4.女神のお告げ
レオニードとポンザは、コムニの託宣所に着いた。
町の中心には白い塔が建ち、その周りを宿屋や商店、土産物屋が取り囲んでいる。
きっと、あの塔が託宣所なのだろう、とレオニードは思った。
町の中の道は狭いので、レオニードは馬から降りてポンザが引き、その塔を目指してゆっくり歩く。
人も結構多い。
町を歩いて行くと、普通の食材を売っている店もあるし、よくわからないものを売っている店もあった。
横から、「魔よけのお札はいらないかね?」とか、「これはなんにでも効く万能薬だよ」と声を掛けられる。
また少し歩くと、肌の露出が多く化粧をした女性たちが、「寄ってってよ」と言ってくる。
その女性の方に歩いていく男もいた。
どうやら、お告げだけのために集まっているわけでもなさそうだ。
レオニードたちはやがて、塔を取り囲む白い塀の前にたどり着いた。そこには木でできた立派な門があり、左右には門番が守っている。
レオニードはそこにいた門番に聞いてみることにした。
「女神のお告げを聞くにはどうしたらいいですか?」
「それならこの門を入り、取次者に名前を述べて待たれよ」
そういうと門番は、門を開けて中に入れてくれた。
門を入ると、そこには庭園が広がっている。その奥に白い塔と宿舎のような低い建物があった。
「あの人たちが取次者では?」
ポンザが指す方を見ると、塔の下の入口の左右に一人ずつ、灰色っぽいフード付きのローブの様なものを着た人が椅子に座っている。
レオニードたちは、門の横の馬つなぎに馬をつなぐと、歩いてその人たちの方に向かった。
庭園は右に池があり、その周りに色とりどりの花が植えてある。花が無いところは、芝や色とりどりのきれいな石が敷き詰められていた。
「きれいな庭ですね旦那様」
ポンザがあたりを見回しながら言ってきた。
「ああ」
レオニードは、天国というものがあるとするなら、きっとこういうところなのだろうと思った。
その取次者たちの前まで来ると、レオニードは名前を名乗る。
「レオニード・オイマールと申します。サマ王の名代としてまいりました。女神のお告げを授かりたい」
「貢物はありますか?」
右側に座っていた人が聞いてきた。女性の声だ。
レオニードは、王様にもらった金貨の入った袋をその女性に渡す。
「では少しお持ちください」
そういうと、その女性は塔の中に入って行った。
しばらくすると、再び出てくる。フードをかぶっているので、同じ人かはわからない。
「ではご案内しますが、武器をここに置き、お供の方はここでお待ちください」
レオニードは言われた通り、剣を外すとポンザに預けた。
それを見るとその女性が塔の中に入っていくので、レオニードはその女性の後について行く。
塔の中のらせん階段を昇って、三十メートルぐらい上がると、その塔の頂上に出た。
そこから塔の下の方を見ると、今しがた通ってきた町が見え、その向こうには遠くの山脈までもが見渡せている。
レオニードは階段を昇り切り、今度は塔の中央付近を見ると、そこには祭壇があった。
その祭壇の前には、薄く肌が透けるような白い服を着た、巫女と思われる女性が祈りをささげている。
「ここに座ってお待ち下さい」
案内してきた女性がフードを頭からはずし、その巫女の後ろに置いてある座布団に座るように言ってきた。
レオニードがそこに座ると、その女性も彼の横に座り、巫女の方を見る。
「では女神にお聞きになりたいことをどうぞ」
横に座った女性が、タイミングを見てレオニードに言った。
レオニードは祭壇と巫女の方を見て言う。
「今、西の村にドラゴンが出て、民衆が苦しんでいます。討伐隊もやられてしまいました。どうしたらドラゴンを退治できるでしょうか?」
