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「異」世界「常」連の「日常」奪還奮闘記  作者: ちょい悪代官
第一章 友との異世界

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第18話 第一章 エピローグ

エピローグという名の解説回。

「それで、今後の方針なんだが――」


唯人は伝話器によるオルトリーゼとの交信を継続する。


先程までの雑談に近い会話は唯人にとっては煩わしく感じる部分もあったが全く無意味だったというわけでもない。


よくよく考えれば自身も他の世界で求婚されたり娘を紹介されたりしたことは数知れず、異世界から来た事を告げ、共に生きることはできないと告げれば『じゃあせめてあなたとの間に子供を――』なんてことも決して珍しいことではなかった――それらは唯人のある信念によって全て拒否したのだが――。

そういった事態が皆にも起こるという可能性は十分に考えられる。知人としての贔屓を差し引いたとしても彼女たちは十分に魅力的な女性達だからだ。

そのあたりの思慮に欠けていた唯人だったが、オルトリーゼの疑問によって全てとはいかないかもしれないが、いわゆる悪い虫が付く事を防ぐ約束を取り付けることができたのは唯人にとって予想外の収穫だった。


ただそうした予想外の収穫も得られるので雑談も悪くはないのだが、当然ながら話すべき本題も疎かにする事はできない。

故に少々ごり押し気味に話を打ち切った唯人はオルトリーゼと共有すべき話題を切り出す。


「昨日確認したがこの国には書物や伝承などを含めて今回使用した召喚術及びそれに対応した送還術しか伝わっていないんだな」


「はい。わたくしは今回の召喚を行うに当たり入念に準備を行ってまいりました。少なくともこの国内ではそういった術は他にはございません。仮にあったとしてもそれはわたくしには見つけることのできない物、という事になります」


「そうか。ではやはり探すとなると他の国、遺跡、――主に長寿な――種族の伝承、そして、ギルド、か」


「そうなるかと、ですが…」


「わかっている。いきなり他国に行くつもりはないよ。まずは近場から埋めていくつもりだ」


「ではやはりギルドへ向かわれるのですね?」


「ああ。この世界のギルドは国から独立したタイプだったな」


「はい。ギルドは国にとらわれない組織です。ですからわたくしの力では資料などを提出させることはできません」


「なるほど。で、その資料を見るためにはギルドに登録する必要がある、と」


「はい。そして、開示される資料はランクに左右されます」


「つまり全ての資料を見るにはランクを最高まで上げろ、って事か」


「その認識で概ね間違いではありませんがものによっては依頼を受注しなければ開示されない物もあるようです」


「…侵入して盗み見ることは?」


「不可能かと。特に秘匿性が高いものは許可なき者が閲覧しようとすると自壊するようになっているようです」


「なるほど。まあ見ようと思えば見られる気もするが万が一にでも大切な資料を失うリスクを考えるならさっさとランクを上げたほうが建設的かもな」


「ですがあまりにも急激にランクを上げますと良くも悪くも目立つことになり勇者様方の耳に入ることになるのでは?先に言っておきますがギルドの登録は実名のみ受け付けておりますので誤魔化しは利きませんよ?」


「む、それは厄介だな。ではランク上げと並行して種族ごとに伝わる伝承などの調査もしていくか」


「それがよろしいかと。我が国では純人族はもちろん亜人族、つまり獣人族や魔人族といった全ての種族に対し平等な政策を行っております。ですので他国と比較すると多様な種族の方々が集まる傾向にありますのでそういった情報も集めやすいと思います。ただそうは言ってもやはり全ての人が平等に接しているか、と言えば残念ながらそうではありません」


「まあ、そうだろうな『純』、とか『亜』とか言ってる時点でなんとなく察しは付く」


「お恥ずかしい限りです。ですがそれでも我が国は全ての種族が少なくとも法の上では平等な数少ない国なのです」


「そうみたいだな。パッと見ただけだが普通の人、純人族だったか、それと亜人の比率は半々くらいだな。ま、どちらにしろ情報を集めつつ少しずつ行動範囲を拡大していくって所だろう」


