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ばあやのお仕事。

お嬢様が小さく震えて打ち明けてくだすったこと。


俄かには信じがたいのも承知しているが、長年の勘が子供の戯言で済ませてはならぬと告げていた。


お嬢様の部屋を出て、夕餉が終わった後、必ず書斎に入られる旦那様へお茶をお届けに伺う。


コンコン

「失礼いたします お茶をお持ちいたしました」

「入れ」

扉を開けると、一枚板の重厚な机の向こう側、書類に目を通されている旦那様のお邪魔にならないよう、湯呑を置く。


しばらくお傍に立っていると、旦那様が訝し気にこちらに視線を寄越した。


「どうした?何かあったか?」

「少し、お耳に入れたいことがございます お許しいただけるなら、少々調べさせたいと思いまして」

「なんだ?」

「本城さまのご息女さまについて、少々不穏な動きがあるようで」

「そうか だがあちらにもついているだろう?」

「あちらはご子息さまにはかなり目配りされているようですが、ご息女さまにおかれましては、お屋敷を出られることが少ないので、少々緩めではないかと」

「なるほど……不穏な動きとはなんだ?」


「確証がございませんので、調べさせていただければと思うのですが、いかがでしょう?」


旦那様は考え込んでいらっしゃるようだ。


「我が家にも関わりがあることなのか?」

「わかりません」


お嬢様が夢でご覧になったことだと申し上げたところで、一笑に付されるだけだとわかっているので、あえて申し上げなかった。


「ただ……」

「なんだ?」


「何もなければよいのですが、災いの兆しが大道寺家に飛び火しないとも限りませんので」

「なるほど 好きにするがいい ただし、あちらに気づかれぬよう用心しろ」

「畏まりました」


旦那様のお許しが出たので、離れの奥、我らの住まいへと急ぐ。


「お前たち、仕事だよ」


扉を閉め、上がり框で声をかけると、振り向く三人の男たち。

普段はここ、大道寺家で運転手や庭師、料理人を手伝っている、我が息子。


「あいよ」

「りょーかい」

「わかった」

それぞれに返事をしてくれる。


私ら家族は代々、大道寺家に仕える者。その時々、ご当家に災いが起こるのを未然に防ぎ、敵を排除してきた。


食卓でそれぞれに寛いでいた息子たちの顔を一人一人見る。


「本城のお嬢様の動向、周囲に不審な者がいないか、ちょいと探ってくれないか?」

「うちの姫様じゃなくて?」

運転手の一人を務める、長男がボソッと尋ねる。

「ああ、本城のお嬢様だ」


「あそこのお嬢さんって屋敷からほとんど出ねえって話だろ?探るったって難しいんじゃねぇの?」

庭師として、お屋敷の周りを整えている次男。少々口が悪い。

「そこをなんとかするのが私らじゃないか」


「何をすればいい」

語尾をあげない聞き方で尋ねる、三男。口数は少ないが、いつも黙々と仕事をこなし、料理人の一人として働いている。

「お前たち、それぞれ子飼がいるだろう?情報を集めるんだ ただし、あまり時間をかけてはならん」


そう言うと、それぞれに難しい顔をした。

大道寺家を主と定め、我らは長年お仕えしているが、本城のほうでもお仕えする者たちがいる。

うまく事を運ばないと、かち合って、下衆の勘繰りをされかねないので、皆渋っているのだ。


「お前たちならやれるはずだ 頼んだよ」

渋る気持ちはわかるが、お嬢様とお約束したことを守らねばならない。


三人とも私の顔を見てため息を吐いたが、撤回されることがないのはわかっているので、諦めてそれぞれの自室へ向かった。

三人はそれぞれ得意な分野があるので、被ることはないだろう。


お嬢様のご心痛が少しでも和らげばいいのだが…。


情報を集めろと指示してから二日ほど経った頃、諜報活動を得意とする三男から報告が上がった。


「本城のお嬢様は再来週の日曜日、系列のホテルで誕生パーティを開かれるようだ 招待客のほとんどは系列会社の役員以上だが、一部部外者も含まれている」


「部外者?一体どんな人たちなんだい?」

「うちのお嬢様と坊ちゃんも含まれている 兄者に詳しいことは報告しておくが」

「お嬢様の話じゃあ、土曜日にお屋敷に招かれてるってことだったよ? 日曜にもお出ましなのかい?」

「俺にはわからん 招待客の中に、お嬢様と坊ちゃんがいらっしゃるってことだけだ」

「そうかい、また新しい情報が入ったら報告しとくれ」

「わかった」


三男からの報告を受けて、何かあるとすればお屋敷のほうではなく、ホテルのパーティだろうと想定して、動ける者を選ばなければ。

ホテルというのは、不特定多数が出入り出来る場所だ。お屋敷ならば警護も万全だろうし、働く者たちの身元もしっかりしているだろうが、ホテルとなれば、外部から容易に入り込める。


本城家のほうで、何か察知していれば、それなりの警護をするだろうが、今の時点ではわからない。


「さて、お嬢様に一応お話しておくか」

誰に聞かせるともなく呟くと、母屋へと足を向けた。














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