第10話 そして、よみがえる
「ごめんなさい…、ごめんなさい…!」
遊呼は、何度も謝罪した。
誰に?
もちろん、青子にだ。
「…」
青子は、仰向けに倒れたまま、ボーッとしている。
心の中が、真っ白だ。
何も考えられない。
何を考えればいい?
「青子よ。忘れるのじゃ。次の恋をするのじゃ」
女媧さまは、ゆっくり手を差し伸べる。
自称・恋愛の神様の女媧さま。その眼差しは優しい。
「…無理…」
絞り出すような声で、青子は言った。
次には、何もない。
女の娘の恋は、一度だけ…。
「…青子よ。新しい恋をするのは、どうじゃ?ワシには、二人の弟がいる。その一人を紹介しよう」
人差し指を立てて、女媧さまは笑う。
「神農さんと呼んでください。好きです…」
進み出た神農さんが、青子に手を差し伸べる。
神農さんは、実は、青子のことを、昔から気にしていたらしい。
好きだったらしい。
いわゆる、秘密の男の片想いだ。
そんなこと、青子は知らない。
「無理…。…うえーん」
青子は泣き出してしまった。
それを見ていた遊呼は、他人事とは思えなかった。
ケンジを好きな気持ちが同じだ。
遊呼は、秋田ケンジ。
青子は、江西ケンジ。
失恋したのだ。
女の娘は、立ち直れない。
「よみがえれ。青子。前へ進むのじゃ」
「…うえーん…」
青子は泣きやまなかった。
第10話 そして、よみがえる
三角市。
学校。
休み時間に、幼なじみのケンジが、遊呼を屋上に呼び出した。
そこには、親友の清川ミホがいた。
「遊呼。ごめんじゃん?」
ケンジが、あやまった。
ケンジは、ミホのことが好きだったらしい。
ミホに告白されて、うれしかったらしい。
だから、正式にお付き合いをするのだそうだ。
「遊呼に付き合おうって言ったじゃん?」
「…う、うん」
「忘れてほしいじゃん」
あの時は、何となく気まぐれで、遊呼と付き合おうと思ったらしい。
本命は、ミホ。
ケンジの好きな人は、ミホ。
両想いになれたので、応援してほしいらしい。
「う、うん。わかった」
精一杯に笑う遊呼。
大丈夫。
我慢できる。
ミホは、親友だ。
電話で仲直りもした。
「遊呼とは、友達でいたいじゃん」
「え…、友達でいてくれるの?」
「遊呼とは、幼稚園からの友達じゃん。これからも、友達でいたいじゃん?」
「うん…。うん!」
遊呼は、二回うなづいた。
ケンジと、ずっと友達でいられる。
うれしいよ。
「遊呼。ごめんね」
ミホが言った。
全然、大丈夫だよ。
「私たち、ずっと友達だね…!」
遊呼は、それが、うれしかった。
失恋だ。
悔しいけれど、失恋だ。
でもね。
女の娘は、負けないんだ。
三角神社。
何度も、立ち寄るのは、遊呼。
無人の神社。
ソウルチャイナローブを着ると、透明人間になる。
「私、神農さんと付き合うことにした」
「青子さんとお付き合いすることが決まりました」
青子が、神農さんと腕組みしている。
二人は、満面の笑顔だ。
「第一印象から、好きでした」
「やめて、恥ずかしい…」
かなりの仲良しだ。
遊呼は、最初こそ信じられなかったが、正直に二人を祝福した。
「遊呼も、新しい恋にアタックじゃぞ」
「え?」
女媧さまは、伏犠くんとの交際を勧めてくる。
「オレは、可愛い遊呼が大好きだぞ。この青いウサギを一緒に面倒見てほしいぞ」
伏犠くんは、青いウサギを、遊呼に差し出す。
受け取った遊呼は、青いウサギの頭をなでてあげる。
可愛い…。
伏犠くんには、抵抗があるけれど、このウサギのことは、面倒を見てもいいかも。
「伏犠くん、この青いウサギだけ、ちょーだい」
「駄目だぞ。オレもあげるぞ」
「…いらないよー!」
コオオ…ン
空狐の鳴き声がする。
「空狐…?」
「そうじゃな。さては、青子以外の新しいBOSSが決まったのじゃろう。空狐退治人の出番じゃ」
女媧さまは、遊呼に言う。
「うーん。ストレス発散できるかな…」
遊呼の手元に光るハリセンが現れる。
「行くよー。ソウルハリセン!」
女の娘は、恋をする。
上手くいくこともある。
失恋だってある。
でも、女の娘は大丈夫。
女の娘は、何度でも、よみがえる。




