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ダンジョン街のミミとビビ ~世界はダンジョン産で満たされる~  作者: 石火
第一章:境界線の向こう

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プロローグ

初投稿です。

辺境からやってきたミミとビビの、のんびりした(けれど規格外な)二人旅を書いていきます。

楽しんでいただければ幸いです! よろしくお願いいたします。

  この世は乱世。戦は戦を呼び、地は荒れ、僅かながらの収穫物も奪われる。

 飢えは人の心までも変えてしまい、親はどうやって子を高く売ろうかと頭を絞る。

 敏い子は異変を感じて親元を離れ、村や町からさえも離れていく。


 そんな末期的な光景が当たり前になった時代、突然、子供たちだけに声が届いた。


『最後の慈悲である。ダンジョンコアを見つけ、起動させよ』


 その日、全ての子供たちに同じ文言が三度繰り返された。

 勘の良い者はすぐさま辺りを見回し、ある者は諦めの感情に支配されて、走り去る子供をただ見ていた。


「さて、種まきは終わったぞ」


 覗いていた天鏡から離れ、そう言ったのは星と運命の大神アストレイアだ。

 人々にも神にも敬われる最高神であるとは思えないほど、その顔には深い疲れの影が差していた。


「それでは我は眠りにつくとしよう。あとはおぬしらが心を入れ替えることを願っておる」


 目覚めた時、どれ程の神が消えているのか――。

 アストレイアは口には出さなかったが、その場に並ぶ神々も、同じ不穏な予感に震えていた。


********************************


 アストラ大陸の南西に位置するゼルコヴァ王国。

 ここは小柄なハーフリングやドワーフが多く、戦乱に巻き込まれにくい立地もあって、世界の中でも飢えには強い土地だった。

 そんな王国の辺境。小さくも綺麗にまとまった町はずれの茂みで、俺は自分の手のひらを見つめていた。


「ねえ、ミミ。こんな茂みで何をじーっと見てるの?」


 不意に声をかけられ、俺はビクリと肩を揺らした。

 話し掛けてきたのは、薄いグレーのハチワレが特徴のケットシー、ビビだ。

 こじんまりした体躯に生成りのティーシャツ、青空のような色のベストがよく似合っている。


「うーん、さっき見付けたダンジョンコア……かな。頭に矢印が浮かんで、薄く地図が見えるんだ。其処に行って『起動』しろ、だってさ」


 答えた俺は、三毛のケットシーだ。男の三毛は珍しく、この村でも俺だけだ。

 神の啓示から半年。人々は血眼になって探しているらしいが、俺の目の前には今、それが転がっている。


「うわーすごいね! これがダンジョンコア!」


 ビビが身を乗り出して覗き込む。

 俺の右目と同じ金の光彩を持つビビの左目が、キラリと輝いた。対をなす俺たちの瞳が、コアの放つ紺や赤の光を反射して怪しく煌めく。


「……なあ、ビビ。後ろの茂み、ちょっと見てみろよ」


 俺が指差した先を見たビビが、驚きの声を上げた。


「うわっ! こっちにもダンジョンコアが落ちてる!」

「しーっ! 早く拾え!」


 慌てて口を押さえる俺を見て、ビビは一つ大きく頷くと、スタタタと駆け出した。

 ケットシーの両腕でも抱えきれないほど大きな、直径十五センチほどのコア。それを大事そうに胸元に抱えて戻ってきたビビの顔は、満面の笑顔だった。


「やっぱりミミと居るとツキがあるなぁ。あと、なんだか注意事項が頭に流れてくるね……なんか難しいけど」

「取り敢えず、秘密のアジトへ行くぞ。此処じゃ誰に見られるか分からない」


 俺はティーシャツを捲り、お腹の辺りにコアを抱え込んだ。ビビもベストを脱いでコアを包む。向かった先は、橋の下にある狭い横穴だ。入り口が小さいから、デカい大人たちは絶対に入ってこれない。


「ミミ、教会の方に進めって矢印が出てるよ」

「俺のもそうだ。教会はここから北東……ただ、薄く見えてる地図は見たことのない地形だから、どれだけ離れているのか分からないな」

「大丈夫、旅の支度はもうできてるよ!」


 ビビが誇らしげに右手を上げる。


「ビビ、成人の旅は二月後のはずだろ?」

「早くに用意してて良かったぁ」


 屈託なく笑うビビに苦笑し、俺は明朝の出発を宣言した。

 通常、人族は十五歳で成人だが、ケットシーは三歳で成人だ。


 かつて短命だった俺たちの寿命を女神が引き延ばしたという伝説があるが、真実かは分からない。ただ、早熟なまま人族を上回る寿命を得た俺たちは、成人すると旅に出るのが伝統だ。


「イェイ!」


 ビビが喜びのステップを踏み、しっぽをピンと立てて『ケットシーダンス』を踊り出す。

 つられた俺も一緒にステップを踏みながら、これから始まる未知の旅に胸が躍る。


 ……だが、その奥底で、別の何かが静かに疼いていた。それが“懐かしさ”なのか“恐れ”なのか、まだ分からない。


(※ケットシーという種族は、成人すると気ままに旅立ち、気が向けば村へ帰って子を成し、また風の向くままに旅へ出るという)

最後まで読んでいただきありがとうございます!

辺境から出てきたばかりのミミとビビですが、これから色々な場所をトテトテ歩いていく予定です。

もし「二人の旅の続きが気になる!」と思っていただけたら、評価やブックマークをいただけると、執筆の大きな励みになります! 少ししてから第一話の投稿をしますのでそちらも是非お読みください。

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