↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「異」世界「常」連の「日常」奪還奮闘記  作者: ちょい悪代官
第一章 友との異世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/86

第9話 『覚悟』

「先ほど皆様の世界には魔法がないのかお尋ねしましたが、わたくし達の知る限り魔法、正確には魔力、これは簡単に言ってしまうと魔法を使うときに消費されるものですが、魔力のない世界は存在しません。と言うよりは存在できない、と言った方がいいかもしれませんが」


そう告げたオルトリーゼは皆を見回すと更に続ける。


「『世界』を形作るのに魔力は必要不可欠なものでこれが無い、もしくは足りないとその世界を保つことができずに崩壊、あるいは他の世界に吸収されると言った事態が起きると聞いています」


「それでは私達が知らないだけで私達の世界にも魔力が存在している、ということなのでしょうか?」


そう尋ねる灯先生にオルトリーゼは頷きで返す。


「ここからはわたくしの推測になりますが、皆様の世界はもともと魔力がほとんど存在しない世界だと思われます。しかしその不足している魔力を先ほど皆様の仰られた数々の神々が補っているのでしょう。いかに神と言えど世界を維持するのに必要な魔力は膨大、故に神の力が弱まり、姿を現したり加護を与えるといったことができずに信仰の低下を招き、信仰が低ければ神も力を取り戻すことができず、世界に魔力を満たすことができないといった悪循環に陥っていると考えられます。また、魔法が普及していないのも同様の理由でしょう」


それを聞いた風香が、


「なるほどね~。その仮説は説得力あるような気がするわね。でも今は私達の世界のことはとりあえず置いておいていいわ」


とオルトリーゼの話を一旦遮り尋ねる。


「それよりその魔法って言うのは何ができるの?私達のイメージだと…、


そこで一旦区切り皆のほうを向くと


「じゃあまず玲奈からどうぞ~」


いきなりこちらに話を振ってきた。

話を振られた玲奈は、


「えっ!?私!?…え、え~っと、そうね、かぼちゃを馬車に変える、とか?」


玲奈にしてはなかなかかわいらしい回答だ。


「梢は?」


「えと、えと、箒で空を飛ぶとかかな?」


梢らしいシンプルな回答、と言ったところか。


「先生は?」


「怪我や病気を治したりできると言うのは聞いたことあるわね」


これは元の世界で魔法、と言うか超能力みたいなもので病気を治すという奴のことだろう。創作物ではそれこそよくあるものだが。


「唯人は?」


「そもそもここに俺達を呼んだのも魔法じゃないのか?」


と当たり障りの無い回答をする唯人。

その回答が期待はずれだといわんばかりの表情をした風香がまとめる。


「男なんだからもっとこう、七日で世界を焼き尽くす!とかそういうこと言いなさいよ」


「…それは魔法じゃねぇよ」


「あれ?これ魔法じゃなかったっけ?…と、まぁ私達の魔法のイメージなんてこんなものなんだけど、唯人の言ったとおり私たちがここにいる時点で魔法そのものに対しての疑いは無いわ」


そこまで言うと軽い調子をスッと潜めやや厳しい視線をオルトリーゼに向けると本題に入る。


「魔法で何ができるかってさっき聞いたけど結論から言って――



――私達は元の世界に戻れるの?」



玲奈、梢、灯先生が息を飲む。

この質問は三人も聞きたかった、でも聞けなかった質問であった。


質問を受けたオルトリーゼもやや渋い顔をして回答する。


「…そうですね。このことに関しても話しておかなければなりませんね」


そう前置きし話を続ける。


「先ほど申し上げましたように、わたくし達も皆様に戦いを無理強いするつもりは毛頭ありません。ですのでお帰りいただく術(すべ)ももちろん用意してありました」


「…過去形、と言うことは何か問題があったのね?」


言葉尻を捉えた風香が尋ねる。


「はい。この召喚の術と送還の術は対を成すもので、召喚したものを送還すれば元居た場所、この場合時間も同じ場所へと送り帰す事ができます。ですが…」


そこで一度言い辛そうにこちらを見るが、意を決したように続ける。


「わたくし達の用いた術は一人用の術だったはずなのですが、どういう訳か皆様方5人をお呼びしてしまったのです。ですが送還の術も一人用になりますので皆様全員をお帰ししようとすると非常にリスクが高くなってしまうのです」


「…つまり、現状では私達全員を100パーセント安全に送り帰すことはできない、ということね?」


「…その通りです」


搾り出すように答えたオルトリーゼの言葉を聞き皆の表情が陰る。


一方の唯人はというと、


(これは面倒なことになったな。)


などと考えていた。


もしきちんと送り帰す方法があったなら強引にでも元の世界に帰るように主張しただろうが、こうなった以上皆が無事に帰れる方法を探さなくてはならない。


変な方法や他の世界で使った方法で帰ろうとするとそのまま別の世界へご案内~となってしまう。

なのでその世界ごとに適した帰る方法を見つけなければならないのだが、過去に召喚された世界において元の世界に戻る方法を用意されていない場合、召喚された目的を達成する以上に時間がかかることがほとんどで、数日で目的を達成したのにもかかわらず、帰る方法を探すのに半年以上かかったことすらあるほどだ。


