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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
17章 ホラーな世界を楽しもう

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273話 おっさん少女になにかようかい

 国家建設の為の草案は作られた。といってもまだまだ決めるのには時間がかかるだろう。有識者なんていないし、政治家もいない。いないいない尽くしで大樹のエリートとやり合おうとしているので、喧々諤々で話し合いは続いている。


 まぁ、それは若木シティの皆さんにお任せしますと青森県を制圧したレキはそのまま南下をしていた。


 ドライ幼女隊が増えたことにより、ようやく空中戦艦スズメダッシュも各種の細かいシステム周りも使えるようになった。偵察におけるドローン、チュンチュンという30センチ程度の大きさのスズメ型ドローンを各地に偵察に向かわせた結果


「岩手ねぇ、柳田国男が著書、遠野物語が有名な場所だね。ここが他よりも強い気配があると」


 モニターへと映し出されている内容を確認しながら、司令席に座っていたレキは、ほへぇ〜と報告内容を眺めていた。


「意外ですね、ご主人様がそんなことを知っているなんて。どうしたんですか? 遠野物語は漫画にはなってませんよ?」


 自分のご主人様へナチュラルにアホ扱いの発言をするサクヤである。ナインが置いてくれた羊羹をスイっと切って口に入れながらの発言だった。


 だが、レキはフッとかっこよく笑みを浮かべようとして、ふふっと可愛らしい笑みになりながらもドヤ顔で答える。


「一時期、妖怪とかの話も集めていたんだよ。結構面白かったよ。普通に昔々みたいな感じで面白かったよ」


 子供の時は図書館でよくそういう物語を借りていたものだと昔を思い出すレキ。レキには過去がない? 仕方ないので遥にしておこう。


「なので雑学は色々増えたんだ。都市伝説も色々と読んだことがあるよ。ビデオを見たら7日間以内に他の人に同じ内容を見せないと死んじゃう話とか」


 それは都市伝説ではなく、映画だよ、しかもダビングしないと死んじゃうよとは誰もツッコミを入れなかった。


「なるほど、だから珍しく知識があったんですね。納得です」


 ふむふむと頷いて納得するサクヤ。


「なので知ってま〜す」


 フンスと得意げな表情を浮かべるので、雑学ぐらいでドヤ顔になるご主人様も可愛らしいですと、ニマニマと微笑むサクヤ。もはや中身は幼児退行をしているかもしれない。この場合は幼女退行かも。


「司令、チュンチュン隊が探索中の光景を映し出します」


 ハカリがウサギリボンをぴょんぴょんと機嫌よく動かして、軽く手を振ると大画面で景色が宙に映し出される。


「空間拡張の兆候なし。空間変性を僅かながらに認められます。上陸チームを送り込んでよろしいでしょうか?」


 オペレーターのツヴァイがテキパキとモニターを解析しながら指示を仰いでくる。


 これも今までと違うところだ。ツヴァイたちも専門スキルに特化したスキルを持っている。しかもステータスも高くなり補助の幼女たちもいるので、様々な事柄を処理できるようになったのだ。