「承知しまし…唯人様?今どちらにいらっしゃるのですか?」


「ん?もう城下町に下りてきているぞ?なかなか活気があっていい街じゃないか」


「ありがとうございます。…ではなくてですね、もうそんなところまで移動しているのですか?」


「そりゃそうだろ?さっきも言ったが可能な限り時間は有効に使いたいんだよ」


「わたくしが言いたいのは物理的におかしいと言う事なのですが…。しかし、わたくし共が用意した物資などは受け取らなかったのですか?」


「いや?受け取ったぞ」


「ですがそれはかなりの量があったはずです。それはどうされ…。もしや昨晩の不思議な空間にしまわれたのですか?」


「ああ、その伝話器を出したのを見ただろ?それと同じ、というか逆の要領で手配されていた物資はそこにしまった」


「たしか、『タクミ』でしたか」


「そう。正式名称は『世界と世界の間というデッドスペースを収納に利用するという匠の遊び心』。略して『匠』だ」


「なんとも面妖な名前ですね」


「まあ自分で付けておいてなんだが少々ふざけすぎたかもしれないな。でも便利な事には変わりない。しかも通常なら隣り合った世界の間の空間しか使えないんだが、この世界は全ての世界とつながっているおかげで俺が今まで回った世界で放り込んだまま放置してあった物もこうして引き出して使えるってわけだ」


「ではこの伝話器以外にも便利な道具があったりするのですか?」


「あーうん、…たぶん」


「…唯人様?」


「いや、正直物置状態であんまり整理されてないから望んだ物を取り出すのは結構苦労するかもしれない。伝話器があんなにすんなり出てきたのが奇跡みたいな物だからな」


「そ、そうなのですか」


「まあ、中にはそこそこ良い武器とかも入っているからもし皆が強くなって武器がついてこられなくなってきたら、『我が国の伝説の武器』とかいってみんなに配ってもらうっていうのも悪くないかもな」


「では、そのときまでに『匠』のなかを整理しておいてくださいね」


「…やっぱり皆があんな武器を使って戦ったりしなくてすむように頑張らないとな」


「…話は変わりますが伝話器で長い間話してしまっていますが唯人様はなんともないのですか?」


「ん?ああ、オルトリーゼは昨日30秒くらいしか使えなかったもんな」


「ええ。しかも距離も10メートルほどしか離れていなかったというのに…。たしか距離が離れるに応じて消費される魔力も増えるのでしたよね?」


「まあ、そうだが昨日は召喚術なんて使った後だったから、ってこともあるだろう。それにこれの本来の使い方は俺みたいに直接魔力を流しながら使うんじゃなく、事前に魔力を充填しておいて必要なときに消費しながら使うのが本来の使い方なんだよ」


「そ、そうなのですか」


「そう。だから余裕があるときに少しずつでも魔力を充填しておいて俺が遠くにいたとしても最低でもコールくらいできる量は確保しておいて欲しい。そうすればこちらから折り返すことができるからな」


「はい。それにしましても唯人様は膨大な魔力をお持ちなのですね。さぞ強力な魔法が仕えるのでしょうね」


「あ~、いや、魔力が多いのは自覚しているんだが実は魔法はあんまり得意じゃないんだ」


「そうなのですか?」


「昨日使ってみせた幾つかの基本的なタイプの魔法なら問題ないんだけどね。この世界の魔法は『魔力』を『イメージ』で変換して『魔法』として発生させるタイプだろ?俺はその『イメージ』の部分が決定的に欠けているんだ」


「…わたくし達は無意識で魔法を使っていますので唯人様の仰っている意味が正しく理解できているかはわかりませんが、魔法の完成系を想像するのが得意ではない、という事でしょうか?」