レオニードの質問が終わると、その巫女は彼がわからない言葉で祈りの声を発し始めた。
しばらくすると、その巫女は脱力した状態になり、意識がないような状態で口を開く。
その言葉も、聞いたことがない言葉だ。
レオニードの隣にいた女性が、それを通訳する。
「折れた剣を探し求めよ。白き鳥が導く。聖なる木、聖なる火、聖なる金属、聖なる土、聖なる水を求め、剣を鍛え直せ」
「どこをさがしたらいいのです?」
レオニードは聞いたが、巫女は黙ったままだ。
すると横にいた取次者の女性が答える。
「神は、すべてを語りません。しかし、今のお告げにすべてのヒントがあります。お告げはこれで終わりです。剣を探しに行かれるのがいいでしょう」
レオニードは塔の下で待っていたポンザの所に戻ると、自分の剣を腰に戻しながら、塔の上を見上げる。
「行こう」
ポンザにそう言うと、門の方へ歩き始め、その間にポンザに今のことを話した。
もう日が暮れ始めていたので、レオニードたちは今晩はその町の宿に泊まることにする。
レオニードは夕食を済ますと、酒場にポンザを残して、自分の部屋に戻った。
ベッドに横になり、先ほどのお告げを考えてみる。
折れた剣というのは、やはり家に伝わる聖剣の事だろう。戦争のときに、敵に取られない様にひいおじいさんがどこかに隠したのか。
それを見つける手がかりが白き鳥? 家のどこかに白い鳥のしるしがあるのだろうか。それとも、五十年前に敵に奪われた領土のどこかにあるのだろうか。
そういえば砦のすぐ近くに白鳥の池と呼ばれるところがあったな。そこにいってみるか。
後は聖なる木や火だって? いったいどうやって探せばいいんだ。
レオニードは、そうやっていろいろ考えているうちに眠くなった。
ポンザは酒場で一人で酒を飲んでいた。次の日も旅があるから少しだけにするつもりだ。
すると、一人の三十代ぐらいの旅人がテーブルの反対側に立つ。
「ここに座ってもいいかい? 他の席が満杯なんでね」
その旅人が聞いてきた。
ポンザは手で椅子を勧める。
「ああ、どうぞ」
どうせもう自分は飲み終わるところだ。そろそろ部屋に戻るかと思って、席を立とうとすると、その旅人が言ってくる。
「やーありがとう。お礼に一杯おごるから、ちょっとだけ話し相手になってくれないかい?」
「え? そうかい?」
ポンザは嬉しそうに応えた。
何という幸運だ。話を少しするぐらいで一杯飲めるなんて。これはきっと女神さまの恵みに違いない、とポンザは思った。
ポンザの前に座った男は、酒のカップをポンザに差し出して言う。
「でも、あんた強そうだね」
ポンザはそれを聞いて上機嫌になる。でも主人を立てることを忘れない。
「いやーオラなんか、旦那様に比べたら」
「おれは、色々なところを旅しているけど、強い人間はすぐにわかるよ」
「まあ、ヤリを持たせたら、ちょっとはな」
ポンザは酒のせいもあってか、自慢したくなった。
それを聞いた旅人が、さらに言ってくる。
「そうだろう、そうだろう。腕自慢の話を聞かせてくれよ」
ポンザは色々話し始めた。先日馬泥棒をとらえた話も、自分を少しカッコよく登場させる。
「もう一杯どうだい」
その男は店の人間に酒を持ってこさせて、ポンザにまた勧めた。
「すまないねー」
「やーすごいね。君のご主人は幸せだなー」
その男はポンザをさらに持ち上げた。
ポンザはだんだん酔いが回ってきたこともあり、すっかり警戒を解いている。
「で、今はどういう旅をしてるんだい?」
その旅人が聞くと、ポンザは今回の旅や、お告げの内容を自慢げに話した。
ポンザはいつの間にかテーブルで寝てしまい、店の亭主に起こされて、自分の部屋に戻って寝た。
次の朝、ポンザは目が覚めると、夕べのことはあまり覚えていない。