 頬杖をついて、ぷにぷにホッペをむにゅうとさせて、コクンと頷くおっさん少女。司令ごっこをしたいお年頃だから仕方ないのだ。


「うむ。揚陸艇を出して、周辺を偵察せよ、アイン」


 ビシィッとちっこい指をモニターに突きつけながら指示を出す。


「了解だ、ボス! アイン隊出るよっ!」


 アインが元気そうに伝えてくると、ハッチから揚陸艇とその護衛ヘリが出撃を始める。


「第三ハッチオープン。 アイン隊出撃してください」

「護衛ヘリ隊出撃準備よろし」

「各戦闘班は最終チェック完了」


 次々と報告される内容に、これぞ艦長だよねと、ウキウキして喜色満面で机をちっこいおててでペチペチと叩いて足をぶんぶん振る美少女艦長。


「全機発進せよ! 周辺の警戒を緩めないでください」


 むふふと艦長ごっこを楽しみながら、上陸地点へと近づく揚陸艇及びクイーンビーと無人ヘリミツバチをモニター越しに見ながら呟く。


「今まで空を飛ぶ敵が雑魚ではいなかったから無意味かもしれないけど、ヘリの護衛はかっこいいよね。見ていて絵になるよね」


 るんるんと可愛らしく鼻歌をリズム良く歌いながら見ているが、フラグを立てたことには気付いていなかった。特にヘリなんて禁句なのに。


 フラグは見事回収されて、モニターに映るミツバチがヘロヘロと墜落していく。次々と落ちるミツバチを見ながら、クイーンビーは大きく旋回をしてフォトンバルカンを撃ち始める。


 揚陸艇も敵に狙われているのだろう。回避運動に入りながら上陸を目指す。


「なぬ! いったい何事だ! いや、感知に引っかかったから、わかってはいるんだけどね」


 様式美なんだよと小声で伝えてくる小心者の心を捨てない厨二病なおっさん少女。


「司令、無人ヘリに敵ミュータントが接近。超能力を使用していると思われます」


 オペレーターが嬉しそうに伝えてくる。なぜ嬉しそうなんだろう。そこは大変だという表情をしないといけないんじゃと思うが、皆がおっさん少女と一緒に戦えるのを喜んでいるので空気を読む。


「モニターに映します。敵、小型ミュータント多数。尚も敵超能力による攻撃継続中」


 むぅと唸りながら、モニターにて飛行する敵ミュータントを眺める。


 そしてキリリと真面目な表情へと変えて、声を発する。


「ねぇ、なんでグレムリンなの? ここは妖怪じゃないの? ウォッチな妖怪とは言わないけど、なんでグレムリン? 悪魔だよ、あ、熊っじゃなくて悪魔だよね?」


 真面目な表情で無駄口をたたく遥である。だって、ここは妖怪でしょう。さっきまで妖怪の話をしていたじゃないかと不満なのだ。そしてさりげなく飛行する敵がでてきた理由は自分のせいじゃないのでツッコミは入れない。


「ご主人様。あの敵の名前はグレムリンと名付けました! その能力は機械に対する干渉超能力ですね。これはフォトンフィールドで防げない類です。パイロットと機体の抵抗力チェックが必要です」


 サクヤがフンスと息を吐いて得意げな表情で伝えてくる。たしかに1メートルぐらいの体躯、蝙蝠の羽に山羊の角、鱗状の青い肌にトカゲのしっぽ。人に似て、されど人には似ていない顔つき。口は裂けており、赤い目は不気味である。


「たいした力を感じないけど、状態異常系か………。今までは鳥系の敵って出てこなかったけどなんで?」


 グレムリンを翼たちが軽やかに旋回しながら撃破していく。どうやら状態異常の超能力以外はたいしたことはないと遥は敵の様子をみて判断した。


「鳥というのは自由です。自由な鳥さんたちはエゴが生まれる理由がありませんし、危険な地域となったら、即座に他の地域に逃げ出すぐらいですからね。鳥のミュータントが少ないのは当たり前ですよ」


「あぁ、なるほどねぇ、それなら鶏とかしかいなさそうだね。って、なんで悪魔が出てくるのかの解答を貰っていないよ?」


 サクヤの言葉にうんうんと頷きながら、最初の問いの返答を貰っていないと気づき再度尋ねる。


 う~んと白魚のような手を顎につけながら迷うように答えをくれるサクヤ。考え込んでいる姿は美女なので非常に絵面が良い。


「恐らくはですが、ここには妖怪や悪魔に詳しい人がいたのでしょう。岩手に遊びに来た超常の生物に詳しい人………。ここはそんな人間に困らない感じもしますし」


「ふむ………。推測の域をでないけど、それならここの敵は妖怪や悪魔を使うってこと? え? なんか嫌な予感がするよ? 搦め手でくる敵が多そうな感じがするよ?」


 遥は嫌な予感を覚えて、モニターへと視線を戻す。悪魔や妖怪? 嫌な予感しかしないし、おっさんの嫌な予感はだいたい当たるのだ。嫌な予感がする場合は逃げ出したいが、もう戦闘状態に入っているので止めれらない。


