11.魔法学科の授業
魔法学は主に魔法の理論を学び、攻撃魔法をより効率よく使うための学問になります。
領地を持つ貴族であれば領主以外で二属性持ちが居ればそのものが領地防衛の総大将になったりしますし、そういった立場になれない人間は宮廷魔導部に所属するという道もあります。
こちらは国の防衛に役立つ人材を集めていますので、領地であぶれるなら王宮勤めのほうが給金がいいので子爵以下で2属性を持つ人は目指すことが多いです。
とはいえ男爵で2属性を持つのはかなり珍しい事ですが。
「そもそも、1属性しか持たない場合攻撃魔法たり得ないのには理由があります。例えば火属性だけを持つ人間が魔法によって火を起こしたとしましょう。魔力量によっては業火を出すことも可能ですが、ここで問題となるのはそれをどう魔物に向けて放つかとなります」
魔法学の授業は宮廷魔導士が授業をしてくれます。
ミリガン先生は子爵出の宮廷魔導士で、3属性水・風・土を保有している方です。
次期副部長候補といわれています。
家庭教師から教わったけれど、一属性しかないと何故攻撃魔法にならないのかという説明から授業は始まった。
まだ一学年ですし基礎の復習と思いましょう。
火属性が最もわかりやすいですが、自分で火を起こした場合、燃えるのは自分自身であり敵に向かってその火を放つことができません。
私のように視界に入るものの任意の位置で火を起こせれば攻撃魔法として使えるかもしれませんが、普通はそういったことができないのです。
なので、風魔法によって火を運ぶことで攻撃魔法として完成します。
風魔法も、魔力量が多ければその風圧で魔物の行動を阻害できるでしょうが、倒すには至りません。
火や水、土といった属性と組み合わせて初めて「遠距離攻撃としての殺傷力」が生まれます。
強い魔物はその一撃があまりにも強力であったり、物理的な攻撃を受け付けなかったりするため ”強い” と認定されています。
これらの魔物も大量の犠牲を許容すれば魔法を使えない者たちでも倒せるかもしれませんが、それは普通許容できません。
だから魔法による攻撃が有効であり、そうすると2属性以上持っている必要があるため、貴族の間では属性数至上主義みたいな考えがあります。
南部閥より魔物が多い北部閥のほうがその傾向が強いですかね。
私の周りは私の攻撃魔法が強力であることを知っていますが、北部閥までは届いていないでしょうし、南部閥の一部あまり仲が良くない地域の相手だと私のことを侮ると思います。
実技の授業になればそんな侮りもなくなると思いますけどね。
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入学から1週間が過ぎ、いよいよ魔法実技の授業となりました。
「皆すでに攻撃魔法が使えるでしょう。今日は的に向かって各々が思う最大魔法を放ってください」
先生の言葉に北部閥の男子たちはより気合を入れています。
舐められるわけにはいかないという雰囲気を感じます。
特にジョーンズ子爵令息は余裕の表情がさらにふてぶてしくなっていますね。
たぶん北部閥でも上位の実力なのでしょう。
「テレシア様!頑張りましょう!」
私に声をかけてきたのはドロシーさんです。
同じ南部閥ですからこの1週間で仲良くなりました。
彼女はとても明るく元気のある子です。少々貴族令嬢として至らぬところもありますが、男爵家の出で侍女やメイドにならないのであればこんなもんかもしれません。
別に礼儀がなっていないわけではないですから気にしないことにしています。
「えぇ、頑張りましょう。とはいえ私の場合、的への一撃がかなり問題なのですけれど」
「一属性しか使えないような奴はコントロールもできないのか、魔法学科じゃなくて他の学科に行ったほうがいいんじゃないか?」
私の発言にこれ見よがしにジョーンズ子爵令息が嫌味を言ってきます。
私は深い笑みをたたえて殺気を飛ばしておきます。
それに気が付いたのかドロシーさんがちょっとビクッとしましたね。
ふとフェアブラザー伯爵令嬢をみると、彼女は冷ややかな目でジョーンズ令息を見ています。
もしかすると同じ女性という事で私に対する情報を得ているのかもしれません。
処すならこいつだけにしろという空気を感じます。
「では、名を呼びますから順番に魔法を放ってください」
生徒たちが的に向かって魔法を使っていきます。
火と風ならファイヤーバーストと呼ばれる業火を直接放つ魔法、水と風ならウォーターランスという魔法、土と風ならアースニードル、水と土ならマッドーウォーターという濁流のような魔法を的に向けて放っていきます。
当たらない子もいますが、おおよそ皆が的に当てていますね。
でもやはり的を破壊するような人はいないようです。
ジョーンズ令息は火と風と土の3属性を混ぜたマグマバーストという上位魔法をつかっています。
さすが3属性、灼熱にした溶岩のような土を風に乗せて的にぶつけています。
熱がここまで感じますから、確かにすごいです。
これは鼻が高くなるのもわかります。
「では、最後リリア・テレシア。テレシア嬢、的は破壊しても問題ありませんよ」
「わかりました」
先生の一言に周囲がざわつきます。
この的 ”普通の属性魔法” じゃ壊せないですからね。
そういう術式があるそうで、人の防具にも使われるものです。
お兄様も破壊したのは見たことがありませんね。
「では行きます。一応詠唱しますね。サブスペース!」
私は的を見つめて魔法を使います。
一瞬黒っぽい丸が的全体を包み込むとギュポという音を立てて的は支えごと消え、そちらへ風の流れを感じました。
私の亜空間魔法は範囲を大きくすると風を起こせるんですよね。
どういう原理なんでしょう?
「先生、この場に的を出したほうがいいですか?」
「えぇお願いします」
私は指示された場所に魔法を展開します。
さすがに立たせることはできなかったですが先生の目の前に的を出現させました。
根元がきっちり切断できていますね。
他の生徒たちが目を見開き、中にはひきつっている人もいます。
「テレシア嬢、おつかれさまです。さて総評をしましょう。皆さん良く魔法を訓練されていると思いました。まだ粗い部分もありましたからそこは魔法理論を学ぶことでより制御ができるようなり実践で使えるようになるでしょう。それと、テレシア嬢はこの通り ”通常魔法防御を貫通できる” 魔法を攻撃に転用しています。特殊属性の為このようなことができます。実技の授業には魔法による対戦もありますが、彼女は参加しません。仮に参加するにしても攻撃魔法を使わせませんから安心してください」
一部からほっとした表情が読み取れます。
ジョーンズ令息は若干引いたままですね。
ともかく私の攻撃魔法がどのようなものであるか正確に把握できたでしょう。
これで把握できていないのであれば、それこそ魔法学科にいる意味がありません。
私の攻撃魔法が ”どれほど恐ろしいか” が理解できたでしょうから。
この世界の魔法の理についての説明がようやくできました。




