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輸送護衛任務

「なぁ、ヤブ医者。」

客は一人だけのバーの店内で俺は店主へとそう話しかけた。

バーの中は静かで、優しい光を照明が放っていた。俺の座っているカウンターの眼の前に店主はたち、その後ろにはワインボトルが几帳面に並べられていた。

その店主はグラスをシミ一つない真っ白な布で優しく拭いていた。

「なんだ?」

店主は、白いひげを鼻の下に少しつけ、ところどころ白髪の入った黒髪をしていた。

「そろそろ、依頼を受けないとなと思ってな。」

「金はもうなくなったのか?」

「どっかのヤブ医者が高い整備費用ふっかけてきたからな。」

「あれは必要な金だ。高くなんかない、格安だよ。」

なにが格安だ。ちょっと弾薬を多くつかった依頼だったからっていつもよりも2倍の値段になるわけがないだろう。

「ほら。これが依頼一覧だ。」

ヤブ医者はカウンターしたからディスプレイを取り出し、依頼の一覧を出した。

ふむ。今回は採掘防衛定期交代か。

開拓惑星のこの星は新たなエネルギー発見への期待が高い。だからこそ企業たちはこぞって採掘場を作るのだが、この星は無法地帯だ。

命をかけた採掘の邪魔が行われる。だからこそ、採掘場には防衛のために傭兵が雇われ、今回はそれの定期交代の時期だからこそ依頼数が多いのだろう。

まぁ、俺もその無法地帯に加担している傭兵なんだがな。

といっても、これらの依頼は長期的でなおかつもしもがあればとてもではないが生きて帰れない。報酬がうまいとはいえ、今回は見送りだ。

なら、それ以外となるわけだが…数が少ない。

数少ない選択肢を眺めていると、ふと一つの依頼に目が止まった。

「採掘物輸送護衛か。」

よくある、採掘によって出てきた謎の物質を研究所に持っていく際の護衛依頼だ。

これは比較的短期間で終わり、報酬も美味しい。もちろん、ある程度危険性は高いが、こんな輸送はよくあることだ。別企業の邪魔が入ると言ってもないときも多いし、あっても少数だ。

