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第1話 雨降って地ぬかるむ。

 平々凡々な日常。一限を逃して友達と遊び、バイトして夜中友達と遊び。そうして笑って朝まで酒を飲む。世間一般的に俺はウェイ系大学生という奴だと思うだろうが、実際はそんなこともなく、悪いこともせず、隣人に壁ドンされた経験もなく、親のすねを齧ることもなく旨くやっている。

 いわば程々。そういう人生だ。

 友達は多いほうだという自認はある。彼女もいた(尚、俺の何が悪かったのか浮気をされてしまった為の過去形だ)し、男友達に慰め会を開かれて俺の家で無限につまみを作らされたこともある。因みに浮気された理由は「ち●こが小さい」だった。俺は泣いたがそれを聞いてた友達は地面に伏した。

 2次元が特別好きというわけではなかったが、物心ついたときから英雄が好きだった。

 勇者、英雄、ヒーロー。そういったモノは人を幸せにさせる。ヒロアカしかり、葬送しかり。勇者ヒンメルが嫌いな奴もオールマイトが嫌いな奴もいないだろ。偏見だけど。そんな人間になるのが夢なまだまだ可愛い23歳。それが俺、小泉啓介こいずみけいすけだ。


 ***


 今日は朝から雨が降っていた。梅雨の時期ということもあり、珍しいわけじゃないが、ここ1週間は太陽の顔をろくに見ていない。個人的に雨よりも晴れのほうが好きなので、何処を歩くにしても歩きにくくて仕方がない。

 なんなら今日みたいに遅刻真っただ中な状況だと尚の事そうだ。黒服のバイトが長引いて明け方までかかってしまった。少し仮眠するつもりでソファに落ちたのが最後、起きると大事な一限まであと30分。身支度を済まし急いで出ると後20分だ。大学までガチればギリギリ間に合う。いける、俺の足ならきっといける。


「唸れ俺の足と体力。マジで唸れぇ!!」


 ショートカットをしながら全力で走る。雨とか関係ない。これ間に合わなかったら単位がわんちゃん足りなくなる。それだけは嫌だ。


 途端。


 大学近くの階段を降りようとした瞬間だった。一瞬だけ、ほんの刹那。足に力が入らなかった。

 それは、疲れと睡眠不足による体の不調。普段なら人並みの運動神経で回避できるもの。でも今日は雨が強く、地面はよく滑る。

 力が抜けて、立て直そうと踏ん張って、滑って、転んで、転がった。


「まじぃ……?!」


 人間死ぬときはあっという間だし、なっさけない声が出るようだ。

 階段下まで転げ落ち、寒いと熱いを繰り返す。寒い、痛い、頭がぼーっとする。

 死にたくない。


「まだ……いきた……」


 野次馬の声と雨音が聞こえる中、俺は瞼を閉じた。

 小泉啓介。これにて終了となる。ごめんなさい父さんと母さん。親不孝者になってしまったようだ。


 ***


 ふと、とても暖かいことに気が付いた。ゆっくり目を開けると、光の粒の様なものがふわふわと楽しそうに遊んでいる空間だった。


「どこだ、ここ」


 思わず漏れる声に男とも女とも取れない声が響いた。


「あの世、ですよ! 貴方は死にました。人間の御勤め、ご苦労様でした! ですが、ちょっと、その……」


 だんだん小さくなっていく言葉。もにょもにょと「その、えっと、へへへぇ」を繰り返す。姿は見えないが、声だけでわかる。手違いでしたとかいう奴だ!

 なぁにがへへへぇ……だ! 許せない。許せない、がこのよくわかっていない状況的にマジで説明はちゃんとしてほしい。


「その、我々の手違いで、死なせてしまって、申し訳ありません。普段は絶対こんなことないんですけどね? でも、その、違う人をお迎えしようとしたら、容姿が全く同じ貴方をお迎えしてしまいましてぇ……」


 人違いだったと来た。俺これ怒っていいのか? いいんだよな?


「か! 代わりに! 今回は特別な許可をもらって、転生処理を特典マシで! お送りさせていただきます!」


「特典? そもそも、そんなもんがあんの? つか転生処理ってなんだよ」


「読んで字のごとく! 転生です! 人はみな死んだら生まれ変わります。普段はその人の善行によって生まれたときの特典が変わります。生まれつき頭がいい! 音楽の才があった! そういったモノの事ですね」


 よくある才能って、転生特典だったんだ……善行かなり積んだんだ……?


「貴方は我々の手違いだったので、通常特典で付与させようと思ってた「語学堪能」の特典のほかにお好きなことを2つ、授けましょう!」


「……それって、なんでもいいの?」


「ええ勿論! なんでも大丈夫ですよ! なんなりと」


 かなりやばいこと言われてね? 俺。

 これ、事と次第によっては夢の英雄も目指せるのでは?


「じゃ、あ。__」



 人間、チートって欲しくなるよな!!



「かしこまりました。では転生処理を開始します! 新しい人生、ぜひお楽しみください!」


 目の前に少し大きめの光の粒が来たと思ったら強く光りだした。眩しさに思わず目をつむる。新しい人生だなんて、まるで漫画見たいな話で、実は夢なんじゃないかとも思うけれど。でも、たとえ夢だったとしても楽しむのが吉だ。やれるだけやっていこう。


 なんせ俺は特別特典に『永久記憶保持』と『再生』を手に入れたんだから!


 永久記憶保持、それはいわば小泉啓介としての記憶だけじゃなく、転生した後も何一つ忘れることがなくなるという! 素晴らしい能力だ。忘れたくないといくら願っても人間の記憶は勝手に整理整頓されて忘れていく。()のことも忘れてしまうと思うと、怖かった。

 再生は何と言ってもチートスキルといえば! だろ。どんな傷でも死ぬことが無く治る。強くてニューゲームに必要な要素。これ大事。死ななければなんでもやれるんだから! まあでも、絶対死なないってわけじゃなく、即死となりうる致命傷で再生が間に合わず生命活動が停止した場合死んでしまう……んだとか。要するに再生するスピードは一瞬とかじゃないってわけな。いいだろう。それでも強いことには変わりない!

 任せろ第2の人生、新しい俺! 悠々自適最強ライフ! 嗚呼、楽しみだなぁ!


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