「そうです! 家族で隠し事は良くない、と父さんは言ってました。お皿割ったりした時は、隠しましたけど、すぐバレちゃうんだよね。父さん、優しいから、アタシに怪我がないかどうか心配して、お皿割ったことなんて、これっぽっちも怒らなかった。でも、隠し事したから、叱られた。心配する、て」

「いいお父様ですね」

「はい!」

 家族の話をすると、会いたくなる。戦争が終わって、まだ、一か月も経っていない。話し合いをしているというから、時間もかかるのだろう。だって、帝国と辺境は遠い。アタシが辺境から帝国に来るまで、随分と長く馬車に乗っていたな。

「どうして、そんな大事な相談をわたくしに?」

「アイシャールは、大人の女性です。イーシャともお付き合いがあるから、きっと、いい意見を聞けると思ったのだけど」

「え? わたくし、皇帝陛下と、お付き合い、してる、なんて、お話したでしょうか」

「二人を見ていると、そう見えたのだけど」

 歯切れ悪い。エウトと話している時も、強く否定はされなかった。

 そういえば、はっきりと恋人同士、とはアイシャールからも、イーシャからも確認していなかった。見た感じ、距離が近いから、そうかな、なんて思っていた。

「もしかして、恋人同士じゃないの!?」

「わたくしはイーシャ様のことをお慕いしております。わたくしの初恋です」

「素敵!!」

「ですが、イーシャ様は、そうではありません。ただ、わたくしの愛を受け止めてくださっているだけです」

「どんなふうに?」

「食事から、身に着ける服まで、全て、わたくしが手がけています。イーシャ様の私室には、使用人の女は絶対に入れさせません。お仕事も常にご一緒出来るものは、ご一緒していますよ」

 ガチガチだ。アタシが想像しているよりも斜め上の拘束である。イーシャ、自由なのは、もしかして、私室にいる時だけかも。

 アタシが驚いているから、アイシャールはちょっと落ち込んでしまった。

「やはり、縛りすぎですよね。わかっています。ですが、イーシャ様を前にすると、どうしても止まれません。わたくしの初恋ですから」

「初恋じゃ、仕方ないのかな」

「リーシャ様の初恋はどうでしたか?」

「あー、アタシの初恋は父さんだから」

 アタシ、やっぱりキオンとは結婚出来ないわ。まず、恋すらしていない。

 こうして、同性であるアイシャールと話していると、自然と頭の中が整理できた。よし、キオンとは結婚しない方向で話を進めていこう。キオンが何か言ってきた時は、父さんに出てもらおう。

 そうして、軽く考えて、アイシャールの屋敷から、地下へと降りて、キオンが閉じ込められている地下牢の前に立った。

 キオン、ベッドに座って、宙を見ていた。

「キオン!!」

 アタシは鉄格子に手をかける。鍵なんてかかっていないから、簡単に開いて、中に入れた。

「リーシャ?」

 夢うつつみたいな顔をしているキオン。アタシは構わず、キオンの顔やら腕から、あちこち触って確認する。反応する。

「キオン、良かった、生き返ったんだね」

「………お前、その服、どうした」

 怖い声で、アタシの着ている服をつかむ。見れば、顔も怖い。

「わたくしが準備したものです」

 アイシャールが牢に入って、アタシとキオンの間に入る。嫣然と微笑むアイシャールをキオンは睨み上げる。

「気持ち悪い、くそババアが」

 そうキオンが悪態をついた途端、キオンは鉄格子にどんと吹き飛んだ。あまりのことに、アタシは声も出ない。恐る恐るとアイシャールを伺い見れば、微笑んでいるけど、目が笑っていない。

「若造が、女性への態度が悪いですね。わたくし直々に教育してあげます」

「アイシャール、やめてあげて!! キオン、謝って!! アイシャールは、キオンのことを助けてくれたんだよ」

「そいつは敵の妖精憑きだろう!! どうなってるんだ、ここは!? 妖精が使えない上、奥のほうに、おかしなものが閉じ込められてる。いるだけで、おかしくなる」

「キオン、落ち着いて。もう戦争は終わったの。負けたんだよ」

 アイシャールはアタシがキオンに近づくことを許してくれないので、アタシは離れたまま説明する。

 キオンは、物凄く驚いていた。傷ついた顔もしている。そして、力なく項垂れる。

「ねえ、アイシャール、キオンはこの後、どうなるの? ずっと、ここで閉じ込めておくと、妖精憑きは苦しいって」

「思ったよりも力がありますから、悩んでいます。地上に出すには、まだ枷が足りません」

「せめて、キオンの枷を外してあげて。もう、暴走もさせる心配もないんだし」

 アタシとアイシャールが話しているのをキオンは信じられないものでも見るように見上げている。そして、笑う。

「はははは、リーシャ、俺は用なしか」

「何言ってるの!? 毎日、様子を見に来たんだよ。心配で、毎日。でも、キオン、目覚めなくて」

「そうですよ。リーシャ様は、毎日、長い時間、あなたの体に触れて、いつ起きてもいいように、と体の関節を動かしたりしていましたよ。帝国所有の医師に相談して、あなたのために、出来ることをしていました」

