第七話:踏み込む
さて、現在の俺の想いを話そうと思う。
バイト先へ来た七瀬、まだいい。
先生から伝わったのであろうことは分かっているから。
優子さんに俺の目的を知られた。
それもいい。
一番の問題。それは、七瀬が俺の家の玄関の前にいる事だ。
「何やってるんだ?」
「…。待ってたの」
それは見ればわかる。
それならば何故一緒に帰るという選択肢を取らなかったのかが、問題なのだ。
やはり分からない奴だ。
「…まあいいか。いやよくない。
前々から聞こうと思っていたんだ。
お前、親はどうした?
一度も話に出てこないし、お前は朝にはいない。
つまり帰っているんだろう?
俺としても少し心配だ」
では、現在の七瀬は何を考えているのか。
親の話を聞かれた。
踏み込まれた。それはまあいい。
気まずいことではあるがそれはいい。
ちょっと肌寒いからくっつきたいけれど世一が話し始めてしまったからくっつけないところとかも、それもいい。
だが、心配されている!
そうだ!大好きな彼が私を心配してくれているのだ!
舞い上がって体温が上がってしまうのは、自然の摂理である!
「あ、すまん。家に入ってから聞けばよかったな。
今まで、何となくで過ごしてきたからな。
俺がいるバイトまで来たのなら話は別だ。
健全じゃないしな」
踏み込み過ぎであるが、そもそも七瀬は世一に踏み込み過ぎている。
では真の誠実とは?
それはこの踏み込みを許すか許さないかで許容値が変わってしまうこの状況を作り出しても、この問題を咎めることができないという七瀬の態度を指摘しても許されるということではないだろうか。
七瀬を中に引き入れ、ホットココアを入れて、七瀬の元へ。
いつもならばすかさず膝へとやって来るが、今回ばかりは真剣な話なのだろう。
そもそも話すという事柄をあまりしてこなかった。
それは七瀬の家庭環境にあるのでは?という俺の予想は、この状況から見て、当たっている可能性が高いだろう。
俺はココアを飲んでいる七瀬が、会話を始めるまで待つ。
待つのには慣れているからな。