「まあそんなところだ。これは皆に説明するときにわかりやすくなると思うから伝えておくが、このタイプの魔法はさっき言ったように魔力をイメージで変換して魔法とするんだ。こういうと簡単そうだが魔力をイメージに変換する技術があるのが前提でその上イメージはかなりはっきりと形にできていないといけない。だから『詠唱』という形で言葉にしたり、『魔方陣』を描いたりしてイメージを補完するんだ。これが苦手となると魔法を使う事は難しくなるっていうのはわかるよな」


「はい。ですが昨晩もですが、先程も唯人様は魔法を、しかも詠唱や魔方陣を描いた様子もなく使っておられましたよね?」


「ああ。『イメージ』するのが苦手なら『実際に体験』すればいいんだよ。つまり炎の魔法が使いたければ『実際』に炎を観てどのように発生するか、触れてどれくらい熱いのか、そうしてそれがどんな物か理解すれば『イメージ』の不足を補完できる。あとは俺たちの世界では科学が発展してるって話したと思うが何故火は燃えるのか、どういう仕組みなのか、何が必要なのか、っていうのを理解することでもさらにイメージを深めることもできる。だから俺は実際に見たり触れたり知識として学んだことのある現象を魔法にすることはできるが、あまりに突拍子のないものは魔法としては使えないって言ったらいいのかな?」


「そうなのですか。では勇者様方もそのあたりは苦手なのでしょうか?皆様の世界には魔法がないようですし…」


「ところがそうでもないんだよなぁ。俺はまだ『勉強中』だが、俺達の世界の映画や漫画、ラノベ…って言ってもわかりにくいか。まあ御伽噺や神話みたいな物語には魔法は頻繁に出て来るんだよ。そこには実際の魔法の常識からかけ離れたようなとんでもない魔法が山ほど出てくる。そういったものでも『イメージ』を補完できるようだから想像も付かないような魔法を使うようになるかもしれないぞ。例えば…この世界に空中浮遊の魔法はあるか?」


「ええ、レビテーションという魔法があります。ですが非常に高度な魔法で飛んでいられる時間は極僅か。移動や戦闘に使用する事は難しいとされています。使用法としては高所からの落下の衝撃を軽減したり、高所の物を取る、見通しの悪い場所での偵察などですね。加えて言うなら最初にお会いしたときに梢様が仰っていたように箒、ではありませんが杖による魔力の増幅は必須といわれています」


「なるほどなるほど。じゃあ、そのあたりの常識を教えないでおいて空中浮遊の魔法があることだけ伝えてみてくれ。恐らくだが面白いものが見られると思うぞ」


「…もう何が見られるのか大体想像がつきますが…。ではそれ以外のことに関しても不必要にこちらの常識を知らせないほうがいいかもしれませんね」


「そうだな。勿論知らないと困る事とかはきちんと教えておいて貰いたいが、変に枠と言うか型にはまるような事を教えてしまうと悪い影響が出そうなんだよな。特に玲奈と灯先生は」


「まだお会いして一日も経っていませんが唯人様の仰りたい事はわかる気がいたします。他のお二人はどうでしょう?」


「梢は自分に自信がないというか十分な状態でもまだ足りないと感じてしまうタイプだから常に前進していくってところか。言ってしまえば本人に自覚はないと思うが向上心の塊みたいなものだな、自分限定で。だから常識を教えたとしてもいつかはその壁を乗り越えるだろう。…時間はかかるかもしれないが」


