第1話 転生と魔法力診断と
『剣聖』として剣を極めた一人の老人。
しかし、人生の最後に彼が抱いたのは――「もし魔法を極めていたら」という小さな願いだった。
そして、その願いは謎の声によって叶えられる。
五百年後の世界で、王子「アル=シィラー」として転生した元剣聖。
剣しか知らなかった彼が、今度は魔法の世界で新たな人生を歩み始める。
果たしてアルは、どんな魔法の才能を持っているのか。
ぜひ、最後までお楽しみください!
『剣聖』という言葉を知っているだろうか。
『剣聖』とは、剣を振り続け、その道を極めた者に与えられる称号。
とある国に、一人の『剣聖』がいた。
そんな剣聖でも、歳には勝てなかった。
とある一室。そこにはベッドで横になっている老人と、それを囲むように十数人の人々がいた。
「剣聖様、どうか元気になってくださいませ」
「そう言うでない。後ろ髪を引かれては、逝くに逝けないではないか」
老人――剣聖は、穏やかに笑った。
「儂は剣に生き、剣で死ぬと決めておった。こうなることはわかっておったのじゃ。だから……笑って儂を見送ってはくれないか?」
「剣聖様……」
周りにいた人々は、次々に涙を流した。
(儂は……本当は剣ではなく、魔法を極めておったらどうなっていたのかのう)
その時だった。
突如、どこからともなく声が聞こえた。
「その願い、叶えて差し上げましょう」
(誰じゃ? 願いを叶えるとはどういうことじゃ)
しかし、その問いに答えは返ってこなかった。
そして――目の前が真っ白になった。
◆ ◆ ◆
(うーん……ここは?)
最初に見えたのは、二人のメイドだった。
(なんだ!? 巨人が襲ってくる!)
思わず手を伸ばした瞬間、違和感を覚えた。
(……ん? 僕の手が小さい? なんだ、これ――)
「おぎゃー! おぎゃー!」
「よしよし、元気ですね。王子様」
(……え?)
しばらくして、ようやく状況を理解し始めた。
(まず整理しよう。今の儂は……赤ん坊の状態)
(いや、どういう状況じゃ?)
(これは、まさか……『転生』ってやつじゃないか!?)
前世の記憶が残ったまま、別の世界で赤ん坊として生まれ変わった。
そして、前世で最後に考えていたことを思い出す。
(もしかして……前世で憧れていた魔法を使えるのではないか?)
(最っ高じゃん! えっ、マジで? マジか!? やったー!)
儂は思わず笑った。
(魔法が使えるようになるのか……!)
(どんな魔法かな? 火を出したり、水を出したり……一体どんなことができるんじゃろうか)
ワクワクが止まらなかった。
◆ ◆ ◆
そして、三年が経った。
この三年間で、儂は多くのことを知った。
ここは『シィラー王国』。
そして儂は、この国の王族――アル=シィラーとして転生していた。
(儂、アル=シィラーは三歳になった)
さらに驚くべきことに、ここは前世から五百年後の世界だった。
そして、この世界は魔法絶対社会。
魔法の力がすべてであり、かつて儂が極めた剣術は下位の技術として扱われている。
(まあ、魔法を使いたい儂にとっては好都合じゃ)
ただ、一つだけ気になることがあった。
(まあ、転生したのはいいが……見た目がな)
銀髪に整った顔立ち。
男だと言われなければ、女の子と間違えられるほど中性的で女の子らしい顔をしていた。
(……それより、今は楽しみなことがある)
それは――『魔法力診断』だ。
魔法力診断とは、その名の通り魔法力を計るもの。
この世界では、魔法の強さは『属性』と『魔力の量』によって決まる。
属性は、炎・水・雷・地・風の基本五大属性。
さらに、希少な『光』と『闇』が存在する。
属性同士には相性がある。
炎は風に強く、風は地に強い。
地は雷に強く、雷は水に強い。
水は炎に強い。
そして、光と闇は互いに強い関係にある。
属性は基本的に一人一つ。
しかし、ごく稀に二つの属性を持つ者も現れる。
魔力の量は、星一から星五までで表される。
星が多ければ多いほど、魔力量も多い。
ほとんどの人間は星二。
星五ともなると、一万人に一人しか現れないほど希少だ。
魔法力診断は教会で行われ、必ず三歳になった者は受けなければならない。
それが王族であっても――奴隷であっても。
◆ ◆ ◆
教会の大きな扉を開け、真っ直ぐ中へと進んでいく。
教会の中には、同い年くらいの貴族の子供たちが数十人集まっていた。
「アル、シリウス」
父上が僕たちを見て言った。
「我らは王族だ。魔力量も多くなくてはならない。期待しているぞ」
父上の名前は、シス=シィラー。
僕たち家族は五人。
父、母、姉、妹、そして僕。
そして、僕の隣にいる少女は双子の妹――シリウス=シィラーだ。
今日は母上と姉上はこの場には来ていない。
「はい。お父様の期待に応えられるようにしたいです」
シリウスが真剣な表情で答えた。
一方の僕は――。
「僕は楽しみです。魔法ってどんなのかな?」
すると、神父が子供たちの名前を次々と呼び始めた。
そして――。
「シリウス=シィラー。前へ来なさい」
「はい」
シリウスが前へ進む。
「シリウス=シィラー。この水晶に触れなさい」
教会の中央に置かれた大きな水晶。
シリウスがそっと手を触れた瞬間――。
――ピカッ!
眩しいほどの光が、教会の中を包み込んだ。
しばらくして光が収まる。
すると、水晶を確認した神父が驚愕した表情を浮かべた。
「これは……すごい」
周囲が静まり返る。
「魔法属性は、基本五大属性のすべて……!」
「そして魔力の量は――星五つ」
「こ、これほどの結果は初めて見ました」
神父は興奮した様子で続けた。
「さすがはシィラー王国の第二王女であらせられる。これは王子にも期待できますな」
シリウスは嬉しそうに僕の元へ走って戻ってきた。
「兄様、兄様! すごい? 私ってすごい?」
「ああ。シリウスはすごいよ」
僕は笑って答えた。
「僕の自慢の妹だ」
「えへへ」
シリウスは嬉しそうに笑った。
そして――。
「アル=シィラー」
ついに、僕の名前が呼ばれた。
「はい!」
(ついに僕の番か……!)
「アル=シィラー。同じように水晶に触れなさい」
(どんな属性なんじゃろうな……)
(前世で憧れ続けた魔法……ついに僕も使える!)
僕は期待と興奮を胸に、水晶へと手を伸ばした。
そして――。
水晶に触れた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
今回は、剣を極めた『剣聖』が、魔法の世界へ転生する物語の始まりを書いてみました。
アルの双子の妹・シリウスは、まさかの基本五大属性すべてと星5という、とんでもない才能の持ち主でした。
そして次はいよいよ、主人公アルの魔法力診断です。
果たしてアルはどんな属性を持っているのか?
シリウスを超える才能を持っているのか、それとも――まったく予想外の結果になるのか。
次回もぜひ読んでいただけると嬉しいです!
感想やブックマーク、評価などもいただけると、これからの執筆の励みになります。
それでは、次回もよろしくお願いします!