覚えているのは、誰かと仲良く話して盛り上がったことぐらいだ。
その日、レオニードたちは、まずは聖剣を探すために、自分の家に戻ることにする。
コムニの町を出て、自分の家の方に向かう街道を進み始めた。
オズナ老人は、一人で馬に乗り、街道をゆっくりと北に進んでいた。
昨日コムニの町を出て、夕べはサディの宿場村に泊った。
コムニの町には友人に会いに行き、そこに三日間滞在していた。
しかしその友人から気になることを聞いたのだ。
北の国は混とんとしていて、国は国なのだが、いろいろな勢力が乱立していて、まとまりがない。
いや、いままではそうだった。ところがある族長が台頭して、他の部族を平定しだしたらしい。
彼は気になって、北の国の様子を見に行くところだった。
そんなことを考えていると、オズナの馬の前に四人の荒くれ者が飛び出してきた。
馬が驚いて、少し立ち上がったので、オズナは馬を静めようとする。
「ドウ、ドウ」
しまった、考え事をしていて察知できなかった、いや夕べの酒のせいか、とオズナは悔やんだ。
オズナが馬を走らせて逃げようとすると、荒くれ者の一人が馬を抑え込んでしまった。
彼は特殊な能力を他にも持っているのだが、それを使うには呪文を唱える時間が必要だ。
だが今は、そんな時間はなさそうだった。
「おい、金目の物を置いて行け」
その荒くれ者が言ってきた。
やはりおいはぎか、とオズナは思い、杖の力でなんとか切り抜けようと、持っていた杖を上にあげる。
その時、後ろから馬が駆けてくる音がしたので、オズナは振り向いた。
盗賊たちもそちらに注目する。
今、一人の青年が馬に乗って、片手で剣を持ち突進してくるところだった。
あの青年は、確かあの時の……。
オズナ老人はこのとき、この青年との縁を感じずにはいられなかった。そして、目をつぶると、このあと一緒に旅をする未来がおぼろげに見えた。
レオニードたちは街道を少し急いでいると、前方で、馬に乗った人が四人の盗賊に襲われているのを目にした。
彼はすぐに反応する。
「ポンザ、彼を助けるぞ。後からこい」
そういうと馬を走らせ、左手で手綱を持ち、右手で剣を抜いて振り上げる。
レオニードが到着すると、盗賊の一人がヤリを突いてきた。レオニードはそれを剣で払いのけ、相手がよろけたところを切りつけた。
もう一人がレオニードの馬の鼻をこぶしでたたき、彼の馬は驚いて後ろ脚で立ち上がり、レオニードは振り落とされる。
しかし、すぐにレオニードは起き上がり、剣を構え直した。
盗賊の一人にはケガを負わせたが、四対二だ。でも一人は老人だから実質は四対一で、形勢は不利だった。
そこへ後ろから馬が駆けてくる音がする。レオニードは剣を構えたまま後ろを見ると、旅の騎士が馬を走らせてくるところだった。その騎士はすぐそばに来ると馬を降りて、レオニードの横に並んでくる。
「助太刀する」
そう言うと彼は、盗賊の一人に切りかかった。そこにポンザも駆けつけ、これで老人も入れれば四対四になった。
形勢は一気に変わり、レオニードは盗賊の一人を切り倒し、他の三人はそれを見ると一目散に逃げ出した。
「やーありがとう」
オズナは、そう言うと馬から降りた。
「おや、あなたは先日お会いしましたね」
レオニードはオズナを見て言った。
「また助けてもらうとはな。本当にありがとう」
「おぬしら知り合いか?」
後から駆け付けた旅の騎士が聞いた。
「以前に一度。でも、助かりましたよ。私はレオニード・オイマールと言います」
「私は、エマル」
ポンザが彼を見て思い出したようだ。
「あれ、一昨日オラに、いや私に酒をおごってくれた方じゃないですか?」
「おー君か。するとこの人が君のご主人か。やはり強かったな」
