061●センジョウコウスイタイ 何それ?
今日はみんな来ないな。もともと部員の数が少ないし。台風が近づいているからかな。ジン君と2人だけね。あっ!雨が降ってきた!強いなあ。うわぁ、風と雷も!
チャイムの音、校内放送ね。
「運動場の生徒は、すぐに校内に避難しなさい。芸術棟にいる生徒は、そのまま待機しなさい。本館には戻らないでください。」
まあ、この集中豪雨では、道路を横切って戻る気にはならないよね。でも、すぐ止むはず。強い雨は長続きしないって、習ったように思う。
「これは良くないですね。線状降水帯だ。」
センジョウコウスイタイ?なんだ、それ?集中豪雨のこと?風も強くなってきた!う〜ん、これは困った。下校時間、守れそうにないね。
準備室の内線電話が鳴っている?
「入っていいよね?」
「僕、出てみます。」
職員室の顧問の先生からだ。
雷が鳴っているし、雨風もひどい。警報も出ているので、解除になるまでは部室から動くな、もしもの時は、準備室の机の右抽斗一番下に、カップ麺があるから、自由に食べなさい、ということなのね。
あっ、停電だ。窓を見ると、いろんなものが飛んできてる。うわぉ、トタン板、あぶないなあ!
「先輩、カーテン、閉めておきましょう。もし、何かが当たったら大変!」
ラジオとかないから、よくわからんなあ。内線電話も停電で、もう使えないし。暗くなってきた。お腹もちょっと空いてきた。
「先輩、カップ麺、たべませんか?」
「いいね。お湯沸かそう!」
準備室にコンロがあるのがいいよね。ヤカンあるかな?ふたりで探す。流しの下の戸棚から、小ぶりのが見つかる。よかった!
えっ、カップ麺が1つだけ、お箸が一善しかないのね。
「先輩、食べてください。僕はだいじょうぶですから。」
いやいや、そういうわけにはイカンだろう。
結局、代わりばんこに食べることで決着。ドキドキしたのは、わたしだけ?まっ、いいか。
「随分、雨あしが落ち着いて来ましたね。」
「もう、移動してもいいかも。」
あっ、電気が点いた。美術室のドアが開いた。先生だ!
「ふたりとも無事か?」
「ああ、先生、何ともありませんよ。カップ麺、ご馳走様でした。」
ジン君が丁寧にお辞儀をする。つられて、わたしも頭をさげる。
「もう、警報解除だから、今のうちに帰りなさい。電車やバスもなんとか動いているから。タカミヤ、一緒に行ってやってくれ。頼んだぞ。」
「わかりました。」
「お前に任せば、安心だ。」
「先生、それってわたしが頼りない、ってことですか?」
「そうじゃなくて、もう遅くなってるしね。女子がひとりで下校って、よろしくない。」
キミは心配性だなあ。駅から電話で連絡したし、大丈夫だよ。あっ、10円玉、ありがとう、明日返すからね。・・・家まで送ってくれるの?キミの降りる駅、過ぎちゃったよ。
中に入ればいいのに。頑固もんだね。いきなりは緊張するからかな?ありがと、じゃあ、気をつけてね!
「なんで誘わなかったのよ!ママも会いたかったのに!」
「いや、言ったんだけど、夜も遅いしね。」
「夏休みの盆踊り、ご招待しなさい!我が家をあげて、歓待しなくっちゃ!」
なんだか、勝手にママ、盛り上がってる?!