更には理由は様々だが唯人を手元に置いておきたいと考える者達が妨害してくることも珍しくはない。


(オルトリーゼが嘘を言っている可能性もなくはないが、最初の周囲の者達の動揺を考えれば少なくとも5人がここに現れたことは想定外というのは間違いないだろう。なら対応する術では1人しか帰せない可能性が高い上1人を帰してしまえば他の4人は同じ場所、時間に帰れない可能性が出てくる、か。)


唯人がそう思案しているうちに風香が1人は帰れるのかという質問をし、オルトリーゼが唯人が思った通りの理由で答えていた。

加えてオルトリーゼが知る範囲では複数人を同時に元の世界へ送還する方法などはないそうだ。


(女王であるオルトリーゼが知らないにしろ知っていて隠してるにしろ、この国から情報を得るのは難しいかもしれないな。そうなると他国か国に属さないタイプのギルドなんかがあるとその手の情報が出に入るかもしれない。それから長寿の種族なんかがいるといいな。まあ、オルトリーゼの話が本当なら確実にもとの世界に戻る方法はあるってことになるが、そのためには――)


唯人が今後の行動について思案していると風香がオルトリーゼの回答に


「そう、わかったわ」


と返事をし唯人に





「唯人、あなた1人で帰りなさい」





そう告げた。


「なっ!?」


唯人は今考えていた今後の予定を一瞬で霧散させるほどの衝撃を受ける。

もちろん1人で帰る気など毛頭無い。

むしろ皆を守らなければならない。彼女達さえ無事にもとの世界に帰せば自分のことはどうとでもなる。

そういったある種の使命感のようなものさえ感じていたのだが、思いは予想外の形で唯人へと返ってくることとなる。


「何勝手なこと言ってるんだ!それに3人の意見も聞かずに――「もう済んでるわ」」


「――は?」


どう考えても相談している様子などは無かった。

さっき様子のおかしい皆にここに来るまでに何かあったのかとも思っていた。

だがそれはあくまで唯人が先に転移し準備室に残った彼女達の間で何かあったのかと考えたからであって、この事についてそのタイミングで相談する事はできないはずなのだ。

聞き間違いかと思い

「もう一度言ってくれ」

そう頼もうとする前に風香が再び告げる。


「もう、済んでるのよ」


唯人の目を見据え力強く告げた風香。

その目は嘘を言っている様には見えない。

だが聞かずにはいられない。


「いったいいつの間に…。それになんで俺なんだ!?」


そう問う唯人に後ろから声がかかる。


「…実はね、私達4人はここに来る前、準備室からここで目が覚めるまでの間別の場所にいたのよ」


そう答えたのは玲奈。


「…どう、いうことだ?」


振り返り何とか搾り出すように口にする唯人。

少なくとも唯人は準備室から特に何も間に挟むことなくこの場へと転移していたはずだ。

戸惑う唯人に風香が続ける。


「そこでね、会ったのよ。特に名乗らなかったけど彼女(オルトリーゼ)の話からすると神って奴に」


その言葉を聞いた周囲の人間達は、「おお!」「なんと!」などと騒ぎ出す。今度ばかりはオルトリーゼにも驚きの表情が見て取れる。


続いて梢。


「そ、そこで『加護』って言うのを貰ったんです。ただ一回に授けられる加護は一人分だけって言うことで五分割してもらったんですけど」


付け加えるように灯先生。


「最初は私達だけで四分割するつもりだったようだけどもしかしたら相澤君が後から来るかもしれないと思って五分割にしたの。だけどさっき加護の話が出たとき信じてないって顔してたでしょう?それで相澤君が加護を貰ってないって分かったんだけど、もし相澤君が加護を受けずにこちらに来てしまっていたら私達四人で相澤君を守ろう。そう決めていたの。だから一人だけ帰れるということなら相澤君になるというわけ」


(ッ!なんてこった…。皆を守ろうと思っていたのにまさか向こうもそう思ってくれているなんて。しかも俺なんかより全然覚悟を決めているじゃないか!)


唯人は軽く考えていた自分が嫌になる。

もちろん彼女達を守るという気持ちに偽りはないのだが、自らが得られたはずの力を唯人のためにとって置き、帰れる1人に迷うことなく唯人を指名する彼女達と、自らの異常さがばれるのを恐れて『できればばれずに済ませたい』などと思ってしまっている唯人とではその覚悟は比べるべくも無い。――それでも…。


最後に風香がまとめに入る。


「そ。で、加護を貰えるだけ貰って何もしないで帰るっていうのもどうかと思う、ってことでオルトリーゼ、オルトリーゼ様?女王陛下?この世界の作法は知らないからどういったらいいのか分からないけど私達はそのマリシスって言うのと戦うのに協力するわ。さっき梢が言った様に加護が5分の1の5分の1勇者だけど伸び代はあるらしいからちゃんと鍛えれば勇者が4人になって大変お得ですよお客様。ただ帰る方法については探しておいて貰いたいわね。全て終わっても帰れませんって言うのはさすがにごめんだわ」


