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コンクリートジャングルオブハザード  作者: バッド
17章 ホラーな世界を楽しもう

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272話 おっさん少女は国家建設を考える

 強襲揚陸艦大山鳴動。巨大なる揚陸艦が若木シティへと入ってくるのを豪族たちが迎え入れている。ぞろぞろと大勢の人々が迎え入れて、揚陸艦から出てくるのは大樹幹部とそのお供たちである。


 キリリと理知的な引き締まった表情の人々が降りてくる。ドライたちが使えるようになり、ようやく人数を揃えることができたので、国家設立とやらに向かわせたのであった。


 まだこの場にはナナシはいない。草案ができたら目を通して許可を出すのがナナシの役目である。人それをハンコを押すだけのおっさんと呼ぶ。面倒くさいので、すべてをツヴァイとドライたちに任せたのだ。働きたくないでござるなおっさんであった。ハンコ押しマシーンでも代わりは務まるだろう。


 若木シティの面々が期待に満ちた表情で幹部たちを案内する。ゴップは左遷組だから、正直幹部という感じではなかった。しかしゴップたちが安全を確認したので、正式な幹部たちが訪れたのだから、否が応でも期待が膨らむというものだ。


 安全確認が終わったから訪問しましたという流れである。上手く人数が増えたタイミングだったので、安心した遥。なにしろ最近、人々から国が必要だ〜っと言われて豪族がなんとかしてくれと泣きついてきていたので。


 そろそろ政治家が必要な感じ。なので、様々なドライが変身しているので老若男女が入り混じっている。元は幼女に近いドライたちであるのは秘密。秘密ヒミツ、ヒミツなドライちゃんなのだ。


 そうして応接室に入る豪族たちだが、先に入っていた可愛らしい少女がいた。

 

 ちっこい身体でベニヤ板の玉座に座り、玩具の王冠をかぶって足をパタパタと振って、入ってきた豪族たちへと手をブンブン振る。


「待っていました。待ちくたびれましたよ。王様が待っているのに遅いです」


 プンプンと怒る少女の肩には、タスキがかけてあり、ひらがなで、おーさまと書いてあった。


 ピシリと額に青筋をたてて豪族がノシノシと美少女に近づいてきて、ベアークローをかけてくる。


 グギギと豪族の腕をパンパンと叩いてギブアップをする少女。


「ギブアップ、ギブアップです。王様は豪族さんで良いです。私は摂政になりますので」


「なんでここで遊んでやがる? 今日は呼んでねぇぞ?」


 豪族のお仕置きクローが続き、ジタバタと暴れる少女の名は朝倉レキ。アホ可愛らしい美少女である。とりあえずレキにしておこう。


「呼ばれたのです。貴女は王様になるべきだと、今日の天気占いで」


「どんな天気占いを見ているんだ? あぁん!」


「私の優しいお世話係の銀髪メイドさんが教えてくれたんです。王様セットと一緒に若木シティの応接室に行けば楽しいですよと言われたんです。楽しそうな集まりなので私も混ぜてください」


 さらっとサクヤのせいにするおっさん少女がここにいた。相変わらずのメイドの扱いであった。


 プププとドライの一人が笑う。エリートウーマンに偽装している幼女の一人である。ドライは無邪気でツヴァイを応援するスタイルであり、おっさんは家族の父親枠と思っている……と思いたい。


 はぁ〜と深くため息をついて、豪族は疲れたような表情で仕事場に紛れ込んだ子供へと諭す感じで話し始める。

 

 ガシッと肩を掴み、真剣な表情で告げる。


「今日の集まりは難し〜いお話をするんだ。残念ながらお姫様の出番はない!」


 しっかりと言い切るので追い出す気が満々な豪族。


 しかし、既におっさん少女は王冠を脱いで、伊達メガネをつけて、んしょんしょとスーツを着ようとしていた。


 人の話を聞かない少女である。会議に加わる気満々だ。


「安心してください。眠たくなったらお昼寝できるように、隅っこにお布団も敷いておきました!」


 フンスと息を吐いて、両手に腰をあてて胸を張る子供な少女であった。なにを安心しろというのだろうか?


「よし、それじゃあ昼寝していろ。おら、さっさと昼寝していろ!」


 肩に担がれて、キャーと叫びながらパタパタと手足を振りながら運ばれていく。


「事案! これは事案ですよ、おまわりさ〜ん!」


「人聞きの悪い叫びをあげるんじゃない!」


 歓迎ムードは消え去り、緊張感も消え去って話し合いが始まるのであった。だらりとした話し合いになること請け合いである。


 だが、パンと勢いよく手をうった幹部ドライが鋭い目つきで仕切り直す。ちなみに痩身の男性に化けている。


「では、国家建設の話を始めようではありませんか」


 うむと全員が頷き、空気が再び緊張感を保ち始める。


 そしておっさん少女は布団に丸められて紐でぐるぐる巻きのミノムシとなっていた。サクヤが仲間ですねと眼を輝かせて嬉しそう。


「これは草案であり、まだ決まることは何もないと言えますが、それでも大事な話し合いです。きっと歴史には残らないと思いますが」


 ニヤリと凄みを見せる幹部ドライに、手をひらひらと振って豪族が平然と答える。


「歴史に残るのは、本案が決定して人々に伝わるときだろうよ。その時の代表者が歴史の教科書に載ることは間違いない。が、そんなことは俺たちには関係ない。俺たちは今を生きているんだからな。精々住みやすいように作るだけだ」


