074●体質と修行の成果
昼のラボってこんな感じか。門から入るってのもいいもんだ。受付がいる。
「すまない、アポはない。ブルーマウンテンをこよなく愛する研究員に会いたいんだが。」
「あっ、あなたですね!タカミヤさんから、いつかいらっしゃるから、と聞いています。直ぐに呼びます。」
ありゃ、読まれてたか?
「お久しぶりです、ミスター・ブルーマウンテン!」
「久しぶりだな、ドクター・ブルーマウンテン!あんた、タカミヤっていうのか?」
「あの時に、名乗っていませんでしたね。」
名刺交換って、ビジネスみたいだな。
「これは、オオガミさんとお読みするのですか、それともオオミワさん?」
「オオガミだ。ミワって読み方、よく知ってるな。」
フリガナのない名刺だからな。印刷代をケチったつもりが、代金は変わらなかったんだよな。名刺なんて、一度作っちまえば、そうそう使わんから、まだまだあるんだよな。名刺代わりのパンチってのは、結構使ったけど。
「奈良にオオミワ神社がありますからね。その知識です。」
「科学だけじゃなく、国語や地理にもご造詣が深いですな。」
「いえいえ、それほどでもございません。」
こいつ、からかい返してくるとは、なかなかやるな?!
訪問の理由を説明する。政治家のゴシップを追いかけていると、変なもんに出くわした。科学的情報がほしい。
「なるほど。・・・わたしも一緒に行っていいですか、オオガミさん?」
「アキラでいい。」
「わたしもジンと呼んでください。」
「ジン?トキヒデじゃないのか?」
「友人たちは、ジンって呼ぶことが多いですね。特に外国人はトキヒデ、って言いにくいみたいですし。」
へー、外国人の友人が多いってことか。まあ、いいか。今、そこじゃない。
ええい、知られたからには仕方がない!恨むなよ。全員で撃ちまくれ!
すまん、こんなことになっちまうとは!やっちまったな!機銃掃射かよ!ジン、俺の後ろへ!
なぜだ?銃弾をこれだけ受けても、なぜ、なんともない?いや、なんともなくはない。腹も胸も穴だらけだ。・・・銃痕から、弾が押し出されてくる?!傷口が塞がっていく?あの男、一体なんだ?頭を狙え!・・・なぜ効かない?!コンクリートブロックを投げてくる!野球のボールみたいに、ぐわっ!・・・。
「アキラさん、とんでもない体質ですね。」
「すまん、気味が悪いだろ?」
「そんなこと!全然ありません!盾になってもらって、助かりました。危なかったあ。」
全然、危なかったと思ってないだろ、あんた。
「で、あんたは、どうやってあの連中を黙らせたんだ?」
俺みたいにブロック投げもなかったぞ。距離があったし、パンチもキックも使えなかったし。
「気づかれてしまいましたか。指弾術です。こうやって・・・。」
ジンが手のひらを開く。粒のような石か。指で弾く・・・。向こうの壁に握り拳ほどの穴があいた!俺も指弾はやったことはあるが、こんな小さな石ころで?!
「とんでもない体質だな。」
「修行の成果、と言ってください。」
パトカーのサイレンの音。ずらかろうぜ!