「ヤブ医者、これを受けといてくれ。」

そういい、ヤブ医者に提示した。

「わかった。機械人の装備はどうする?」

そうだな。今回の依頼は基本的に運用コストの高い高機動戦闘兵器との戦闘は発生しない。ならまぁ、ミサイルポッドはいらないだろう。

「いつもので。」

「10連発速射ライフル一丁に小型パイルバンカー、予備兵装に長距離型ライフルな。了解。成果報酬でいいよ。」

「助かる。」

そういい、グラスに注がれた残り僅かなワインを飲み干し、バーをあとにした。




静かな通路を歩く。

今歩いている格納庫前の通路はガラス張りで、俺の搭乗機がよく見える。

全高約5mほどの一般的な機械人だ。

さっきのヤブ医者が機械人近くのかけ橋の情報端末を操作しながら弾薬の補充や点検、武装の格納を行っている。

人は直せないが、機械人は直せる。流石はヤブ医者だ。

薄暗い通路の中で、機械じかけの人を見つめた。

エネルギーの通っていないそいつの目は赤く光らず、動くようには到底に見えない。

だが、こいつが俺の機体だ。




「さぁさぁ。整備は完璧だ。集合場所にとっとと行きな。」

「ありがとよ。」

機体背面がゆっくりと口を開け、コックピットが飛び出し、それと同時にこちらの通路の扉も空いた。

格納庫から勢いよく風が吹き抜け、髪を後ろへと飛ばす。

空いた扉からコックピットへ乗り込み、機体背面を閉じながらコックピットを格納した。

『あーあー。聞こえるか?』

「感度良好。聞こえる。」

操作レバーを握り、トリガーセーフティーの上に指を置く。

『あ、そうそう。今回は、僚機がいる。言うのが遅くなったが、一匹狼の人形使い様だ。大丈夫だろ。』

「まぁ、そうだが。一体誰だ?」

俺ら、機械人に乗る傭兵共は、人形使いと呼ばれる。ヤブ医者と呼ばれた整備兵どもが始めた呼び方だがな。

『そうだな。聞いて驚くな。レイだ!』

「レイ…」

レイ、といえば人形使いのトップとも呼ばれるやつじゃねぇか。

情報が殆どない、零。ふらっと現れて依頼を完璧にこなす、突然現れる、霊。

それがあって、レイという通り名がついた謎の傭兵だ。

『まぁ、仕事が楽になってよかったじゃないか。成果報酬なんだ。頼むぞ。』

「わかったよ。」

実際、仕事が楽になるし、いいだろう。

そう思い、足元のレバーに足をおいた。

『さて、行こうか。』

ヤブ医者が操作し、格納庫前の扉がゆっくりと開き始める。

外の風が格納庫内へと入り込み、薄暗い中を眩しい光で照らした。

薄暗い部屋に慣れた俺の目には、その光は明るすぎた。

『発進カタパルト接続完了。機体発進5秒前。』

そう機械音声が読み上げ、機体が構えを取る。

そして、5秒後。

静寂の中にあった格納庫に耳が痛くなるほどの轟音の金切り音が響き渡り、巨大な機械じかけの人間は狭い格納庫を飛び出し、広い外へと飛び出した。

勢いをつけた状態で機体左右背面に取り付けられた推力ロケットを全開で回し、灰色の風を巻き起こしながら勢いを維持した状態で集合場所へと機体飛ばし続けた。

「今回はどんな依頼だ?」

誰もいない機内でそんな声が聞こえた。

「輸送護衛だよ。レイと一緒だ。」

「おいおい。レイだと?あのレイか?今回は足を引っ張らないことが重要だな。」

こいつ…やっぱり大胆に直接的に言葉を話すやつだ。

とはいっても、こんな俺の友人だ。大切にすべきだろう。

「で、俺がここから出る方法は見つかったか?」

友人と言ったが、俺はこいつの姿を見たことがない。

この機体に乗ったときから、こいつはいた。

姿は見えないのに声は聞こえるというのは不気味なものだが、それでもこの機体に乗る以上、割り切るしかない。

「まだだな。ヤブ医者に頼んではいるが、ディスク領域に読み込み、書き込み共に制限されている部分があるところまでしかわかってない。」

「そうか。残念だ。」

それきり、会話は途切れた。