 渋い声音で重々しく話しながら、歴史に載ることに興味はまったくないと言う豪族に、周りも小さく笑いながら受け入れるのであった。


「豪族さんが教科書に載るときっとその写真をいたずら書きに使われることも間違いないですね。きっと芸術的ないたずら書きが無数に生まれるでしょう。豪族さんの写真はいたずら書きのしがいがありそうですし」


 鈴のなるような可愛らしい声音で軽く話しながら、豪族さんが教科書に載るのは興味がありますと言うおっさん少女に、周りも小さく笑いながらたしかにそうなるだろうと受けいれられるのであった。


 いつの間にか布団ミノムシから抜け出したおっさん少女であった。そして豪族は周りへと怒鳴り散らす。


 邪魔しかしないおっさん少女だった。


 はぁ~とため息をつく面々。解決方法としてショートケーキとカフェオレを目の前に置かれたおっさん少女。まぐまぐとクリームを口につけながらおとなしく食べ始めるのでようやく静かになったと安心する面々であった。アホすぎてもはやレキ表記は無理であろう。


 気を取り直して、若木シティ側が自分たちの作った草案を取り出して配り始める。一応遥の前にも置かれる。見せないと他の人のを覗き込もうとするのは確実であるし。


 ふむふむとツヴァイとドライたちが草案を読み始めて、しばし静寂の時間が訪れる。


 読み終わったツヴァイが草案をそっと机に置いて豪族たちへと視線を向けて口を開く。


「福祉その他は良いでしょう。医療費の割引、道路その他の施設の整備、福利厚生として様々な施設の建設………。税金も払っていないのに、これだけ要望があるとは呆れますが、その為に国家建設に向けて話しあっているのですから問題はないと考えます」


 ほっと安心する豪族たち。那由多は外道だとわかっているが、その経営は一般人にとっては善政だ。それは皆がわかっている。どこまでナナシの力が入っているか知らないが、彼の力も大きく働いているのであろうと。


 ただし、善政をしいているからといって、これらの要望が通ると思ったら大間違いである。何しろ税金を払っていないのだ。あと1年半は払わないでよいと言われているが、それにしても要望の多さを見ると肩身が狭い。大樹の財力と資源に頼りきりなのがわかるからだ。


 自分たちで今年は作物を作ることはできたが、他にも手に入らないものなどいくらでもある。そもそも日本は資源を輸入して暮らしていた国だったのだ。作物以外は資源採掘が難しい国なのだから。


 なので、問題ないと言われて、ほっとする豪族たちへと厳しい目つきでツヴァイが話を続けるのを聞く。

 

 ツヴァイはパンパンと草案を手でかるく叩きながら


「この民主主義というのはなんでしょう? 選挙権を与える年齢? これは元日本の選挙権の法律を元に考えられていますね? 民主主義をとるとどういうことになるのかお分かりになって草案を作りましたか?」


 やはりここにひっかかるかと豪族たちは苦々しい表情になる。民主主義………。絶対に草案の時点で書かないといけない内容であり、大樹が絶対に通さない内容であろうとはわかっていた。


「民主主義、素晴らしいと思います。民主主義になったら私も立候補しますね。お姉ちゃんとみーちゃんも一緒に立候補させますよ、楽しみですね!」


 フンスと息を吐いて胸をはって遥が立候補をしますと口を挟む。


 そしていつの間にかタスキはおーさまから、だいとーりょーと表記が変わっていた。用意周到すぎる。


 おっさん少女を見て若木シティの面々は黙り込む。ツッコミは入らなかった。なぜならば、レキが立候補したら、もしかしたら本当に当選してしまうかもしれないからだ。いや、たぶん圧倒的票差で当選する。


 レキを神とする宗教もあるのだ。民主主義という名の宗教国家になるかもしれないと想像して、ゾッとしたのである。


 ここにきて、豪族たちはなぜ大樹がレキをこの大切な話し合いに送り込んだかを理解した。


「ちっ、民主主義の危険性を見せつけるために送りこんできたんだな………。なるほどな………」


 豪族が呟くように言う。おかしいと思ったのだ、いつもこんな話し合いにお姫様は出席をしない。なのに、この時だけ現れた。


 恐らくはメイドとやらも、上からの命令でお姫様を上手く言い含めて送り込んだのであろう。アホなお姫様は気づいていないだろうが、可愛らしい少女が当選したら、ボールのように手の平でコロコロと他の人間に操られることは想像するに難しくない。


