美優の母の後悔
(最近、美優が以前にもまして私と話さなくなったのは、思春期特有の中2病だと思っていたけど・・・)
美優が帰ってきてから、優弥が珍しく、美優の部屋に行ったようだった。
物静かなほとんどしゃべらない美優が何か絶叫していた。
びっくりして、2階に上がった。
美優が優弥のほっぺたを引っぱたいていた。
「美優何があったの?でも、暴力はいけないんじゃないの」
「お母さんはいつも優弥優弥優弥優弥!!」
「もううんざり!!」
「優弥がコンクールで本選行ったときも、市の水泳大会で入賞したときも、生徒会長になったときも、優弥が公立合格したときも、いっつも優弥よく頑張ったね」
「いったい私はなんなのよ」
「私は優弥のおまけなの?」
美優は泣きながら、怒りをぶちまけ、階段をすごい勢いで降りていき、玄関を飛び出していった。
おとなしい美優の反乱に、唖然として、座り込んだ。しばらく思考回路は停止した。しばらくして、小さい頃の美優が思い浮かんだ。
(私は、美優のことを見ていなかったのだろうか・・・)
(発表会のピアノの曲がなかなかうまく弾けなくて、泣きながら練習している幼稚園のころの美優に、いらいらして、なんでできないのとつい言ってしまっていた)
(母の日に美優が私の絵を描いてくれても、優弥が割り込んで持ってくるので、つい優弥にありがとうと言っていた。)
(美優にも言ったつもりだったけど、平等に育ててきたつもりだったけど・・・)
母としての無力さに悔し涙が出るのだった。