すぐに会話が途切れるのは友人なのだろうか。だが、言葉は常に誤解を生む。なら、必要なこと、ただ聞いてほしいことだけを話して、会話したほうが関係は切れにくい。

沈黙の機内には、外の推力ロケットの音だけがかなり抑えられながらも反響していた。

『着陸予定地まで残り10km。補助ロケットを切り離します。』

もうそんな時間か。

そう思うころに、ガチャンというような金属音が小さく背後からなり、補助ロケットが機体から外れていった。

『主ロケット出力減衰開始。着陸します。』

自動的に機体が地面と垂直に立ち、主ロケットの噴射が徐々に弱まりながら地上との距離を減らしていく。

『地上まで300M。』

こちらが手動で足の関節を緩め、衝撃の吸収を早める。

『200。』

着陸時にブースターを吹かすために空気の取り込みを開始する。

『100。』

深呼吸をし、息を整えて体にかかる衝撃に耐えるため、コックピット上部の手すりを掴んだ。

『着陸』

そう聞こえた瞬間に、コックピットが揺れ、体に負荷が急激にかかる。

そんな中システム通りに機体は足を少し曲げて衝撃を吸収し、ゆっくりと前を向く。

「ようやくついたか。さて、エンジンの慣らしと行こうか。」

「そうだな。」

友人にそう答え、機体をすこし前屈させる。右足を少し出し、左足を後ろへと出す。

「脚部正常だ。余裕を持って走れる。」

「未整備地だ。岩があるが、かなり自由に走れるな。」

友人からの報告を聞き、走りの構えを維持し、右足で地面を蹴り飛ばした。

姿勢を低くし、地面をえぐりながら集合地点へと走り続ける。

最初はスピードを緩めていたが、徐々に加速し始め、エネルギー供給源であるモータークヴェレの出力を上げていく。

「モータークヴェレ、動作正常だ。相変わらず整備の腕はいい。」

「そりゃ良かった。」

「この調子ならかなり早く到着するだろうな。」

友人の報告を聞き、更にモータークヴェレの出力を上げ、各駆動系の正常動作を確認、暖気を済ませていく。

出力を上げていくほど機体の安定性は増していき、もともとかなり強かった振動は徐々に収まってゆく。

衝撃吸収部も正常。毎回交換しなければいけないこの部分も正常なら、ほかもいつもどおりなら正常だろう。

「よし。暖気もだいぶできたな。異常も見えない。いつもどおりだ。」

「了解。」

それだけで友人との会話は終わる。

機械人は変わらず人間のように足を曲げ、地面を蹴り、ライフルを体の前で持ちながらところどころに岩があるだけの未整備地を走り抜ける。

眼の前にある全面モニターを通して見える外の世界はどこまでも広がる大地で、コックピットの中がただ狭く感じた。

西の方角に沈みゆく太陽が平べったい大地を情熱的に、美しく紅に染めていた。

もうそろそろ太陽が沈む。

依頼は深夜に静かに行われる予定だ。

静寂の中に沈み込む時間は俺は好きだ。こういう未整備地はすべてが暗がりに隠れ、自分以外はほとんど見えない。

この世に自分だけが存在している気分になれる。

人殺しで飯を食っている以上、そんな状態が大好きだ。

だが、依頼での深夜は別だ。

すべてを覆い隠すかわりに、接敵すれば他人を不幸にし、自分の腹を肥えさせる。そんな醜悪さをまじまじと直視させられる。

…だめだな。未だに、ふとした瞬間に過去の選択を責めてしまう。

踏ん切りはつけたはずなのに。これで俺は生きると決めてからずっと間違っているのではないかと思ってしまう。

だが、そんな思いになっても、太陽は沈む直前に強烈な光を放ってから世界はゆっくりと暗い世界に沈み込んだ。

そして、そのときには集合地点が目に入った。

徐々にスピードを緩め始め、走る状態から歩くぐらいまでには減速させた。

「ついたか?」

「あぁ。依頼を始めよう。」

集合場所にはもうすでに輸送車両が集合していた。

護衛用のレーダー車両や戦闘用車両を含めればざっと10台はあるだろうか。