 むむぅとモニターを見て、ツヴァイたち大丈夫かなと不安になると、嫌な予感どおりに揚陸艇が空中で何かにぶつかったようによろめく。


 艇のフィールドが発生し、周りの空間を揺らめかせて、なぜ空中でよろめいたかを明らかにする。


「石の壁………。石? ぬりかべかな? 寝そべっている獣に見えるけどぬりかべだよね?」


「ご主人様、あれはぬりかべと名付けました! ぬりかべは本来は獣の形らしいですよ? 壁に手足がついているのは妖怪漫画の作者が考えたわかりやすい姿らしいですね」


「へ~。たしかに壁に手足がついていれば、こいつはぬりかべだとすぐにわかるけど、灰色のでかい獣だとなんの妖怪かいまいちわかりにくいもんね」


 また雑学が増えたねと満足する遥。きっとよく雑学をひけらかして得意な表情になる人みたいに、あとで誰かにドヤ顔で話そうとするセコイおっさんである。


「ぬりかべは足元をなにかで払えば、消えていなくなるそうです」


 追加情報を遠野物語をふむふむと見ながら教えてくれるサクヤ。しまった。私も遠野物語を持ってくれば良かったと遠野物語に関する敵が出てくるとわかっていながらもってこなかった迂闊で存在ができているおっさん少女である。


 そして、サクヤはあんちょこを堂々と見ながら説明してくるのはどうなんだろうか? 


 あとで見せてもらおうと決意しながら、遥はサクヤの忠告を聞いて指示を出す。


「艦砲射撃準備開始。目標前方のぬりかべ」


「ラジャー。艦砲射撃準備開始。測量開始」


「レーダーコントロール、射撃管制準備良し」


 四季がテキパキと指示をだし、ハカリが準備完了を伝えてくる。そして他のツヴァイたちがオペレーターが言うことでしょうと四季たちを睨んでいるので、あとでバトルが起こりそうである。


「ええっ! 超技足払いの出番じゃないんですか?」

 

 サクヤが僅かに目を大きく広げて驚くので、遥は不思議そうにコテンと首を傾げて


「なに言ってるの? ここで倒した方が、後々楽じゃん。きっとあいつは私たちが岩手を探索する最中に頻繫にでてくるタイプだよ? ゲームではうざいなぁの感想で終わるけど、現実なら倒しておいた方が良いでしょ?」


 すっかり脳筋になっている遥を見て、サクヤは残念そうに遠野物語の冊子を振り回す。


「ここは私のドヤ顔の説明を受けるところですよ。せっかく遠野物語を読み込んでいるのに酷いです、ご主人様。この鬼畜! あとでお互いの身体をタオル代わりにしてお風呂で洗いっこの刑にしますからね!」


