表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月のまぶしい空  作者: 青井 海
3/39

バラ園

知世ちせはバラが好きだ。おじいちゃんの家に行くとここのバラ園ほどではないけど、いろんなバラがあった。なかでも、玄関のアーチに巻き付けてある蔓バラが知世のお気に入りだった。いいとこのお嬢様になった気分がするから。


バラの甘く優美な香りが知世の鼻を刺激する。


優弥ゆうやとの口げんかの応酬のあと、バラの香りに誘われて、知世はバラ園に向かった。


優弥はついてきてはくれない。そりゃそうだ。子供じみたけんかをしたんだから、しばらくは離れていたほうがいいだろう。


(そう、あのときも・・・)


知世の古い傷が痛む。


あのとき、美優みゆは言った。あのときとは、美優とは会えなくなるその前日だった。


 「知世は私より優弥が好きなんでしょ」

 「うちに来ても、いつも優弥のことを見てた」


図星だった。優弥のことは小学校のころはなんとも思っていなかったが、中学2年くらいから意識するようになっていた。

一緒に生徒会の役員をするようになってからだった。頭がよく、なよなよしていながらも、仕切り上手な優弥は生徒会長から重宝がられていた。


中3になって、優弥は案の定、生徒会長になり、男女問わず人気だった。運動もそこそこできるし、顔もそこそこいいほうなので、女子からは生徒会長が司会をするたびに、黄色い声援が飛ぶほどだった。


知世は、中3では生徒会役員にはならなかったものの、優弥に会いたいばかりに美優の家に行っていた。

美優の弾くピアノの曲より優弥の弾く曲をずっと聞いていたかった。優弥の後姿を見ていたかった。


そう、美優の最後のセリフを聞いたときも、バラが咲いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