『こちら、シェプフング所有の第4採掘場輸送部です。依頼したルーキーで間違いないでしょうか。』

「あぁ。間違いない。」

依頼主からの通信に対してそう返した。

「未だにルーキーだな。通り名がつくのはいつなのかねぇ。」

「すまねぇな。乗り手が不甲斐なくてよ。」

通信を切り、友人にそう返した。

まず、通り名がつくやつがおかしいのだ。

人形使いの傭兵なんてほぼ使い捨ての駒として使われるときもある。

任務成功率、もとり生存率も50%を上回っているやつなんて1割ほどしかないと言われている。

その1割の中でも名が売れたやつだけが通り名を持つ、そんなの俺ができるわけがない。

「まぁ、その通り名つきが来てくれるんだからよ。見て学んでこいよ。」

「できたらな。何もないことが理想だ。」

軽く言葉を交わしていると、聞き慣れた機械人の走行音が響いてきた。

そちらの方に機体の頭部を振り向けると、ゆっくりと機械人がこちらへと歩いてきているのがよく見えた。

「レイ様のお出ましだ。」

…あの機体、かなり珍しいな。

一目でわかる世代機体も珍しいが、いわゆる、第5世代型だろう。

機体安定技術が飛躍的に進歩した第5世代型ではかなりの軽量化が図られている。

それまでの機体は機体安定の観点から脚部がどうしても太くなり、機動力を引き上げることが困難だったわけだが、この世代はそれを見事に克服してみせたわけだ。

そうして、機体の軽量化と共に人の命の軽量化まで成功した。

極限まで装甲を削り、最終的に残ったのは皮膚のような薄っぺらい鉄板だけだった。

そのかわり、どんな機体よりも高機動を実現したのだが、結局は人命軽視の設計は批判が多く、使用者は少ない。

そんな第5世代型だが、レイの機体はかなり過激な装甲だった。

いや、装甲なんてなかった。腕や足の駆動部分のパーツが完全に露出し、胴体はモータークヴェレ以外は完全に覆われていた。

機械人のライフル一発、いやそこにいる戦闘用車両の機関砲一発喰らうだけでそれなりのダメージになるだろう。

そう思うほど、その機体は、人命は軽いように見えた。

『君が今回の僚機か。よろしく頼む。』

その機体に正気を疑うような気持ちを向けていると、そのレイ本人が声をかけてきた。

「レイか。よろしく頼む。」

流石に気が狂ってるのではないかと思う相手とはいえ、声をかけられれば返すぐらいはしよう。

『射撃は当たらなければなんてことはないのでな。それに、戦闘はすぐに終わらせる。なら、この機体でも大丈夫だ。』

「あ、あぁ。そうか。」

なんだこいつ。心を見透かしてきたのか?

それに、この自信。射撃は当たらなければなんてことはない、なんて言葉は到底同じ死のある人間から放たれるとは到底思えなかった。

逆にこれくらいの自信を持たなければ通り名を持つなんてことは不可能なのかもしれない。

『護衛機の到着を確認した。ここから70kmほど先にある我々、シェプフングの研究所へと向かいます。それでは出発しましょう。』

「了解。」

『了解した。』

レイの到着により、元々陣形を取っていた輸送車両団はゆっくりと進み始めた。

輸送車両は一網打尽にされないためかそれなりの間隔を開けながら三角形のような陣形を取りながらまっすぐ進んでいた。

その陣形の横に俺ら二機がついて、速度を合わせながら進み続けた。

70kmなんて機械人からすれば走れば2時間ほどで到着するが、一度にたくさんのものを一つでも多く運び込むために輸送車両に合わせながら行くので4〜5時間ほどかかると言われている。

そんなことを思い出しながらあるき続ける。

時折、自機に搭載されているレーダーを確認し、安全を確認する。もちろんレーダー車両のほうが探知範囲も違うし精度もいいが、自分の目で見ていないものなんて信用できるわけがない。それに、レーダーに引っかからない機体がくるかもだしな。

