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嫌われ厄神と嫌われ神子  作者: ぽこ
1章
10/15

回復

翌朝になると、ハナは鼻水を垂らしながらも少しだけ元気になっていた。



朝餉は朱殷が作った魚のスープだ。

もちろん作ったのは初めてなのでぶつ切りの上、頭やや内臓もそのままなのだがーーーそれでもじっくりと煮たので骨まで柔らかい。


あぐらの上にハナを抱き、スープだけをゆっくりと飲ませる。



「美味しい」

「草じゃないからな。ゆっくり食え」

「うん」

「寒くないか」

「あったかいよ」



やっと笑ったハナに朱殷は安堵する。

少しずつスープを飲ませると、ハナは纏っている毛皮を撫ぜながら尋ねた。



「これどうしたの?」

「貰った」

「貰ったの?」

「ハナにやる。暖かくして早く治せ」

「うん。治す」



ハナは「首飾りといい毛皮といい、朱殷には貰ってばかり」だと思いながらも、腹が満たされてウトウトと微睡み始める。


朱殷は腕の中のハナを抱きかかえながら考えていた。



(ここは直に西に襲われる。ハナをどこか遠くに連れて行かねばーーーー)





◆◆◆





それから3日。

朱殷の甲斐甲斐しい世話は続き、日増しに過保護になっていた。



今日もハナの食事は朱殷の胡座の上である。



細い肩からよく毛皮が落ちるので、朱殷自ら革紐を細工して蓑風に仕立てた。しかし、ハナの身には二重に巻ける程大きく、とにかく動きづらい。



「デカすぎるな」

「暖かいよ」

「これは寝る時にかぶれ。ちょうど良いものを獲ってくる」

「獲ってくる?」

「おぅ、少し待っていろ」



朱殷は一刻もしない内に、剥いだばかりの狼の毛皮とともに帰ってきた。


「朱殷、血の匂いがする」

「俺じゃない。これだ」

ハナの手を取り、狼の毛皮を確かめさせる。



「どうしたのこれ?」

「獲って来た」

「これ…狼?朱殷大丈夫だったの?」

「狼なぞ相手にもならん。これはこれから洗うからもう触るな。血がつくぞ」



夜行性の獣に襲われるのを心配したことがあったが、なんの問題もなかったのかもしれない。

朱殷の強さを初めて知ったハナは目をパチクリとさせた。狼をいとも簡単に仕留めて来るなんて、朱殷は一体何者なんだろう?



「ねぇ、朱殷はーーーー」

「ハナ、俺と一緒に来い」

「どこに?」

「南だ。冬でも暖かいからもう風邪もひくまい。美味いものもたくさんあるから腹一杯食えるぞ」



神呼びの供物が丸く黄色い果実だったことを思い出す。あれは甘くてククの実の100倍はうまいからきっとハナも気にいるはずだ。



「お腹いっぱい食べたい」

「海にも魚がいてうまい」

「川より大きな海ね!魚も大きいのかな」

「ハナよりでかい魚もいるぞ」

「わたしより!」



ハナが大声を上げた途端、ケホリと咳が出た。



「身体が治ったらすぐに行くぞ。早く治せ」

「うん、治す」





『朱殷は一体、何者なの?』 



ハナの聞きそびれた問いは、その後2度と問われることはなかった。

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