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小話3

◆苦手なもの(一年の時のお話)



 休み時間、二宮君が私に声を掛けてきた。


「遠野さん、ちょっと教えてほしい所があるんだけど」

「う、うん。どこ?」

「この応用問題が……」


 隣の席に座ってきた二宮君がこちらに身を乗り出して問題を示してくる。

 に、二宮君が近い!



「……なんだけど。ん? 遠野さん、どうかしたか?」

「いやいやいや何でもないです! こ、この問題はね……」

「さくー、何やってんのー」

「うわっ」



 どこからかぬっと姿を現した千春。私もびっくりしたが、二宮君はそれ以上に驚いていた。

 そして彼は千春を見るや否やばさばさと慌てて教科書を片づけ始めるではないか!



「ご、ごめん遠野さん。そういえば用事があったんだった。また今度教えてくれ!」

「あ、二宮君!」



 待って! と言いたくても言えないまま、二宮君は普段の彼からは考えられないような素早い動きで教室を脱出して行った。



「ごめんごめん、つい」

「ハルー!!」


 どの辺がついなんだ!?



(彰と咲耶の反応が面白くてつい、でからかってしまっていた頃の話。こうして見ると千春も譲に負けない立派な愉快犯です)






◆デート話、その後の二人 その1 咲耶と彰



「……」

「……」

「えっと、にの、じゃない……あ、あ、あき、ら君」

「う、うん。さ、さく、や」

「……」



 さっきまで勢いで抱きついてしまったりしたけど、冷静になると恥ずかしくて堪らない!



「か、帰ろっか」

「そう、だな」



 お互い顔を真っ赤にしながら、私達はベンチから立ち上がり歩き始めた。


 ……手を繋いで。



---------------------------------------------------------



 彼女の名前を呼ぶのは恥ずかしくないのに、好きな子に自分の名前を呼ばれるだけでこんなに恥ずかしいとは。

 おまけに抱きつかれて、ろくに言葉も喋れなくなってしまっている。


 こんなに混乱した日は小説の記憶を取り戻した日以来だ。



「咲耶……」

「な、何? あきら、君……」



 少しいつもよりも歩く速度を緩めて、手を繋いで隣を俯いて歩く彼女を見る。



 まどかは俺の――三橋千明の最高のヒロインだった。


 そして咲耶は……二宮彰、俺の唯一のヒロインだ。



「……好きだよ」



(短かったので彰視点も入れてみました。彰は自分から手を繋いだり名前を言うのは大丈夫だけど、相手にされると照れるタイプ)






◆デート話、その後の二人 その2 千春と譲



「……ハル、まだ食べるのか?」

「まだ」



 ……今日は特別よく食べるなー。


 千春と共に訪れたのはこの前咲耶ちゃんと一緒に来た喫茶店。内装のセンスもいいし、従業員の態度も悪くない。そしてメニューも豊富で味も上々だ。


 ……ただ、問題はそれらに比例するかの如く値段もそれなりなのである。

 普通にティータイムを楽しむだけならちょっと贅沢する、くらいの感覚で訪れることができるのだが、今日は勿論そんなものでは済まない。


 ケーキメニューの多さに、俺は少しだけこの店を恨んだ。もうすぐ全種類食べ終わってしまう。



「譲、あともう一つずつね」

「……了解」


 もう一周、だと。


 流石の俺もちょっと固まった。払えないという訳ではないが、それでも払うのに躊躇う金額である。

 あー、またホストやらないと駄目か。千春との時間を削って他の女に費やすのは面倒だが仕方がない。



「ハル、今日はいつもよりも沢山食べてないか……?」


 怒らせないように慎重に尋ねてみれば、千春はふん、と顔を背けた。



「この前楽しそうにここで他の子と喋ってたのはどこの誰でしたっけねー」

「……俺です」

「分かってるなら文句言わない!」


 そう言って千春はやってきたウェイターに次の注文をする。彼女の胃袋を前にしてまるで動揺した様子を見せないこのウェイターもすごい。



 しかし、咲耶ちゃんとのデートで千春がここまで妬いてくれていたとは思いもしなかった。そう思えば軽くなる財布にだって嬉しくなってしまいそうになるもんだから、本当に千春に関してだけは単純だ、と自嘲する。


 俺って愛されてるなー。



「あー、三週目行こうかなー」



 ……愛されてる、よな?



(安定の二人)








◆デート話、その後の二人 その3 彰と裕也

※会話文のみ



「もしもし、裕也か?」

「彰、落ち込むな。そういうことも世の中にはある」

「はあ? 何の話をしてるんだ?」

「現実から目を逸らしたいのは分かるが、受け止めるんだ。遠野さんに振られたって、またいつかいい人が出来るさ!」

「……お前、もしかしてこの前のことまだ勘違いして」

「何なら俺の友達を紹介してやろうか? いいやつだから彰も好きになるかもしれないし」

「あのな、お前の女友達なんてみんなお前のこと好きに決まって……って、だから誤解なんだって! 俺と咲耶はちゃんと付き合って」

「……そうだよな、まだ未練たっぷりのお前に言うことじゃなかったな」

「なんか電話の向こうですげえ憐れまれてる気がするのは気のせいか?」

「お前がいつか現実を直視できるようになったら、新しい子を紹介してやるよ。それじゃあ……元気出せよ」

「話を聞け!」





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