エマルはポンザに言った。
オズナはエマルをちょっといぶかし気に見たが、すぐに笑顔に変わる。
「やー、みんなありがとう、みんな同じ方向に行くなら、途中の村でおごらせてもらうよ」
そう言ってオズナ老人は皆を見回した。
そして、四人は一緒に街道を北に進むことになった。
彼らは道すがら、色々なことを話す。
レオニードは、今回の旅は西の地方に現れたドラゴンを退治するのが最終目的だということを話した。会ったばかりなので詳しいお告げの内容までは話さない。
オズナ老人は馬を進めながら言ってくる。
「わしはこれから北の国に行こうと思っておったが、そなたを助けようと思う」
「そうですか、それは心強い」
レオニードはオズナを優しい目で見て言った。
「おぬし、わしを老いぼれだとあなどっておるな?」
「いえ、そのようなことは」
「人を外見で判断してはならんぞ」
「はい」
そこにエマルが言う。
「私も同行していいかな?」
「あなたも?」
レオニードが聞いた。
「実は目的地の無い、武者修行の旅でな。ドラゴンを退治するのは旅の目的にもかなう」
「そうですか、わかりました。みなさんがよろしければ、一緒に旅をしましょう」
そこでレオニードは、お告げの一部を話すことにした。
「フリッグ神のお告げによると、ドラゴンを倒すにはまず聖剣を探さなければならないのです」
「聖剣?」
エマルが聞いた。
「おそらく、我が家に伝わるとされる聖剣『グラム』だと思いますが、どこに隠されたかわからないのです。お告げでは、ただ、白き鳥が導く、とだけ……」
レオニードが困った顔で言った。
「そなたの家に伝わる聖剣は、わしも聞いたことがある」
オズナがそう言って、レオニードを見た。
「えっ? 御存じなのですか? では、やはり聖剣は存在するのですね?」
「存在するとも。疑っていたのか?」
「はい、実は……」
レオニードは少し気まずそうに応えた。
「先代のオイマール公には、会ったことがある」
「私のお爺さんと?」
「うむ。そのとき聞いた話では、あの聖剣は、今おぬしが暮らしている砦に隠されたと言っておったぞ」
「そうなんですか。いったいどこを探したらいいか途方に暮れていたんです」
「お告げの『白き鳥』も、家に着けばすぐにわかるじゃろう」
レオニードはそれを聞いて、だんだん希望を抱くことができるようになった。
彼らは途中の宿場で一泊し、次の日の夕方にはレオニードの住む砦に到着した。
レオニードはまず、父と母に旅で会った二人を紹介し、これまでの経緯を話す。
そして彼はその日のうちに、砦中の壁や床などに白い鳥のしるしか彫刻がないかを探してみた。
夕食には旅で会ったオズナとエマルも招いて皆で一緒に食べる。
ポンザは久しぶりに自分の家に帰っていた。
「どうだった」
レオニードの父ベルナルトが、聖剣を探し回っていたレオニードに聞いた。
レオニードは頭をゆっくりと横に振って応える。
「どこにもありません」
「オズナ殿は私の父に会い、聖剣がここにあると聞いたのでしたね?」
ベルナルトがオズナに尋ねた。
「さよう、先代がそなたと同い年ぐらいの時じゃった」
「その時他に何か言ってませんでしたか?」
「もう三十年ぐらい前の事じゃし、その時は聖剣が必要になるとは思ってもみなかったからの」
「聖剣が見つかったとして、それを鍛え直すためには、聖なる木、火、土、金属、水が必要らしいんです」
レオニードが言った。
「それは、わしに心当たりがあるぞ」
オズナが応えた。
「本当ですか?」
「聖なる木はここから東にある、エルフの国にある」
それを聞いてエマルが驚く。
「エルフ!? ですか? 伝説の種族だとばかり思ってました」
そこにいる皆も同じなように思っていたようだ。驚いた顔をしている。