 プンスコと怒っているふりをして、卑猥な欲望をお仕置きといって叶えようとする変態銀髪メイドであった。


「なにが読みこんでいるだよ。今普通に読みながら説明してたじゃん!」


「あれは間違えていないか確認をしていただけです~。確実に説明するには本が必要ですよ。参考書が絶対に必要です。間違った知識を説明したくありませんし」


 ぶーぶーと子供の喧嘩の如く、二人でコントを開始しようとするとき


「マスター、姉さん、戦闘中ですよ?」


 ニコリと笑いながら、空気に圧力をかけてくるナインがいた。ラジャーとビシッと敬礼をして椅子に座り戦闘を慌てて再開する遥たち。


 眠そうな目をモニターに向けて、気を取り直して指示を出す。


「艦砲射撃のコントロールを貰います。敵目標に対してロック」


 あれだけ大きければ外れないでしょうと思いながら相手を見つめる。


 だが、攻撃を開始する前にオペレータからの報告が耳に入る。


「司令。ぬりかべ後方から敵艦隊を感知。大型艦多数、すでに陣形を整えています」


「敵艦隊、空間転移にて現出中。大型艦3隻、中型12隻、小型艦80隻を確認」


 モニターには次々とぼろぼろの船が現れる。船火が周りに浮いており、艦は青白い光に包まれている。


「ゴーストシップです、ご主人様。ここの敵は色々持っているみたいですね。ゴーストシップと全てまとめて名付けました!」


 またまた名づけができちゃったと嬉しいサクヤのご機嫌な声音が敵の様子を伝えてくる。


「戦艦………。第二次世界大戦の戦艦から、ガレオン船まで船種はバラバラだけど面倒そうだね」


 鉄の塊である大型戦艦。船は錆びており、錆びた船体は血に塗られているようにも見える。もしかして大和とかだろうか? そしてガレオン船などもボロボロであるが骨でできた砲門を設置していた。


「上陸部隊は即、帰還せよ。上陸作戦は中止、繰り返す、上陸作戦は中止、これより艦隊戦に移行します」


 テキパキと指示を出す遥。さすがに真面目にやらないとまずいねと冷や汗をかく。


「ご主人様、ミッションが発生しました。眠れぬ朧の船を鎮魂せよ! exp60000、報酬? ですね」


 サクヤがミッション発生を告げてくるので、こりゃまずいねと思う。戦闘のみのミッションなのだから。


「司令、敵艦隊後方に空母の転移を確認。プロペラ機が次々と発艦しています! 数40!」


「むぅ。妖怪らしく戦闘を開始してくれればいいものを………。なんで艦隊戦なんでしょうか? ちょっと敵ボスに聞いてみたいですね」


 オペレーターの言う通りにさらに後方に空母が現れてゼロ戦らしき機体が続々と発艦していく。


「戦闘機隊発進開始、ウモウの操作をサクヤよろしく! ナイン、敵の動きを読んで翼たちを指揮するんだ。四季、私のフォローをよろしく」


 すぐに指示を出して、目を閉じる。


「では、新たなる運転スキルの力を見せてあげましょう」


 再び開いた眼は深い光を宿したレキになっていた。


 コントロールパネルに手をそえて、運転スキルを発動させる。


 そして僅かに瞠目してレキは驚く。


「なるほど………。機械操作はあくまでも機械操作だったんですね。運転スキルの凄さがわかります」


 運転スキルを使用した瞬間に、空中戦艦スズメダッシュが自分の手足になったような感触がレキの身体に感じられたのだ。


 それはエンジンからブリッジ、対空砲にいたるまですべてにレキの魂が宿った感じがする。


 なるほど機械操作はここまでの一体感はなかった。たんに兵器を操作するのが上手だっただけだとわかる。


 もにゅもにゅと口元が動き、サッとサクヤたちを見渡すと忙し気に様々な仕事をしている。


 なので気づかれることはないよねと、こそっと微笑み、小声で呟く。


「スズメダッシュよ、今、お前に魂を入れてやる」


 昔の漫画で見た言ってみたいセリフの一つを誰にも聞かれないようにこっそりと言う遥であった。実にしょうもない。


 そしてカメラがブリッジの片隅でおっさん少女を撮影していることと、むふふと小声でもしっかりと聞いていたサクヤが口元を僅かに綻ばすのに遥は気づかなかった。これもまた実にしょうもないメイドであった。無駄に力を使う事には追随を許さないだろう。


 すぐにレキへと主導権を移して、敵を確認する。


「敵空母、さらに転移! 計5隻の空母を確認! さらに敵戦闘機隊が発艦を始めています!」


 さすがに大量の艦隊に焦りを見せるオペレーターが報告をしてくるが、眠そうな目でレキは敵を見つめるのみ。


「では、初めての艦隊戦です。こちらは1隻しかいませんが、負けることは許されません」


 動揺もせず、静かなる声音で淡々とレキは呟いて、戦闘を開始するのであった。

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