第三話 決意
天界に戻ったこころをメティス様は自分の部屋へと連れ帰った。
「ココロ、おかえりなさい」
「っひくひく」
こころはまだ悲しいんでいた。
メティス様は不思議そうな顔をしながらつぶやいた。
「下界のお母様から懐かしい雰囲気のエネルギーを感じました。んーどこかで、、、?でもとりあえずココロ、すごく濃い十六年間でしたのね。今日帰ってきた魂の中でトップなのですよ!ココロは寿命レベルも上がって、後愛情レベル信頼レベル幸せレベルは全てMAXなので、、、す、、、よ?コ、コロ?ちゃん?どうしましたか?」
メティス様が首を傾げた。
「ちゅい、ちゅいんな……芋のオヤツにお母さんの作るお肉のご飯、、、食べたい……。もう、食べられない?いや、食べられるぞ。あの異世界なら。お母さんたちと永遠にくらせるんだ……」
こころは座り込んで俯きながそう言った。
そして次は立ち上がりメティス様に自信に満ち溢れた顔つきで尻尾をふりふりしながら言い出した。
「わーはっはっは!そう!そうだよ!私はあの時から無意識に気づいていたんだ!メティス様!私気づきました!大事なのは一緒に過ごした長さじゃない!質!濃さこそが一番大事なんだ!世界の御用心、いや魔王の御用心!私は、いや、ボクはそう!ココロ!ボックはココロなんです!」
こころが壊れたかの様に笑い上げるとメティスが片言のように言う。
「ちゅい?御用心?僕!?ココロは女の子...」
「ちゅいに言葉の意味はありません!この言葉が生まれたのにはわけわありますが、、、。でもこれはエネルギーであり愛情なのです!それに、、、もう地球と言う下界は嫌だ!またあの3人と永遠に次は歳を取らずに暮らしたい!ずっと感じていたんだ!輪廻転生してまであの悲しみは味わいたくない!幸せのレベル上げてまで生まれ変わるなんて!僕はあの3人と永遠ならどこだっていいんだ!僕たち魂は物質に執着はしないが、僕はまたあのお母さんの元に生まれ変わって、飼い主の魂が同じでも、個体が違うなんて悲しい!人間はボクだとは気づかない確率の方が高い。前世の記憶は僕だけが覚えてるなんて……。下界は死が存在する!悲しいも存在する!魔法が使えないから、、、。人間が生まれ変わる時はボク達と違って、前世の記憶は消されてしまう!だから前世の個体としての僕は忘れられてる。そんなの辛いよ!」
そう言うとこころがメティス様の部屋を後にし天界の兄弟たちが集まっている大広間に向かった。
メティスは困ったような顔で聞いていたが少し微笑ましく呟いた。
「人間の感情を持つなんていったいどれだけの愛情をもらってきたのか、立派?それ以上に成長しましたね、こころ。
今下界での火葬が始まったくらいかな。首のスカーフ...らしいわね」
下界で火葬されはじめると、入れてもらったものや、身につけている物は天界へもコピーされる。
こころが毎日つけていたスカーフが先にコピーされてきたのだ。
こころは高さ6m程の大広間の扉の前にたどり着いていた。
「はぁ、よし!いくか!!」
こころはキリッとした顔付きで扉を開け、玉座までの長さ50mはある大広間の真ん中を半スキップするように歩き始めた。
大広間に集まっていた天界の兄弟達がこころを見つめている。
「あいつ!寿命レベル短くて毎回失敗しているやつ」
「どうせ今回もダメだったんだろ。」
「俺は優秀だからそんなヘマ!アハハハ!」
「そんなこと言ったら惨めでかわいそーだからやめてやれよー、っふふ」
黙って見つめている魂もいれば嫌味をぶつける魂もいるな中、こころは何一つ気にすることなく玉座の方へ歩き続ける。
大広間の玉座の目の前にたどり着くと、使いの剣士や使用人が何人か立っており、その真ん中にメティス様が立っていた。
「ココロ、改めておかえりなさい」
「ただいまです!メティス様!」
二人の会話が大広間に響き渡る。
メティス様がこれからの魂の振り分けを決めた。
優秀クラスは自由に転生先を選ぶこともでき、天界へ残ることもできる。
