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001●短い杖 魔法という言葉を我々は科学と呼ぶ

並走する世界線、時間軸も異なりながら交錯する、それぞれの人々。ささやかな日常と重なる異世界、飛ばされた少女は、いったいどこへ?断片的な物語は、やがて収束するのか?戸惑いと混乱の中から、真実を見つけるのはあなたかもしれない。

「どうみたって、ゴライブ伯爵が有利だ。ラベンダー伯が魔法を使えるって、信じられないもんな。」

わたしはそう呟きながら、目を移す。陛下が玉座で見守っておられる。居並ぶ寵臣たちは顔には出さないものの、興味深く注視している。私もそのひとりだが。

ゴライブ伯爵は、ゆうゆうと自慢の剣を抜き身構えている。その表情には余裕があり、笑みさえみられる。

一方、ラベンダー伯は少し困ったようなそぶりだ。しかし、王命で「魔法は存在するのか」「存在するとすれば、国防に役立つのか」との議論に決着をつけるため、受けざるを得ないのであろう。

ラベンダー伯の母国エンジェラム王国は「魔法」が一般的に使われている、という噂を耳にした貴族連中の進言だ。ご下命があり、伯が説明を穏やかにしている中での、いわば、伯爵の揚げ足取りの結果だ。お気の毒に。


伯が言った。「剣技と違い、皆さまがおっしゃる‘魔法’は、途中で止めることができません。本当によろしいのですか、伯爵?」


この青二才め。まんまと誘いにのりおったわ。魔法などあるものか。エンジェラム王国が海の彼方、遠方にあることをよいことに、陛下を誑かして地位を得ようとしているのは見え見えよ。

もっともらしいことを言い、実演もしよったが、所詮、こどもだましのイカサマよ。傷を治したように見える、どうせ互いに打ち合わせているだけのことだ。

やっとのことで戦において有効な魔法について述べおった。流石に自信がないのだろう、実演を渋りおった。ようやく引きずり出したぞ。よけいな知恵を陛下に伝えて、我らをないがしろになど、絶対にさせんぞ。場合によっては深手をおわしてやろう。何が「途中でやめることができない」だ。目にものみせてやる。


ウィルが心配そうな顔をしている。上陸したラベンダー伯を最初に迎えたのは、あなただったからな。

ゴライブは武勇の家柄だ。年齢的にも戦士として脂が乗り切っている。

しかし、ラベンダー伯は上背こそあるが、どちらかというとほっそりとした体形だ。戦闘経験があるほどの年齢でもない。

戦いに耐えられるのか?ウィルは王の御前で流血騒ぎになるのを、恐れているのか、それとも短いながら親交があったラベンダー伯のことを心配しているのか。どちらにしても、浮かない顔だな。


「それでは、‘魔法’を使うための杖を出しましょう」とラベンダーは言った。懐から取り出したのは、鈍い光を放つ金属製の奇妙な物体だった。握りの部分が曲がっている。そこだけは、木材が使われているようだ。全体的に武骨で、我々の剣や杖といった武器とは全く異なる形状をしている。あんなもので、ゴライブに対抗するのか?


驚いた!なんだ、あれは?この臭いはなんだ?あのパンパン!という音は?なぜゴライブが流血して膝をついている?分からん、分からん、どういうことだ?!


これが魔法か?!肩を貫くような衝撃!足に走る激痛!何だ、何をしおった!ええい、まだ、動けるぞ、わしは!この程度、戦場の比ではない!


ロイ・ラベンダー・エンジェラム伯爵は、静かにたたずんでいる。四肢から流血し、気を失ったた男は家臣に運ばれていった。彼は王に落ち着いた声で言った。

「陛下、これが‘魔法’でございます。私たちは‘科学‘と呼んでいますが。」


いかがでしたか?よろしければ、次回もご覧くださいね。

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