「今は数も減っているが、深い森の奥で人間との交わりを絶ち、ひっそりと暮らしておる」
「あなたはそこに行ったことがあるのですか?」
レオニードが尋ねた。
「若いころにな」
「それは良かった。少し希望が持てますね」
「そうだ、レオ。王様に途中経過を知らせた方がいいのではないか?」
ベルナルトがレオニードに言った。
「そうですね。伝書鳩を一羽使ってもいいですか?」
「大丈夫だ」
「では、明日の朝一番で送っておきます」
その夜、レオニードは久しぶりに聖剣の夢を見た。
いつもと同じ内容だ。
レオニードは、暗い洞窟を歩いていくと、突き当りに古い木の扉が現れる。扉を開くと、その部屋の中央には大きな岩があり、その岩の上には折れた剣が置かれていた。
剣の表面には何か文字が彫刻されている。でも、何が書いてあるかはわからない。
レオニードが目を覚ますと、もう朝だった。
彼は先ほど見た夢を思い出してみる。
夢の中では洞窟の中を歩く、ということは聖剣は地下にあるのか。でもこの砦の中に地下は無いはずだ、と彼は思った。
とりあえず朝食の前に、彼は王様への手紙を鳩で送ることにした。
レオニードは、小さな細長い紙に、聖剣を探し鍛えろというお告げが出たこと、そしてその旅に出ることを書いて、その紙を丸め、鳩小屋に向かった。フクロウのトトへのエサも忘れない。
いつものように馬小屋の上に昇り、鳩小屋に入る。
旅の間、誰かが彼の代わりに餌をやってくれていたらしく、鳩はみな元気そうだ。
彼はトトを呼ぶと、トトはすぐに彼の肩にとまってきた。トトも元気そうだ。
「ああトト、旅から帰って来たよ。でも聖剣が見つかったらまた旅に出ることになりそうだ」
そう言ってトトに、持って来た肉片をあげた。
トトは肉片をくわえると、自分の巣に持って帰って食べ始める。
その後彼はいつもの様に鳩に餌をやり、一羽の鳩の足に先ほど書いた王様宛の手紙を巻き付け、紐で結ぶ。
その鳩を檻から出し、窓に持って行って、王都の方に向かって放した。
レオニードがダイニングに行くと、ちょうど皆も起き出してきて、召使のバーラが皆に食事を出しているところだった。
レオニードは椅子に座ると食事を食べ始め、父や皆に今伝書鳩を送ったことを伝える。
と、そこでレオニードは気が付いた。
「トト!?」
そう言うと、ダイニングを飛び出した。
後ろから「食事中になんですか」という母の声がした。
「トト?」
オズナがベルナルトに聞いた。
「レオニードが育てている白いフクロウですよ」
ベルナルトが答えた。
「白!?」
オズナとエマルが顔を見合わせる。
レオニードは鳩小屋に戻ると、トトを呼んで左肘を出した。
トトはすぐに肘のあたりにとまる。
「トト、どう言ったらいいかわからないが、今俺たちは聖剣を探している。場所を知らないかい? じゃなければこの砦の中に地下の洞窟の様な場所が無いかな?」
トトは羽を一瞬広げて、ホッホッと鳴いた。
そして、トトは飛び立ち、窓の所に一旦とまる。
レオニードがそこに来ると、今度は庭の方に降りて行った。
彼はトトの行った方角を目で追うと、すぐに自分も鳩小屋を降りて、馬小屋を出た。
庭に出ると、トトは井戸の縁にとまっている。
「まさか、井戸の中に洞窟があるのかい?」
レオニードはそう言うと、納屋にロープを取りに行き、次にロウソクを取りにダイニングに入った。
皆がレオニードを見る。
「もしかしたら、聖剣の隠し場所が分かったかもしれません」
レオニードはそこにいた皆にそう言うと、そこにあったロウソクに火をつけ、ロウソク掛けに付けて、火が消えない様に手で前を覆いながら庭に出た。
そこへポンザもちょうどやってきた。レオニードが何をしているのかわからなかったが、彼もついて行く。