普通クラスはまた下界で同じ飼い主の元で飼われるか別の飼い主を選ぶ権利が与えられる。
それよりも成績がよろしくないクラスは天界で修行をしある程度の知識を学び直し適正力をあげ、また下界への転生となる。
しかし、これは魂が人間と同じ心を持っていないから出来る事であって、こころは人間そのものの感情が生まれてしまった為、どの道も選ぼうとはしなかった。
メティス様はもう気づいていた。
なぜならメティス様は人間として転生を繰り返し神となった方。人間の心、感情を最大に感じ取れる持ち主であったからだ。
だがそれ以外の選択となると、神々達は好ましくない場所への転生となるが、こころはもう決めていた。
振り分け最後はこころとなった。
メティス様はこころに訪ねる。
「ココロ、もう決めているのね」
こころは四本足で立っていた犬の身体を二本足で立ち始め、魔力込めた。
こころが喋るにつれて足先から煌びやかなダイアモンドダストの様なものが身体中に回転させながら上へと上昇していき、人間の形に変化していく。
「神々は知らない!寿命の長さよりどれだけ濃い思いがあるかが大切なんだ!ボクはココロ!邪悪ななる者の御用心!愛情レベル信頼レベル幸せレベルトリプルMAXで今回は十六才十一ヶ月と五日で戻ってきた!そして!インキュバシタンボルグに今の姿のまま転生志願を申し出る!」
こころは自信まんまんで大広間全体に響きわる声でそう言った。
こころが人間の姿になり周りは驚いた。
その姿は、腰まで伸びたピンクの可愛らしい髪!気の強そうな佇まいに愛嬌がある姿。
両腕には、黒のアームカバーの様なものに、片方に金色で文字列の模様がある。
服装は、ショート丈のトップスに、胸元から腹筋二段目辺りまでの黒のインナーに、淵にはまた金色の文字列がある。
靴は、毛が斜めに取り付けられた茶色いファーブーツ。
左目のブルーアイズは黒海のよう、真ん中の瞳孔に吸い込まれていくかの様な、闇がかった瞳をしていて、瞳の周りの虹彩は神秘的なブルー色。
「人間の姿、、、そんなまさか」
動物の神でさえ人間の姿になるには千年以上の試練が必要である。
メティス様を囲む神々や剣士や使用人は、メティス様の力により人形を保っている者も居る。
本来は形を持たずの光の球体なのだ。
そして天界は、魂のMAXレベルは優秀生であってもせいぜい1個くらいあるかないか。
これは転生を繰り返すだけで得れるものでもなく、どれだけ同じ飼い主の元で愛情を注がれるかがポイントである。たとえ寿命が短かろう飼い主から感じる愛情がどれほど大切な物か。
そして、信頼レベルMAXということは、信頼という言葉は存在しないという意味。それは信頼レベルが数字で表記されている場合、信頼しようてしている状態であり、心が通いきれていないという事だ。
こころは下界のお母さんとは無の中の無という
最強の心で通じ合っていた。
《インキュバシタンボルグ》略・インキュバ
地球に似た原理の異世界。
基本的には転生を認められていない。
ある程度の条件が揃うことにより、転生を認められることがある。
また条件は必要だが下界で過ごした飼い主が他界したことで一緒に住むこともできる。
天界からの転生者は歳をとることもなく、自分にとって一番好ましかった年齢の姿に変えられることも可能。ある意味不死者ということだ。
その異世界では闘いに敗れ構成した悪魔達も人間の姿で人間と交わることが可能であり、悪魔も神の許しのもとに悪意ある者にはあらゆる害を与えたりでき、植物や海、空や食べ物なども存在し、より神秘的で下界の地球と同じ原理の世界。
ただ違うとすれば冒険者や剣士、獣人 エルフ 妖精 神 魔族 人間までさまざまな人種が存在し、もちろん魔法も使えたりするため、ヒール魔法を使えば怪我や病気はリセットできる世界。
だが、インキュバシタンボルグでは、神以上に強い魔力などを持ち、天界下界を含む全ての世界を闇に包み込もうとしている魔王が存在する、、、と言われている。




