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049●ノックの音が

ラベンダー伯が参内したと。ええい、通してはならん。何としてでも追い返せ。陛下は、まだ病床にあらせられる。そう、伝えよ!


何日、過ぎたんだろう。体力も限界だな。

わたしの独断で行ったと、ひたすら訴えたが。どれだけ聞き入れられるのだろう?

父上、母上はご無事だろうか。

自分が仕出かした結果だ。一族にも、申し訳がたたない。

死をもっても償えるのだろうか?

不器用な人生だった。

・・・ノックの音が3回。

看守にしては、礼儀正しいな。

と、いうことは、いよいよ処刑か。

・・・扉が開く・・・。


「無礼な!参内を許可した覚えはないぞ!」

「許可をなされるのは、陛下であらせられるはず。筆頭大臣と言えど、それを許可する、しないの権限があるのか?」


公爵様がお怒りになる。伯も引き下がりそうにない。

流血ざたになりそうだ。

伯に付き従うのは、黄金の鎧を身に纏っているとはいえ、若い女性1人のみ。

警備兵に知らせよ。多人数で囲めば、魔法使いとその剣士であろうとも、制圧できる。


「だまれ!陛下が病床のおられる間は、王族に適任者なき場合、筆頭大臣が職務を代行するのが慣例だ。」

「なぜ、急に国境を閉じられたのか。」

「貴様ごときが関わることではないわ。」

「当初は難民を受け入れていたではないか。陛下がご指示なさったのであろう。」

「あれだけの数の難民を受け入れることはできぬ。食料、その他の支援物資も限られておる。このままでは、我が国の民が飢えることになる。我が民の暮らしを優先して当然であろう!」

「つまり、あなたがた富裕貴族が備蓄を出し渋った、ということだな。」


公爵様がお顔を紅潮させておられる。


「ラベンダー、たかが客分の伯爵の分際で、我が国政に口出すとは無礼千万!ひっ捕らえよ!」


兵が群がる。何だ、これは?光が!兵士が何人か倒れ伏す。

・・・あれは?空中に浮かぶ、3つの黒い球。手のひらにおさまりそうな、小さな球体。

中央に赤い光が宿る、まるで目玉のようだ。

・・・またもや、これは!光の筋が!

3つの’目玉’から、発せられる!

兵が次々と倒れていく!


剣士が剣を抜いた!伯の前に立つ!

こ、これは!圧倒的な威圧感!大気が震えている!死の恐怖!これは何だ!


「公爵、眼の前のお方を、どなたと心得ているのだ?!エンジェラム国王、ウィリアム陛下に全権を託された、ロイ・ラベンダー・エンジェラム大使だぞ!このお方の言葉は、すなわち、エンジェラム国王陛下のお言葉と知れ!」


美しく、力強い声、その剣の構えに一分の隙もない。し、しかし、その言葉どおりならば、それぞれの王に権限を委ねられた者同士の対決となるのか?!


「・・・例え、そなたがエンジェラム王の名代であったとしても、内政に口出しすることはならぬはず・・・。」

「先年、ここを訪れたウィリアム陛下と交わした協定、忘れたか?写しは各門閥貴族に送付している。第12条をよく思い出すがよい。」


第12条?おぼえておらぬ。細かなことは家令に任せていた。我らに益が多いと聞いたが。


「第12条、すなわち、国境を越えて難民・流民がある際は、両国が協力して事に対処す。附則その3、受け入れ先として、それらの民のエンジェラム領内、あるいは統治所領への移住を可とする。その4、ボレリア国内から目的地までの移送は、エンジェラム国王により保障される。以上を、知らなかったとは言わせぬぞ!」


謁見の間の空気が凍りつく。これでは、我が国が協定を無視したことになる。

公爵の顔が、今度は青ざめている。


「つまり、この国の王が、意図して協定を破られたということか。それならば、エンジェラムは、記載された全ての協定項目、すなわち、食糧技術、医療技術とそれらの物資の提供、土木技術の提携、全てに於いて、撤退する。それとも、これは王の感知せぬことで、臣どもが勝手に行ったことか。それならば、今後、協定違反が起きぬための改善策について、納得のいく説明をして頂こう!」


ノックの音が3回、扉が開いた。・・・抱き起こされる。やさしい手だな。

「ウィル、すまない、遅くなった。」


会えるとは・・・思わなかったよ・・・。


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