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佐藤一郎(仮名)  作者: 黒楓
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後編

※ ※作中で発せられる発言や思考は“この男”の人となりに基づくものであり、作者の主義思考ではございません。

 女と言うのは実にいろんなタイプがいる。


 あまたの星煌めく様に、はたまたワインセラーに飾られたVin rouge(あかワイン)達の様に


 そしてオレはその1本1本を愛で味わう。


 コーラス部の練習風景はまさしくワインセラーに並んだワイン達。


 オレはその中で好奇心の大きそうな子を二人選んで、まずこの子たちに『呪文』を掛けた。


 その方法はさすがにご披露できないが……かのスティーヴン・キング氏の作中人物   ウィリアム・ウォートン的やり方としておこう。


 それから『1本』ずつ味わっていったのだが、そのカラクリは“先の二人”しか知らず、その二人も灰になるまで黙して語らないだろう。

まあ、今更話してもとっくに時効だが。


 くだんの“池田さん”はこの年の“逸品”で、その“逸品”の座はその学校に居た5年の間譲る事なく、結局オレの女房になった。


 次の赴任先のコーラス部は男女混合で顧問は泰子先生だった。


 この泰子先生はハイミスの難物で篭絡するまでに相当骨が折れたが、オレに染められた後はオレにとっては、とても情のあるいい女になった。


うん、“相性”も抜群だった。


 オレと同世代の彼女は去年に先立ったが、最後の逢瀬は病の床だった。

 あのふくよかな肢体がすっかり枯れてしまってオレの胸に縋り付いて泣いた彼女の“重さ”を、オレは忘れる事ができない……まあ辛気臭い話はよそう。


 泰子先生の懐柔を済ませてからオレはコーラス部の部員間の()()()()()()を促進させた。

こちらはドミノ倒しの様に実に簡単だったが。


 そうやって“不純物”達を沈殿させて残った“上澄み”を賞味して行った次第だ。


 この時代はこう言った“上澄み”が好きだったがその次の赴任先(泰子先生が教頭になってオレを呼び寄せたのだが)では“愛詩会”と言う同好会の顧問になり、今度は()()()()を食い荒らした。


 この同好会、実は……オレの性癖を熟知しているカノジョが用意してくれた“エサ場”だったのだ。


 生涯独身だったカノジョにとってオレは恋人であると同時に子供であり愛玩動物でもあったようだ。そしてオレにとってのカノジョは生涯変わらず可愛いオンナだった。


 さて、女房の“池田さん”についても言っておこう。


“初めから”知っているオレもアイツが……まさかあんなに変わるとは思っていなかった。


 諸兄ならよくご存じだろう。


 女もワインの様に変わる。


 しかし残念な事に大抵は“熟成”でなくブショネに振れる。


 結婚してから、表向きはオレの恋人は“馬”のみで、競馬をサイドビジネスの収入と土日の“活動”の言い訳にしていたのだが,女房が年々うるさくなって来たので一計を案じた。


“同じ穴の狢”の後輩に

「オレと“兄弟”になろう」

と持ち掛け、お互いがお互いの女房を引っ掛けた。


 結果、他人様の“ブショネ”を味わう事となったのだが、これはこれで味わい深い。


 うるさい事を言われない為に今でもたまにお互いの女房と同衾するが、いいもんだよ。一度お試あれ!


 

 先にサイドビジネスの話をしたが、おかげさまであの“バブル”の時代もうまく稼がせてもらった。

確かな人脈と情報、そして過度に欲をかかなければバブルがはじけても損は食わない。


 とは言えこの時代は“彼女(JK)達”の頭も呆けているのが多くて、かなり年配でもあった私はけっこうやりづらかった。


 金は確かに持ってはいたが、あからさまに“札束”としか見られないと、こちらも“肉塊”としか見れなくなってしまうから。


 まあそう言った類の子達は“オープンハート”を与えて置いて“TPO”をそれなりに弁えた(わきまえた)子達にのみ、その薬指にダイヤのプラチナリングを買い与えてそれに相応しい服に「赤プリ」でお召変えさせていた。


 ブランドもののバッグもそれなりには売れるかもしれないが、鑑定書付きの確かな指輪なら値が付かないという事は無い。オレから離れた後でもいくばくかで売れるはずだからだ。