といっても、こんなよくある輸送任務に燃費の悪い極速機なんて投入しないし、ましてや運用コストも撃墜されたときのコストも桁違いの超ステルス機なんてくるはずがない。

攻撃に来ても雇われの使い捨て傭兵共の重装車両が来る程度だ。競合の金に余裕があって機械人一機くるかどうか。

なら、そうも気負わなくて大丈夫だろう。

そう思いながら、外の景色に目を配る。

電気も殆どない、本当に道なのかわからないほどの場所でやはり俺らはあるき続けている。

空は雲に覆い隠されているからか、外は暗闇に包まれ、車両のヘッドライトだけが光り輝いていた。

機械人にはアイカメラにライトがついているので、ライトが光り輝くことはない。

それこそが、機械人だ。

そう思った時、空から光が漏れた。

雲が月から離れたらしい。

黄金色が世界に降り注ぎ、暗闇に包まれた世界に一筋のメスを入れたようだった。

いつもなら、綺麗だなと余韻にひたり、想いを馳せたりするんだが、今はそんな余裕はない。

静かな世界はいつもはつまらないと感じるが、今はそれがありがたい。いつまでも続けばいいのにと思う。

都合の良いことだ。

そんなことに想いを馳せ、頭を回しながら機械人をあるき続けさせた。

思えば30kmの道のりを進みきった。何もなく、ただただ暗闇が続き、時折月の光が差し込むだけの時間が続いた。

静かな世界。それは今はとても良い世界だ。

そう、思っていたんだが。

『機械人に伝達!進行方向、5km程先に機械人三機をレーダーに捉えた!迎撃準備!我々は速度を落とし、陣形を広く取る。』

「ッ!了解。」

『了解した。』

「お前ぐらいだぜ。焦ってんのは。」

「うるせぇ。」

友人の軽口に返答し、操縦レバーを強く握り込む。大体、来るはずがないと思っていた機械人が3機も来たんだから焦りもするだろう。

右手で握ったライフルのストックを離し、地面へと置く。

背面にある格納部を開き、中に入れ込まれた長銃身の遠距離型ライフルを飛び出させる。

ガッチリとアームによって固定されたそのライフルを右手でグリップを握りながら取り出す。

アームがガチリという作動音を出しながらライフルを離し、右手に託した。

左手でライフル銃身下部のハンドガードを握り込み、頑丈なストックを肩へとしっかりと張り付かせ、ライフルを構える。

「こっちで援護する。そっちはそっちのやり方でやってくれ。」

『了解。近づいて殺してやろう。』

半ば冗談の指示だったんだが、それで通ってしまうのが怖い。

さっきの通信が終わった瞬間にそいつはすぐに折れてしまいそうに細い足で地面を蹴り上げ、右手のライフルを構えながら突撃した。

どういう戦闘スタイルなのかもわからないが、援護すると言った以上、できる限りのことはしよう。

足を少し開き、人間で言うふくらはぎの後ろの部分から第3、第4の小さな足を出してこの機体を更に安定させる。

機体の射撃モニターを拡大し、こちらから見て左に見える第3世代型と見える分厚い装甲を持った機体へとセレクトする。

「くるぶしよりも下に重心移動用の重りを移動させた。いつでも撃てる。」

「サンキュー!」

狙撃支援システム起動。機体操縦システムとのリンク開始。

ライフル内のエネルギー循環も開始。弾丸装填完了。セーフティー解除。

最終射撃準備完了。

「てぇ!」

友人の掛け声を合図に引き金においた指をトリガーセーフティーごと押し込んだ。

機体越しでも聞こえるほどの銃声が静かな世界を一時的に世界を支配し、銃弾は銃身を通り、猛烈な勢いで回転しながら、空気を穿ちながら敵機体へとまっすぐ吸い込まれるように飛んだ。

弾丸は、5kmという距離は誤差とでも言いたげに瞬きのうちに走り抜け、機械人の中では圧倒的な装甲を誇る第三世代と見える機体へと進んだ。

そして、その機体は予想外の行動へと出た。

クイックステテップと呼ばれる、素早く横へと飛び、砲弾を避ける技を行った。

第三世代はその重量からクイックステップはほぼほぼ不可能であり、できても多大なGが搭乗者へとかかる。

そのため、本来ありえないはずなのだが、この機体はそんなことは知らんとばかりに行った。

だが、やはり重量機であり、クイックステップのスピードは到底クイックは言えず、左腹部を俺の放った弾丸に撃ち抜かれ、急に来た衝撃にしたがい、後ろへと倒れ込んだ。

有人であれば、正気の沙汰ではない。たとえ避けれたとしてもある程度抑えられたとはいえ高負荷なGを全身に受け、内臓がぐちゃぐちゃになって死ぬだろう。

拡大した画面に、機体が撃ち抜かれた場所からドロドロと黒い油が漏れ出し、茶色い大地を暗闇と同じ色に染め上げていく様子が映し出される。

大量の機械パーツに、まだ残っている塗装の剥げたボロボロの本体が見える。

だが、コックピットが見えなかった。

本来最も分厚い装甲によって守られている、機体が爆発しない限り外装だけは保っているコックピットだけがその機体からは露出して見えなかった。

「不思議な機体だな。」

「あぁ、そうだな。…次行くぞ。解析は企業の役目だ。」

友人へと返答し、今やるべきことに目を向ける。

長距離ライフルはまだ銃身上部の空気取り入れ口を開け、冷却中だ。それにエネルギーも今撃てば枯渇してしまう。

長距離ライフルを背中のアームへと再度任せ、機体内部へと格納する。

地面へと置かれたライフルのグリップを握りこみ、敵機体へとカメラを向ける。

「流石はレイ…ってところだな。感服だ。」

友人の軽口通り、流石はレイと言えるだろう。

片方の第四世代型と思われるバランス型の機体は中央に大穴を開けられ、地面へと倒れ込み、大穴から黒い油を出し、灰色の機体を黒色へと変色させていた。

もう片方の第二世代型と思われる遠距離型の機体は各所に穴を開けられ、右腕を引きちぎられ、随所からもう片方と同じように油を吹き出しながら、機体の上に立つレイの機体を黒く染めていた。