「では風香様は?」


「あいつは想像、いや創造力がありすぎる。風香にだけは常識を教えておいてもいいかもしれない。…まあ言ったとしてもそんな常識の壁を容易くぶち破るだろうが、な」


「それはなんというか、頼もしいと言ったらいいのでしょうか」


「逆に心配なくらいだ。最初七日で世界を焼き尽くすとか言っていたがあいつならやりかねん」


「ふふっ、それはまたご冗談を。そんな事を言ってはまた風香様に正座させられてしまいますよ」


「俺はそれで済むかもしれないが他の連中が風香を本気で怒らせたらさっき言ったことが本当になるかもな」


「…先程のは冗談ではなかった、と?」


「可能性としては十分ありえるレベルだな。勿論規模はもっと小さくなるだろうが」


「…そのあたりも十分留意するよう周囲の者に伝えておきます」


「そうしてくれ。…まあ、とりあえず今話しておくことはこんなところか。また何かあったら連絡するよ」


「畏まりました。ではこちらも何かありましたら連絡させていただきます」


「ああ。…俺に対してはいろいろ思うところがあるだろうが、その、なんだ…」


「唯人様?」


「……皆のことをよろしく頼む」


「っ!!!…はい。お任せください」


「じゃあこれで切るぞ。時間云々偉そうに言っておいて結構な時間話しちまったからな」


「はい。では失礼致します」





城下町の路地裏で伝話器での連絡を終えた唯人は大通りへ出ると最初の目的地であるギルドへと歩き出す。


そこで考えるのは今までの事、そしてこれからのこと。

今まで幾度となく異世界を渡り歩いてきたが、唯人にとってはある意味ではさほど問題ではなかった。


もちろん楽な事ばかりではなかったし、死にかけたことだってある。だがそれですら唯人にとってはどうでもいいことであり死んだら死んだで別にそれでも良かったとすら思っていたこともある。


だが今ではさっさと元の世界に帰ろうと努力するし命の危険も以前に比べれば回避するようになった。


それも全て手に入れた日常に戻るためだ。


だが今回ばかりは今までどおりにはいかないだろう。


それを踏まえて目的やすべきことを整理する。


まず唯人の望む日常を取り戻すには自分も含め全員で元の世界へ帰る必要がある。

これは最低条件だ。


次に、その上で唯人が異常な人物である事を知られないこと。

これも唯人の望む日常を取り戻すためには必要なことであるが、『異世界に何度も行っている』という部分は最悪知られても構わない。


そしてもし皆が唯人と同じような体質?になった時のために、皆にある程度は強くなってもらうこと。


唯人はあまり気にしないが皆が不安や後悔、禍根を残さないためにマリシスを倒す事。


これらの条件を満たしつつ元の世界に帰る方法を探すとなるとなかなか骨が折れそうである。

だが唯人にはもう一つ目的がある。


それは今回の召喚失敗の原因を探ることだ。


この失敗が単にオルトリーゼの召喚術の失敗、というならそれは問題ない。

だが唯人が昨日調べた範囲では失敗の原因となるようなミスなどは見つからなかった。


では唯人に巻き込まれたというのはどうか。

これも可能性は薄いだろう。彼女達の前で異世界に召喚されたことは一度や二度ではないし体が触れ合っているときに召喚されても巻き込むことはなかったのだ。

それに皆は神に合い加護ももらっている。

どちらかというと巻き込まれたのは唯人の方と考えるのが自然だ。


そうなると何者かの介入、現時点ではマリシスの妨害などの影響という線が濃厚だがもしかすると彼女達のあったという神が何かを仕組んだという可能性もある。

いずれにしろ今の状況ではなんともいえないというのが正直なところだ。


他にも可能性としてあげられる物は幾つかあるのだが、なぜ原因を調べるかといえばもし人為的な原因だとするならばそれを取り除かなければまた同じ事が起こる可能性があるからである。


そうした原因となりえる物を頭に浮かべ、空を見上げ立ち止まると思わずつぶやく



「どうしてこうなった…」



と。




そして天下の往来の真ん中でしばらく思いを巡らせ一つの結論を導き出す。

それは結論というよりは決意と言った方がいいものであるのだが。


たとえこの一件がどんな原因だろうが、マリシスがどれほどの巨悪だろうが、いずれにしろ俺は…


「必ずあの日常を取り戻してみせる」


最後の部分をそう口にすると再び歩き出す。


その姿は未来へと向かう若人のそれであったが、その先に待ち受けるのは輝かしい『未来』だけではないということを唯人はまだ知らない。

次話より第二章に入ります。良くある異世界チートものにある展開とできるだけ被らないようにしていきたいと思っていますが…どうなる事やら。


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