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16.神崎2

※「天使」に関する非常にテキトーな設定が描かれています。宗教的に苦手な方、嫌悪感を抱かれる方は、ブラウザバックをお薦めいたします。そうでない方は、どうぞお進みください。

 人の世にあるうちの「彼女」の魂に会いに行くのは、いつからの習いだっただろうか。

 もしかしたら最初からかもしれない。「彼女」の魂に会うことは、僕にとっては儀式のようなものだったから。

 美しくも儚い魂。これから美しく染まるのか、それとも世の汚濁にまみれていくのか、何もかも未分のエネルギー。

 この魂に触れられることを、天に感謝する。

 勘違いしてはいけないことだと分かっていながらも、僕は思わずにはいられない。「彼女」の魂のために、僕の存在はあるのだと。




 僕ら「天使」は、言わばエネルギーを無尽蔵に吸い込もうとする「穴」とも言える。そうでなければ翼と命を、維持することができない。

 いつもなら人の世から少しずつ貰い受けるはずのその力を、僕は「彼女」から貰う。そういう「約束」であったし、過去もずっとそうしてきた。

 そして僕に力を与えることで、「彼女」の力が弱まっていく様を見るのは……不思議なほど快い。このとき僕は、自分の精神が狂ってしまったんじゃないかと疑う。けれど天に罰せられもしないし、堕天する気配もない。

 罪深いと思う。けれど「彼女」に向かって手を伸ばすことも、止められない。それほどに「彼女」の魂は幼く、甘美だ。

 ああ、早く「其の時」が来ればいいのに。

 「彼女」が震えながら僕に手を伸ばす、「其の時」が。

 初めて「彼女」の魂に触れたとき、僕は自分がおかしくなってしまったんじゃないかと危惧した。たかが魂に触れるだけで、こんなにも悦びに溢れるなんておかしい。

 もちろん、他の魂に触れたとき、同じような感触や感情の揺れは起こらなかった。僕は安心した。一瞬、人になってしまったのかと思ったからだ。

 それでも、人として「彼女」に触れられたら、どれだけ幸せなのだろう。きっと彼女を、何も考えずに求めることが許されるはずだ。

 しかし天使は人に成れないし、人は天使に成れない。

 だからこそ僕は、「彼女」に触れられるこの瞬間を、何よりも愛するのかもしれない。

 何も知らない無垢で純粋な白い光を、この手のひらに納める「其の時」を。




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