おそらく、レイの左腕のパイルバンカーで開けられたのが第四世代、右腕のライフルを受け、倒れ込んだところで引きちぎられたのが第二世代…といったところか。

『終わったようだな。こちらもクリアだ。』

「あ、ありがとうございます…。」

「おいおい、こっちは一機しかやってないぜ?」

規格外だ。こっちが一機やっている間に二機もやりやがった。

それも、一発の弾丸も食らった様子も見えずに。

レイのパイルバンカーの先端からはドロドロと黒い油がたれ続け、大地をじわじわと変色させていた。

これが、人形使いトップと呼ばれる通り名つきの実力か…。

『機械人の皆さん、お疲れ様でした…。特にレイさん、流石はトップだ。』

『いや、そこのルーキーがいなければ三機を一機で相手する必要があった。』

「よかったな。褒めてもらえてるぞ。」

こいつ、本当になんていうやつだ。

化け物。それがふさわしい表現だ。

『そうですか。それは失礼。では、続けましょう。』

失礼と入っているが、俺に対してのお褒めの言葉はないようだ。

まぁ、もらえるとも思ってはいないが。

機体を操作し、車両と並走を再開した。

だがそれでも、この目に映らなかったコックピットが不思議でならなかった。




この長い長い任務も終わり。

『お疲れ様でした。想定外の戦力にも対処していただき、ありがとうございます。』

責任者の声を合図に、任務は終わりを迎えた。

「疲れた〜!!」

「ほとんどレイがやっただろ。」

「それでも、一機やったぞ?」

そう。機械人一機をやるというのはそれなりの戦果だ。あちらはこちらへ近づかなければならないというのはアドバンテージかもしれないがそれでも勝ちは勝ちだ。

「まっ、帰るか。」

「そうだな。」

友人とそう言葉をかわし、機体を帰る方向へと向けた。

『ルーキー。』

だが、それを遮る声が聞こえてきた。

俺はそれに機体を振り向かせるだけで答える。

『君は、なかなかにやるようだな。』

「…そうでもない。ただライフルを一発撃っただけだ。」

『そうだがな。第五世代型の苦手な第三世代を狙ったな?』

「普通でしょう。」

『そうだがな、普通の傭兵は確実に撃破できる第二世代を狙う。一撃で確実に撃破できる装甲だからな。』

「そうだな。だが、俺は馬鹿だからな。お前の苦手なやつを殺してやろうと狙っただけだ。」

『そうか…。まぁ、いい。』

レイはそう行って引き下がった。

まぁ、俺には信用できる狙撃支援者が一緒に乗ってるからな。

といっても、これからの依頼成功のためにも言うわけには行かない。

「帰ろうぜ。」

「あぁ。そうだな。」

再度言葉をかわし、ヤブ医者のもとまで戻った。




機体を格納庫前まで動かし、ヤブ医者へと信号を送る。

そうすると、格納庫の扉がギギギときしんだ音を鳴らしながら上へと上がり始める。

中へと少し入り、機体を設置する場所へと調節する。

『依頼、お疲れ様だ。金は払ってもらうぞ。』

「踏み倒すわけがないだろう。」

機体を設置場所に置くと、地面が回転し、機体が外を向く。

カタパルトが機体を後ろへと移動させ、その場へと固定する。

コックピットの後部が開き、コックピットが後ろへと移動し、ゆっくりと機体の外へと出た。

「ふぅ。」

格納庫から通路へと出ると、ドアが閉じ、機体の赤く光り輝いていたランプが消灯した。

「おやすみ。友人。」

そう言い、自室へと戻り、その後バーへと向かった。

読んでくださりありがとうございます。評価等お願いします。

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