「ポンザ、井戸の中に降りるから、ロープを持っていてくれ」
レオニードがポンザに言った。
ポンザがロープを自分の体に巻き付けていると、ダイニングから出てきたエマルが手伝った。エマルはそのロープを井戸の近くで支え、レオニードは腰にロウソク掛けを付けて井戸の中に降りて行く。
レオニードは井戸の中を三メートルぐらい降りると、そこに横穴を見つけた。
「横穴があった! ロープを離すぞ!」
彼は外でロープを持っている二人にそう叫ぶと、横穴に入りロープから手を放す。
腰に付けていたロウソク掛けを手に持ち換え、その横穴を進んでいった。
夢で見たとおり、突き当りに木の扉がある。
それを開けて中に入ると、岩の上に折れた聖剣が置かれていた。
聖剣は二つに折れている。ほぼ夢で見た通りだ。
レオニードは大声で、
「あったぞー」
と知らせた。
レオニードは上着を脱ぎ、それに聖剣をくるんで、袖の部分を利用して肩から掛けて結んだ。
そして井戸から上がると、服から聖剣を取り出して、皆に見せる。
「やったじゃないかレオニード」
とエマルが笑顔で言った。
「やりましたね、旦那様」
ポンザもうれしそうだ。
「この目で聖剣を見ることができるとはな」
後から来たオズナも感嘆している。
トトがレオニードの肩にとまった。
「本当に白き鳥、トトが導いてくれました」
「ああ、きっとこの後の旅もトトの力が必要になるかもしれぬぞ」
オズナが少し遠くを見るような目で、レオニードに言った。
「じゃあトト? 次の旅は一緒に来てくれるか?」
レオニードが話しかけると、トトは、ホッホッと鳴いた。
レオニードはダイニングに戻って、テーブルの上に聖剣を置き、割れた面を合わせてみる。
ほぼピタリと合った。小さな欠けはあるが、大きく無くなっている部分は無い。
そこにベルナルトが横に来て、聖剣を触りながら言う。
「一応村の鍛冶屋に、治せるか聞いてみたらどうだ?」
「そうですね。聞くだけ聞いてみましょう」
レオニードは厚手の布に折れた剣を包んで、ポンザを伴い村の鍛冶屋に向かった。
「アランおはよう」
ポンザがまず鍛冶屋のアランに声を掛けた。
「おーポンザ、帰ってたのか?」
アランはそう言うと、すぐに後から来たレオニードに気が付いて、挨拶する。
「これは坊ちゃま」
「アラン、これを見てほしい」
レオニードは聖剣を布から取り出した。
「これは……?」
アランが剣を触ってみる。
「うちに伝わる聖剣だ」
「どおりで、こんな金属はみたことがありません」
「これを鍛え直せるか?」
「ちょっといいですか?」
そう言うと、アランは聖剣の刃先をペンチではさむと、火に入れてみた。
しばらく無言でふいごを踏み、火の勢いを増す。しばらくして火から聖剣を取り出して、手でおそるおそる触ってみる。そして首を振った。
「坊ちゃま、これを見てください」
そう言うと、今しがた火に入れた刃をレオニードの前に差し出した
「どうした?」
「火に入れたのに赤くなりません。触っても全然熱くないです」
レオニードは刃を触ってみる。
「ほんとだ」
「これは見たこともない金属です。火に入れても溶けないんじゃ、鍛えようがありません」
「そうか。やはりお告げの通り、聖なる木や火が必要なんだな……わかったありがとう」
レオニードは砦に戻って、先ほどの鍛冶屋での様子を皆に話した。
「そうか、ではこれから五つの聖なるものを探しに旅に出なければならんな」
オズナが顎髭を触りながら言った。
「もちろん俺も行くよ」
エマルが言ってきた。
「旦那様、次もご一緒させてください」
とポンザ。だいぶ方言が取れてきたようだ。
レオニードたち四人は、午前中に再び旅立った。