 ふっ、と軽く笑う大樹の幹部連中の姿は動揺を見せていないので、その考えは当たっているのだろうと確信する。


 たとえお姫様が立候補しなくても、まだまだ人口の少ない若木シティでは民主主義はダメだと暗に伝えてくる鬼謀に舌打ちをする豪族。


「民主主義はダメだと理解して頂いてなによりです。ではこちらの草案を配りましょう」


 今度は大樹の草案が配られるのだが………。


「ん? かなりの薄さじゃないか。これが草案なんだ?」


 疑問を口にする豪族。辞書ほどとはいかないが雑誌レベルの厚さを持っていた若木シティと比べると、全然薄い。


 完璧な内容なのかと考えて、中身を見て唸る若木シティの面々。


「これは………。法律その他は社則に則る? 企業国家大樹………。国民は全員大樹の社員となる? 未来的な国家だな、おい?」


 福祉関係も法律もかなり隙がありそうだが、そこには判断に困る違法だと思われる内容は財団大樹代表に任せると書いてもある。


「独裁者ではないか! これでは到底受け入れることはできんぞ」


 バンと机に草案を叩きつける豪族だが、ツヴァイたちは冷静にその姿を見ていた。豪族の強面での態度は一般人にはかなり威圧を与えるのだが、そよ風の如く受け流す。


「これまでの企業のあり方を国家に当てはめただけです。それに独裁者と言いますが、別に一族経営という訳にもならないと思います。なぜならば那由多代表の周りの幹部は別に那由多代表の一族というわけではありません。たしかに幹部には那由多の一族も一部がいますが、その数は圧倒的に少ないのです」


「あ~ん? なんでだ? 大樹は俺らもわかるほどに苦労して作り上げたんじゃないのか? なんで一族経営じゃないんだ?」


 豪族の問いかけにかぶりを振ってツヴァイは真面目な表情で答える。


「いえ、大樹は有能な人材で成り立っています。そこには無能な人材が入る余地はないのです。それは崩壊した世界での那由多代表が厳格に決めている規則の一つですね」


 ショートケーキを食べ終えて、今度はチョコレートケーキに挑戦をして、まぐまぐと食べていたおっさん少女は衝撃を受ける。


 まじですか! その場合は私が入る余地が全然ないですよと。


 自分の能力をよく知っているおっさんであった。その場合はぼんくらなお金持ちのボンボンの立場になってしまうと焦るが、よくよく考えるとその方が働かなくていいよねとダメな考えをする遥であった。


 う~んと、豪族たちは頬杖をついて、その内容について検討する。ワイワイと顔を見合せて話し合うが、たしかにあの那由多代表は一族経営をしそうにない性格かもしれないとは感じる。


 それどころか、一族であっても厳しく対処をしそうである。無能なお前はもう用済みだとか言われて追い出される子供がいるかもしれない。そしてその子供がチートな力をもって復讐にくるかもしれない。


 学園で劣等生のフリをして入り込み、ハーレムを築きながらドヤ顔で有能とされた兄とかと戦い、ぶちのめすのである。あれはきっと内心では狂喜に包まれているとおっさんはいつも同じような内容の小説を読むたびに思う。


 ドヤァと嬉しそうな表情だと、主人公としてふさわしくないからクールを装っているのだ。本当は踊りだしたいぐらいに嬉しいと思う。


 だが、その場合兄の代わりに姉となってレキが立ちふさがるので勝利する確率はゼロであろう。そしてドヤ顔で勝ち誇りそうな感じがする。


「社則は企業としての内容ですので、しっかりと守っていただきます。社員となったら月給は? という言葉にはあくまで国家なので、働き口は自分で探してくださいという感じになりますが」


 迷っている豪族たちへと、畳みかけるようにツヴァイは告げる。


「崩壊前と変わりませんよ。一般人にとっては政治家の顔よりも今日の食卓に上る献立を考える方が重要です。悪政を敷かなければ、企業国家でも民主国家でも変わりないのです」


「たしかにそうかもしれないな………。だが監査機関は必要だぞ? このシティはたしかに大樹のおかげで復興してきた。それは誰しもが認めるが、この先も悪政が敷かれないなど保障はお前らでもできんだろ?」


 ふむと頷いて、ツヴァイたちは頷く。


「では、監査機関のみは若木シティ住人から選出することにしましょう。選出の方法は………」

 

 ちらりとツヴァイが遥を見やる。そこにはタスキにかんさいんと書いてある少女がチーズケーキをまぐまぐと食べている姿があった。何気に芸が細かいおっさん少女である。


 豪族たちもちらりとおっさん少女を見てため息を吐く。こりゃ民主主義はダメだと。恐らくは絶対に立候補をしてくると思われるので。


「わかった。それは厳正な話し合いの元で決めよう。では企業国家の話は検討して後日話し合うことにしよう」


 今日の話し合いだけで決まる内容ではない。これから持ち帰って話し合いをしてから決定することになる。


「………すぐに決めて欲しいとは言いませんが、冬が訪れる前には決めていただけると嬉しいですね。その方が冬の暇な時間に皆さんに伝わるでしょうから」


 ツヴァイの言葉に周りは頷いて話し合いは終わるのであった。


 終始ケーキを食べていただけのおっさん少女であった。ちなみに話し合いが終わるまで5個も食べちゃいました。


 後日、正式に企業国家となると若木シティが伝えてきたので、いよいよ偽本部へと豪族たちを招き入れようということになるのであった。

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