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300年前の高校生、人工少女と。  作者: 佐倉じゅうがつ


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第16話 事件発生!

 ミナシノ……アノヨロシと同期のニューリアン。つまり同じ歳だと考えていいはずだ。しかしどうだろう、落ち着いた表情のせいか大人びた印象を受けた。俺よりもひとつかふたつ、年上の先輩と言っても通じるだろう。


「あなたがアタシの購入者?」

「は、はい! おっしゃる通りです!」


 ああ、定型文な話しかたになっちゃったよ!


 彼女の赤髪と金色の目はきらめくようで、すごく印象的だ。海軍にありそうな白い制服によく映える。

 けれど、けれど――!

 もういい? ちょっとくらい見てもいいよね? 視線を下におとすよ? ちょっとだけね?


(……)


 男・芹沢星司、高校生。とうぜん『女性』というものに興味がある。

 ドキドキしながらグラビア雑誌をひらいたのは、11歳のときだった。あれから数年……何とは言わないけど、より刺激の強いものだって手にしたことがある。


 そのすべてが過去のものとなった。『もぎたて』『スイカ』……魅惑的だったワードの数々が、今ではまるでむなしい。


 俺がいままで見てきたものは、一体なんだったんだ?

 ミナシノは『すごい女の子』だった!


「ねえ、あなたはどうして――」

「うわーーーーーーん!」


 背中にはりついていたアノヨロシが前に飛びだしてきた。


「ミーナ、やっと会えたよーー!!」

「……! もしかして……アーノ? 生きて……廃棄って、聞いた……」


 抱き合ってよろこぶふたり。ミナシノのほうが背が高くて、なんだか姉妹のようにも見える。顔をくしゃくしゃにして泣くアノヨロシにつられて、俺も鼻をすすった。


(よかったな……!)



「アーノ。ほら、いつまでも泣いてたら……ふふっ、困ったな……」

「グスッ……」



***



 アノヨロシがおちついた後、俺たちがここまできた経緯をミナシノに話した。


「300年前の日本人がアーノを拾った……すごい出会いだったんだね……」

「拾ったというか、まあ開けてびっくりだったよ」

「丸出しでしたもんね!」

「つづきは拠点にもどってからにしよう!」



 もともと早く建物からでたくて退席したんだもんね!

 俺は足早に廊下へとくりだした。すると拍手の音がきこえてくる……メインホールでは、指名順位の発表がつづいているようだ。


「まって。様子がおかしい」

 肩をつかまれた。ミナシノだ。『なにが?』とたずねる前に、自分でも理解できた。拍手をたたきつぶすような爆発音と悲鳴があがったからだ。



 パァン!


『ウアアアアァァァァァ!!』

『選択指名31位、平和局』

『ダレカ!』

『選択指名32位、ジョージ・カーシュナー市長』

『タスケ――』

『選択指名33位、ジョージ・カーシュナー市長』

『ヤメロォォォォ!!』

『選択指名34位、ジョージ・カーシュナー市長』




「……ふたりとも、こっちだ!」


 来た方向とは逆……廊下のつきあたりにむかって走る。


「非常口!」


 金属製の扉を押しあけ、落下するように階段をおりていく。緊張と恐怖、そして生き延びようとする意志が俺の足を動かした。

 1F。出口にとびだすと重たいモノにぶつかってしまった。目の前には大きな背中……覆面をかぶった、男……?


「ってぇ、いったいなん――」

 影。上からだった。それがミナシノだとわかったとき、男はくずれ落ちていた。


「ケガはない?」

「う、うん……ありがとう」


「オーナー、ここって……」

「駐車場だ……!」


 非常口というものは入り口から離れた位置にあることが多いと思う。ついてるぞ……俺たちの車がすぐそこにある!



「乗ってくれ!」



 運転席に俺、後部座席にアノヨロシとミナシノが座る。おもいきりアクセルを踏んだ。駐車場のせまい通路をかけぬける。



「キミ、正面ゲートは避けて。銃声が聞こえる」


 ミナシノが冷静に状況を教えてくれる。俺はハンドルを切りながらうなずいた。


「銃声……アノヨロシと会ったときを思いだすな」

「今回も生きのびましょう、オーナー!」

「もちろん!」


 会場正面のほかに道路はない。ならば――。



「よし……花壇のうえを突破するぞ、つかまれ!」


 ドリフトさせながら方向転換、スピードを落とさず突っ込む!


「段差がたかすぎませんか!?」

「忘れたのか? こいつはオフロード車、荒い地面なんて……なんのそのだぁぁぁぁぁぁ!!」


 ドゴン! グワッ! 車体が大きくはねる。力強く、道をきりひらく。

「よし越えた、飛ばすぞ!」

 再度ハンドルをきって車道にでた。とにかく会場から離れなければ!



「オーナー、車が追ってきます、数は1台!」

「武装してる。撃ってくるよ!」


 バン!

 後方から金属をするどく叩くような音!


「きゃあ!」

「ホントに撃ってきた!? シティのど真ん中なんだぞ!?」


 まるで映画に出てくるカーチェイスだ。


「くっ……まさか現実でも銃撃の中で運転することになるなんて!」


 当時のVRゲームを思い出す。味方の輸送と救援のため、装甲車を乗りまわしていたものだ。

 今度も逃げきる、または平和局がくるまで持ちこたえてみせる。



 購入会に来るまで1か月の時間があった。この時代の治安を考慮して、襲われても切り抜けられるよう準備はしていた。

 宇宙船に積まれていた本や資材をつかい、インスタントな防弾補強を車に施した。そして、気がすすまないながらも自衛用の武器を積んだ。そう……銃器が後部座席にある。



 バン、バン!

「被弾!」

「……銃、あるんだね。ハンドガンを使ってもいい?」


 エンジン音と銃声のなかで、ミナシノが声をかけてきた。こんな状況なのに、動揺がまったく感じられない。


「いいよ、でも相手は武装してるんだろ、気をつけ――」



 パン。



 ドォン……!



 爆発音。

 バックミラーに目をやると、赤い炎と黒い煙がぐんぐんと遠ざかっていくのが見えた。


「まさか……仕留めたの? 今の一発で!?」

「うん。銃、貸してくれてありがとう」

「やったあ、さすがミーナ!」



(相手は……きっと死んだんだろうな……)

 ハンドルをにぎる手がかすかに震える。振りかえりたい衝動をおさえて走り続けるのが精いっぱいだった。




 そのとき、胸ポケットに入れてあったVグラスから『着信』をしめすアラームが鳴った。




挿絵(By みてみん)

つづく


ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

作品への応援をいただけましたら大変はげみとなります。


今後ともよろしくお願いします。

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