「先生から戴いた指輪は今も大切にしています」


 こんな子も居る。


 この子は聡い子で、名を智子と言う。


 よく機転が利いて話も面白いので“夜の集まり”にも連れて行ったらオレだけでは無く、“オレの周り”の人間からも随分と可愛がられた。


 そして今では、オレなどは及びもつかない大した実業家だ。


 ひょっとしたら他の連中とも何かあったのかもしれないが「佐藤ちゃんの“子供”には手は出さねえよ」と言うので、あえて追及はしない。 


 それに「たまには私ともデートしてくださられないと寂しくて死んじゃう!」なんて可愛い事も言うので今でも大切なガールフレンドだ。


 随分と身勝手な話だが、明け方のまだ空気の澄んでいる頃、アマンのスイートで彼女と富士山を眺めながら尋ねた事がある。


「今更ながらだけど、智ちゃん いい人いないの?」


「いい人って! 私は先生だけだもん! そうねえ~奥様が亡くなられたら考えるわ」


「冗談でもそれは無いよ。絶対オレの方が先にくたばる」


「私を置いて逝っちゃうなんてズルい!」


「嘘でも“くたびれオヤジ”にそんな事を言ってくれて…」


と言い掛けたのをカノジョのキスで塞がれた。


そうやってオレを貪った後、オレの耳元で囁く。


「でも、子供は欲しかったなあ」


 オレは少しはぐらかし気味に答えた。


「智ちゃんの子供なら“いいタネ”さえ見つければ最高だぞ!ひょっとしたら人類に貢献できるくらいに」


 オレの素っ頓狂な“振り”に智ちゃんは吹き出した。


「先生のそういう少年みたいな物言いも大好き! だから私はこう言うね!私の赤ちゃんは人類に貢献なんかしなくていいから先生の“タネ”で欲しいの」


 確かに昨晩、「今日は大丈夫なの」と言ったので、しないでしたが……智ちゃんは存外本気なのかもしれない。


 もしそういう事になって、その子に必要があればオレの子であろうとなかろうと認知し、その子にこそオレのサイドビジネスを継がせたい。

母親のビックビジネスを受け継ぐ前の練習台にはちょうど手頃だろう。

書いていて思ったのだがオレは智ちゃんをその才覚も含めてこよなく愛しているようだ。


 何だか今にも死んでしまいそうな辛気臭い話になってしまったがオレはまだまだ死ぬ訳にはいかない。オレがサイドビジネスで得た金は、女房や娘の知らぬ事だし遺すつもりも無い。


 今のところはオレが生きている間に使い切らねばならないという事だ。


 バカみたいな話だが、今でも現役で“女が趣味”なオレは、今は『マッチングアプリ』を駆使して引っ掛けた女の子に“小遣い”と言う名の手数料をやってそのコの友達の中で一番“手付かず”っぽい子を斡旋してもらっている。


 オレ自身が楽しんで、あわよくば智ちゃんみたいな原石を掘り出すことができればと思っている。


 笑っちまうが、「子供をつくる事は無理でも弟子くらいは」と夢見ているわけだ。


「いい歳をしてこんな事をして」と目を剝く貴女貴兄に申し上げたい。


 オレのやってることなんかせいぜい『バッテラ』の〆鯖を覆ってる薄い白板昆布くらいのこっちゃ!


 現に、オレ、教育委員会の指導課長もやったし二つの学校の校長も務めた。


 塾も作ったし(塾頭は女房がやっとる)今は現役の県会議員でもある。

 この仕事は……大枠では今も昔も変わっとらんけど



 ともかく、“表の世界の目”で見ても、今の子らは上手にウソつきよる。金とかにも実は貪欲なんや!それが一番の早道と方法論で知っとるから。


 せやから、この子らとの“駆け引き”がまたおもろくて、我ながらエエ趣味やと思う。


 ホンマ、ボケとる暇ないで!


でや!


 ちょっと視線を低くしてアンタらの周り見てみ! 

 身近にどんだけ嘘を纏ってるヤツがおって、どんだけ大手を振って歩いとるか!

 掃いて捨てる程おるけど、掃けも捨てもできへんやろ?


 それはな! 嘘こそが正義やからや!!


 いけしゃあしゃあと嘘ついて、貪欲に己の利を追及する子らこそ『グローバルスタンダード』にようやっと付いていけるんちゃうかと、オレは思ってる。


 こんな話を残念に思われ方も少なくはないやろうけど


『噓つきは生きろ! 正直モンは野垂れ死ね!』ちゅう世の中なんや!



なんだか各方面から怒られそうです。


ホント!ごめんなさい。


でも“ピカレスク”的なものとか『傍から見た昭和』の時代のエナジーや陰影みたいなのを書いてみたかったのです。<m(__)m>



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[良い点] 〉『傍から見た昭和』の時代のエナジーや陰影みたいなのを書いてみたかったのです。   正にそんな物語でした!!   「タテマエ」と「ホンネ」を上手く使い分け、使いこなして人生を謳歌す…
[良い点] 先生が心配される程、酷く無いですよ。私が、モデルにした漫画家の故:山田花子さんは、「カタワモンは、泣け、叫べ」と、その遺構に書いていました。それでも熱狂的なファンはいたのです。 [一言] …
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