「じゃあ、どうして、リーシャは帝国側に立ってる。お前は、俺たち妖精憑きの小国の国民だろう!?」

「ご、ごめん、アタシ、よくわからなくて、本当に、ゴメン」

 アタシは本当に頭が悪い。流されるままに流されて、キオンに言われるまで、気づかなかった。居心地よくされて、ここが敵国だって認識がわかなかった。

 そうだ。アタシは本来、捕虜だ。たまたま、帝国の皇族であっただけだ。帝国が欲しているのは、随分昔に亡くなった母ナーシャだ。アタシは、ナーシャの子どもというだけで、温かく受け入れられているだけだ。

「ねえ、アタシとキオン、二人で話したい」

 まず、部外者の排除をしないといけない。でないと、キオンはアタシの話を聞いてくれない。

「ダメだ。僕もアイシャールも離れない。万が一、リーシャに何かあった時、戦争再開だ」

「どういうことだ。全て話せ」

 キオンが思っているよりも大きいことに、落ち着いたようだ。キオンはベッドに座って、アタシに促す。

「うまく、話せないけど」

 アタシは、これまでのことを全て話した。母ナーシャのこと、アタシが皇族であること、アタシにつけられた妖精が人を殺すほど物騒なこと。

 さすがに、弟リウのことは話せなかった。アタシについている妖精は、アタシがそう思っているだけで、実際、リウのものかどうかはわからない。だから、そこだけは誤魔化した。

「お前、それ信じてるのか? 帝国は、俺たちの国まで支配するための理由付けに、お前の母親を使ったとしか思えないぞ。お前の母親を探すための戦争なんて、おかしいだろう」

「信じて、くれない?」

「お前の母親は、利用されたんだよ。捨てたんじゃない。いや、お前の母親は捨てられたと思っただろう。だけど、帝国は捨てたわけではない。お前の母親の捜索を利用して、いつか侵略戦争をしよう、と計画してたんだよ。そうじゃないと、おかしいだろう」

「でも、帝国は反対だったんだよ。むしろ、言い出したアイシャールが責任もってやることになったんだから」

「それも、建前だろう。あんな人形見せびらかせて、戦争やられたら、誰も逆らえない。俺たち辺境は、見せしめにされたんだ」

「………」

 キオンにそう言われてしまうと、そう思ってしまう。アタシは真っ青になって、エウトとアイシャールを見る。

 アイシャールは変わらず微笑んでいるだけだ。何も言わない。エウトは、ただ、見ているだけだ。

「子どもが、戦争に出てた」

 そう、エウトは戦争に出ていた。

「本当に侵略戦争するなら、子どもを前線になんて出さない。帝国は戦力だってありあまっているんだから、そんなことしない」

 子どもが戦場に出ていたことは、キオンは知らない。だって、キオンはその時、死んでいた。そして、生き返っても、今まで、ずっと意識がなかった。

「俺たちだって、お前みたいな女が前線に出た。そういうこと、あるだろう」

「………ごめん、アタシ、やっぱり、キオンとは結婚出来ない」

 アタシは涙をボロボロと流した。こんな時にいうことではないけど、言わないといけない。

「それは、約束したじゃないか!!」

「どさくさで頷いただけ。アタシとキオンでは釣り合ってない。アタシはもう流されてるだけだ。キオンみたいに考えられない」

「なんだそれ。お前は俺みたいに考えなくていいんだよ!! そのままでっ」

「うん、アタシ、守られてたんだね」

 気づかないうちに、アタシはキオンに守られていた。それが今、わかった。

「アタシに今出来ることって、これだけ」

 アタシは許可もなく、キオンの枷を全て外してしまう。鍵もされていないから、簡単だ。

「アイシャール、今から、アタシ、ここにいる。アタシは捕虜になる」

「いけません!! リーシャ様は尊いお方です。このような、大した力のない妖精憑きの側にいてはいけません。あなたは、わたくしのような最高の妖精憑きにお世話されるべきです。小僧、リーシャ様に触れるな!!!」

 また、キオンが吹き飛んだ。

 アタシがキオンの所へ行こうとすると、牢に入ってきたエウトがアタシを引っ張りだした。物凄い力だ。

「見ているだけなのは、ここまでだ。アイシャール、枷を」

 エウトは牢の外からアイシャールに命じる。また、キオンに枷をつけるというの!?

「ダメ!! ここ、いっぱい、妖精封じされてるんでしょ!! そんな所に、あんないっぱい妖精封じの枷をつけたら、キオンが壊れちゃう!?」

 アイシャールが、笑顔を消した。そして、苦しそうな顔を見せる。アイシャールに酷い事を言ってしまった。感情のままに叫んで、後悔しても遅い。

「わかったわかった。リーシャは元の部屋に戻ろう。それが、その妖精憑きに枷をつけない条件だ。どうせ、アイシャールに勝てないんだ。ここから出ることは不可能だ」

「………わかった」

 エウトは優しい。戦争時、すでにアタシは捕まっていたというのに、アタシ自身が投降することを条件に、戦争を終わらせてくれた。

 今も、アタシに優しい条件を突きつけてくれる。

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