唯人が呆然としている間に話がどんどん進んでいく。


「わたくしの事ならばオルトリーゼでかまいません。このような誘拐紛いの呼び方をしてしまったのにもかかわらずご協力頂けるとは…。本当にありがとうございます。加護が五分の一との事ですが後日どの程度の力があるのか確認いたしましょう。いずれにしろいきなり戦場に出ていただくような事はありませんのでご心配召されませんよう。元の世界へ帰還する方法についても調査いたします」


「そう?なら少しは安心ね」


「それに『勇者』ですか。勇、者。勇気ある者、ですね。誠に皆様に相応しい言葉だと思います。これより皆様の事を勇者様とお呼びする事にしましょう」


「ちょ、さすがにそれは恥ずかしいような…。そういえば自己紹介もまだだったわね私は――」


そうして自己紹介タイムが始まる。


風香及び風香様⇔オルトリーゼ

玲奈及び玲奈様⇔オルトリーゼ及び陛下

梢及び梢様⇔オルトリーゼさん及び陛下

灯さん及び灯様⇔オルトリーゼ及び陛下

風香の『別にこの国の人間じゃないんだし変に畏まる必要ないよね』という言葉を受けこのようにったがさすがに玲奈や灯先生は公の場では問題があるだろうと主張し公私を分け、二種あるものは後者が公の場において用いられる事になるようだ。

自分の主張を曲げない風香はさすがといったところか。


「で、短い付き合いになるかもしれないけど――」


風香にそんな前振りを付けられた唯人も自己紹介をする。


「…相澤唯人だ。俺は皆と違って俺は加護とか言うのを貰ってないから普通に呼んでもらえればいい。その代わり俺もオルトリーゼと呼ばせてもらう。あいにく俺は皆をこんなところに連れてきた奴に敬意を向ける気にはなれないんでね」


唯人のあまりにも失礼な物言いに周囲のものは再び憤りの声を上げる。

唯人以外が言うのであればまだわかるが何の加護も持たない者が言うのは許せないようだ。

いっそのこと暴発してみんなに内緒で追放とかしてもらえるとありがたいくらいだ。


「わたくしの事はそれで構いません。ですが唯人様もこちらがお招きした客人です。敬意を持って呼ばせていただきたいと思います」


先程は言葉で制していたが、今回、オルトリーゼはそう言って頭を下げる事で場を収める。


ちなみに唯人が言う『皆をこんなところに連れてきた奴』というのは半分自虐で、本来自分がここに呼ばれて皆がそれに巻き込まれたと予想しているためだ。

といっても他のものにそんな事が分かるはずもないのであからさまなあてつけのような言葉になったのだが。


風香が『おやおや~?拗ねちゃったのかな~?』などと言っているが構っている余裕は今の唯人には無い。

いくら覚悟が劣っているとはいってっもこのままホイホイと元の世界に帰るわけにはいかない。考える事、やる事はいくらでもある。


「話さねばならない事、伺わなければならない事はまだたくさんありますが皆様もお疲れでしょうし、本日はここまでとしましょう」


オルトリーゼはそう言うと近くの者になにやら命じ、送り出す。


「今お食事とお部屋の用意をしております。お食事の方は問題ありませんがお部屋のほうは少々時間がかかりますので先に大食堂へご案内いたします」


そう告げ先導して歩き出すオルトリーゼの背を見つめ唯人は思う。


(まずはこのオルトリーゼだ。彼女について知らずに動くのはリスクが高い)


先程彼女は『頭を下げる』事でその場を制した。

その前にして見せた言葉で制するというのはある程度の地位があるならばそう難しくは無い。

だが頭を下げて制するというのは少々訳が違ってくる。

あのような失礼な発言に対し頭を下げたとなれば普通ならば『このようなものに頭を下げるなどなりません!』などと忠言が入るものだ。

それがなかったという事は、

1.言うことができない

2.言う必要が無い

3.言っても無駄

4.言う気が無い

のどれかといった所だろう。


1ならば逆らうものは許さない暴君。

2ならば英邁な指導者。

3ならば暗愚

4ならば無能な家臣しか集められない=自身も無能

と推察できるが今までの様子からしてほぼ2で確定。大穴で1と言った所か。


だが英邁な指導者ほど恐ろしいものは無い。

自国のためにあらゆる手を尽くしているからだ。

極端な話、この国にとって邪魔なものを彼女達に始末させるくらいのことはやってくるかもしれない。

少なくともオルトリーゼの真意をここで見た姿だけで判断するのは危険だ。

だが先程中断させられた今後の行動指針の様に元の世界に帰る方法を探すには彼女達に張り付いているわけにはいかない。

かといってこのままでは心配でろくに調べ物もできない。

ならば…。


この微妙にモンスターペアレントのような思考で唯人は次に起こす行動を決めたのだった。

読んで頂きありがとうございます。

いよいよ唯人の強さの片鱗が見られるかも!?

モンペ()なのでやる事は微妙だと思われるかもしれませんが…。


ですが次回はanother sideを入れようかと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。