23 落ち込むティアを慰める
皇都滞在は既に10日に及んでいた。リドナーは勉学に励む毎日である。時折、ジャクソンが剣の稽古をつけてくれるものの、それも気晴らし程度に過ぎない。
ティアと接する時間も削られている中で、帰ってくると部屋の隅で分かりやすく座り込んでいたのであった。甘えるように肩に乗るドラコとサンタを無言でなでなでしていたので、リドナーからすれば可愛いだけなのだが。
(しばらく、眺めていたいぐらいに可愛いけど。落ち込んでるのが可愛いなんて、俺、悪趣味かな)
リドナーは自省するのであった。
苦笑いを浮かべて、恋人に近付く。
「ピッ」
ドラコが顔を向ける。
「ジ」
サンタも自分に気付くと静かにティアから下りる。言葉で慰めるのは任せた、という顔だ。そして、察しの悪いドラコを前脚で抱えるようにしてティアから引き離す。
「大丈夫?」
リドナーは小柄なティアの横にしゃがみ込む。
「大丈夫じゃない。お父様が来たの。お母様も。今更、何を企んでるのか、聞きたくもない」
ティアが俯いたまま言う。
姉ばかりにかまけて、ティアの心に傷を残した両親だ。
(かまけるだけなら別に良くって。ティアちゃんに祈りを無理強いしたことが大問題)
リドナーも聞いている限りではそう思っていた。
「俺がいない間に来ちゃったんだ?」
リドナーはそっとティアの背中に手を乗せる。
「うん。別にリドの留守を狙ったわけじゃないと思うけど。来れば会えるって、思ってたんだと思う。私、嫌なのに」
ティアがポツポツと状況を説明する。
顔を向けてくれた。泣いていたわけではないようだ。澄んだ、汚れのない碧眼はいつもどおりに美しい。
たまたま自分が別室で講義を受けている間に、折り合いの悪い両親が現れてしまった。突き詰めればそういことだ。
(本当は、俺の立場なら、ご挨拶したり、ティアちゃんから紹介してもらったり。そういうことをしたい関係なんだけど)
何をどう言い繕おうと、ティアの肉親であり、未来の義父母である。
リドナーとしては関係修復を取り持ちたい気持ちもあるのだが、ティアの拒絶が強烈だ。もともとの意志の強さも相まって、両親のことはさすがのリドナーもほとんど話題にすら出せなかった。
(可愛いし、大好きなんだけど、説得するとなれば頑固なぐらいだから、大変なんだよね)
リドナーはティアの瞳を見返す。
「聞いてる?」
しかし、見つめる時間が長過ぎて指摘を受けてしまう。ティアが小首を傾げる。
「ちょっと、考えてた。しんどかったろうなって。お姉さんが亡くなってからのこと、俺も聞いてるからね」
リドナーは微笑んで告げる。




