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「異」世界「常」連の「日常」奪還奮闘記  作者: ちょい悪代官
第二章 試しの森

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第19話 ギルド

(それにしても、どこの世界もここは大体こんな感じだな。)


そんな事を思いながら唯人は西部劇に出てくる酒場のような建物に入っていく。


ギルド。


唯人が巡った世界の多くに存在していたそれはこの世界にも存在していた。

唯人の言う『こんな感じ』とは建物の外観ではなく雰囲気の事だ。


外観という意味であればギルドというものはかなり個性豊かでこのような酒場と一体となったものから独立した建物でまるで元の世界の役所のようなもの、元の世界より文明の進んだ世界にも存在しており、コンピューターでアクセスするタイプのギルドすらあった。


運営する組織も、この世界のように独立したものから国が運営するもの、教会が運営していたり貴族や豪商などが運営するもの、高性能AIが運営するものまで多岐にわたっていた。


ここまで来ると元の世界にギルドがないのが不思議なほどであるがその多岐にわたる物の一つがハローワークや派遣会社だと思えばいいのかもしれない。


そうした様々な姿をもつギルドであるが唯人の言うように雰囲気はどこの世界でも似ている。

勿論全く一緒というわけではない。それどころか違う部分のほうが多いともいえる。


しかしその根底にある部分。それは何かを求めているということ。そこが似ているのだ。


力・富・名声。


求める物は違えど自らを満たそうとする者たちが集う場所。それがギルドなのだ。

今回においては唯人もその一人であり今になって初めて彼らの気持ちが少し理解できる気がするのだった。


(けどこういう連中の気持ちは良くわからないけどな。)


そう思いつつ目の前に立ちはだかる男へ少々げんなりしつつ視線を向ける。


男はタンクトップ(の様な服)一枚に動物、おそらくはモンスターの物であろう毛皮のズボンというシンプルな服装をしており顔をはじめ露出した部分に無数の傷跡をもつその姿は強烈な存在感を放っている。


「よう!坊主!ママのお使いか?ここはガキの来るところじゃあねぇぜ?」


男はその見事に膨れ上がった腕を組み仁王立ちをしギルド中に響き渡るほどの声でそう言うと、剃髪したのか禿頭なのかは知らないが頭髪の一切ない頭を輝かせながら唯人を見下ろしてくる。


どの世界においても唯人がギルドへ初めて訪れると必ずといって良いほどこうして絡まれる。

それは日本人が年齢に対して幼く見えること、唯人が全体的にスマートでこの場にいる面々と比較すると貧弱に見えることが関係していると思われる。


事実、目の前の男は変態かどうかは知らないが筋肉モリモリマッチョマンであることは疑いようもない。


かつて彼のように唯人に絡んできた人物には大きく分けて二通りのタイプがいる。

一つは唯人をルーキーだと思い難癖をつけたり嫌がらせをしたりするタイプだ。

こうしたタイプは面倒そうに見えるが唯人にとってはそうでもない。

彼らが何をしようと唯人に危害を加える事など出来はしないからだ。

今回はあまり力を示しすぎると友人達に知られるリスクが増すとはいえこういった場でのいざこざ日常的なものでありそこまで目立つというほどのこともない。


それよりも唯人にとって厄介なのはもう一つのタイプである。

そうではないことを祈りつつ唯人は今まで幾度となく口にしたセリフを淀みなくなぞる。


「いえ、こう見えてももう十七歳です。今日はギルドへ登録に来ました」


「お?そりゃあすまなかったな。だが十七の割にはひょろっちいなぁ?そんなんで大丈夫か?」


ここで前者ならば更なるいやみの一つでも飛んでくる物であるがその様子はない。

どうやら厄介な事にこの男は後者のタイプのようだ。


後者。すなわちもう一つのタイプとは一言で言ってしまえば面倒見のいいタイプである。

普通ならばこうした人物はとても頼りになるのであろうが唯人にとってはわずらわしい事この上ない。

そのうえコミュニケーション能力の低い唯人にとってこうして積極的にかかわってくる人物というのはあしらいにくく苦手な存在と言えた。


「あはは…、まあ一応逃げ足には自信あるのでそれでなんとか…」


と、作り笑いを浮かべながら答える唯人。

これは面倒になった唯人が適当に答えたその言葉であるが、それすら面倒見のいい人種というのは拾ってつなげてくるものである。


「お?じゃあ坊主はギャザラー(採取者)志望か?男ならモンスターや盗賊どもをぶちのめしてなんぼだと思うが…まあそういう道もあらぁな」


ギャザラー。つまり素材や情報を集める者という意味である。

オルトリーゼ曰く、

「ギルドに登録した者達は『冒険者』と呼ばれます。冒険者には二つの呼び方があり一つは『ハンター』。こちらは戦う事をメインとする冒険者で受ける依頼としてはモンスターや盗賊などの犯罪者たちの討伐、依頼主やギャザラー、こちらは後ほど説明いたしますが、これらの護衛などを主に受注いたします。

そしてもう一つは今申しました『ギャザラー』。こちらは主に収集活動を担当し、様々な素材の収集は勿論、遺跡での謎解き等の探索や技術を要するモンスター素材の剥ぎ取りなどをメインに活動する冒険者を指します。こうして二つの呼び方があるのには勿論理由がありますがそのあたりはギルドの職員に直接説明を受けるのがいいでしょう」


とのことらしい。

どうやらこの目の前の男は唯人の逃げ足に自信があるという言葉からギャザラー志望と判断したようだ。

せっかくなのでその考えに乗っかり話を切り上げるため返答する。


「はい。そのつもりです。それでは登録の手続きをしなければならないのでこれで失礼します」


そう言ってそそくさと退散しようとする唯人の肩を彼はガシッと掴み引き止める。


「まあ待て。俺の見立てでは坊主にゃなかなかの才能があると見た。どうだ?俺らと組まねぇかい?ギャザラーを目指すなら俺達みたいなハンターのパーティーと懇意にしておいても損はねぇぜ?」


男はそう唯人に迫る。本来ならばギャザラーの護衛としてハンターが必要となる場面は多々あるので、こうしてパーティーメンバーとして加入したり、加入はせずとも良好な関係を築く事で、護衛の料金や報酬の分配などで有利になるなどのメリットがあるのだが、唯人の答えは決まっている。


その答えを口にしようとしたところで男に声を掛ける者たちが現れる。


「おいおい、マキシの旦那、ま~たそれ言ってんのか?こないだもそう言って引き止めて振られたばっかじゃねぇか」


どうやら唯人を掴んでいる男はマキシと言うらしい。そして彼らはマキシのパーティーメンバーのようだ。


「そうそう、しかもそいつ、最初の依頼からまだ帰ってきてないんだろう?十中八九もうこの世、とは言わないがこの城下町にゃぁいないだろうさ」


先にマキシに声を掛けたのは背中に弓を背負った男だ。

マキシと比較すれば細くみえるが、がっしりとした体型をしており筋肉の付き方も、マキシがパワーに特化した物とするなら彼はスピードを殺さない範囲で限界まで鍛え上げた、と言った印象だ。


そして後に声を掛けてきたのは女性のハンターだ。

彼女も冒険者である以上鍛えているようで、二人と比較するとスレンダーで女性らしさを感じるがインナーとして着用しているであろうビスチェのようなレザーアーマーの下部に露出した腹部には腹筋が浮かび上がっている。

彼女は腰に左右2本ずつショートソードほどの長さの剣を下げ、太もものホルダーには投擲用のナイフを装備しており、すばやさを重視した戦闘を得意とすることが窺える。


「大体この坊やに才能なんてあるのかい?冒険者より男娼の才能のほうがありそうだけどねぇ?」


そう言うと彼女はその目豹のような体躯に相応しい鋭い肉食獣のような目を唯人に向ける。

弓を背負ったハンターも彼女に追従し


「はっは~、違いない。なあ兄ちゃん、やってみる気はねぇか?俺の行きつけの娼館の主人に話しつけてやってもいいぜ」


などと言ってくる。


「いいねぇ。なんならあたしが最初の客になってやろうか?たっぷりかわいがってやるからさぁ」


「はっ、未開通(処女)の癖に何言ってんだよ…」


「っ!な、何で知っ、じゃなくてしょ、処女じゃないし!」


「おい、キース!ミリア!いい加減にしろ!すまねぇな、こいつらも悪い奴じゃ…っていねぇし!」


マキシが視線を戻すとそこに唯人の姿は既にない。

かかわるのが面倒と踏んだ唯人は早々に退散していたのである。


「うおっ!マジかよ!?」


「い、いつの間に…」


雑談に興じていたとはいえ二人も自分が気付かぬうちに唯人がいなくなっていることに驚きを隠せない。

しかし冒険者の中には気配を隠す事に長けていたり、影が薄かったり、唯人の言うように逃げ足の速いものもいるのですぐに持ち直しマキシへと話しかける。


「しかし旦那、ま~た振られちまったな」


「おめぇらのせいだろうが!…しかし俺たち三人に気付かれずに逃げるたぁ逃げ足に自信があるってぇのも嘘や誇張じゃねぇようだな」


マキシは唯人を掴んでいたはずの右手を握り締めながら唯人が向かったと思われるギルドの受付のあるほうへと視線を向ける。


「そうだな。ま、あいつは前の奴みたいにソッコーいなくなったりしないだろうよ。こうして顔も合わせてあるしまた仕事が重なったときにでも勧誘すりゃあいいさ」


「がははは、ちげぇねぇ。なぁミリア?」


「え?…あ、まあそうね」


「旦那、ミリアは旦那とは違う意味で振られちまったんだからあんまり触れてやんなや」


「ちょっ!?キース!?」


「?なんだかわからんが残念だったな。よし!全員揃ったら次に受ける依頼を決めるぞ。それまでに自分の受けてぇ依頼を選んどけよ!」


「りょーかい」


「あいよ。あと振られてないからね!」


こうして三人はもう一人のメンバーが戻るまでに張り出された依頼の中から自分の受けたい依頼を選び始める。


これは彼らの、いや、ギルドに集まる者たちにとっては日常的な出来事。

だが彼らは唯人というイレギュラーとかかわった事でその日常から逸脱し始める事になるのだった。

大分間が空いてしまいましたが執筆再開しました。

書き溜めなどをしていたわけではないので更新速度は以前と変わらないとは思いますが地道に書き進めて行きたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。

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