21ー1 誕生おめでとう、モンスター!
「ほんじゃあ、奥義を教えよう」
よしよし、みんなこっちを見とるわ。やっぱチカラが欲しいんやな。俺って魅力的やもんな。
よーし、全員揃ってモンスターにしちゃろう!
「あ、忘れとったわ。今回モンスター化できる人数は3人までって決まっとるんやった。話し合いで決めてもらわないかんね。人間やめたいひとぉ。手ぇ挙げて!」
挙げたのはー、4人か。大吉ハナマルさんと清水ナギさんと如月ユーキさんと佐々木サキさんね。うち一人は無理やな。
自衛官からはおらんか。安心半分、失望半分やな。勅命で死ぬのは嫌か。
「ほんじゃあ大吉さんと如月さんと佐々木さんの三人がモンスター化決定! 清水さんは残念ながら落選となりまーす」
「落選してる! 話し合いが無いじゃん! なんでウチはダメなの!?」
「清水さんはすでに2回も死んだやんか。3回死ぬとほぼ蘇らないんだぜ。貼ったり剥がしたりするとシールの粘着力がなくなるやんか。
魂もおんなじや。清水さんの魂はすでにボロボロなんよ。死なずにモンスター化できたら可能性あるけども」
「ウチが死ななきゃいいわけね!」
確かにそうなんやけどな。魔石との適合条件が厳しすぎてなぁ。運良く、ある意味で運悪く俺は当てはまったけど。普通に生きてたら適合するの無理やしな。魔石については未だに謎多いし。
「死ぬぜ」
「死なないし」
「じゃあわかった。そこまで言うなら正直に手ぇ挙げろ。他の三人もやぞ。第1問、性行為したことある人は手ぇ挙げろ!」
手を挙げたのは2人。大吉さんと如月さん。
「かーっ、今どきの子は! 無責任にやってんのな! はいはい。おめぇら2人は死亡確定でーす。モンスター化は成功させちゃるけど、何が起きるかわかんねぇぜ」
あー、疑ってんな。ロロくん疑ってんな。ちんちんを出し入れした程度で変わるわけないと思ってんな。俺もそう思う。でもこれは脳みその問題やからな。脳内物質の問題や。
「第2問! 全身麻酔したことある人は手ぇ挙げろ!」
清水さんと佐々木さんどっちもクリアか。意外やな。全身麻酔したことがある人なんて珍しいのに。
「第3問! うつ病の薬を飲んでた人は手ぇ挙げろ!」
挙手してるのは佐々木さんだけ。
残念ながら清水さん落選!
「清水さんは確実に死ぬぜ。まだまだ細かい条件あるけど、大きな3問をクリアした佐々木さんはもしかしたら心肺停止で留まるかもしれんぜ」
「え、最低でも心肺停止なんですか?」
「心肺停止か死や」
「んー! 最悪の2択!」
「いひひひ、良いツッコミやな清水さん。死なずに変化できる方法を見つけたら一番に教えちゃるわ」
落ち込む清水さんの頭を触手でポンポンしてやると「うん」と頷いた。ちょろいな。追加の試験台ゲットだぜ!
「脳死する前に心肺停止から自力で復活できたら、俺みたいに魔石を取り続けられるぜ。残念ながら俺しか例がねえけど」
自力復活の条件と手順さえ掴んで情報を広めれば、後々俺と同じタイプの奴が出てきてくれるだろうけどさ。国外から強者が出るのはお上が許さねぇからモンスター化の研究が進まないのよ。
「大吉さんと如月さん。そんな暗い顔すんな。安心しろって。死んでも生き返るんやぞ。俺みたいにはなれなくても2回までなら安心して死ねるんだぜ!」
簡単に初体験しちまった自分自身を恨むんやな!
離婚したのに俺は童貞なんやぞ。ちくしょう。
公的には結婚してないことになってるけども。証明するものはないけども。
事実婚でも離婚は離婚じゃ!
「ってことで、はじめるぜ。まずはこの魔石を食ってみ。ただの魔石じゃねえぞ。この機会しか摂取できないなら最高の質がよかろうもん」
なんやその顔。嫌なんか? まあ、これまでもみんなそんな顔してたしな。期待してたけど佐々木さんもダメそうだぜ。美味しそうなのにな。
「食べた途端には死なねえから安心してええぞ。8時間後くらいに魔石の適合が始まるから、それまでに自分の変身後の姿をしっかりイメージするんや。イメージできない奴はひとつに絞るとええぞ」
「オレ、ケーちゃんさんに言われた通りちゃんとやってきましたよ!」
奥義と関係なくSNSで事前に相談してたもんな。理想の設計図を描いておくとモンスター化がはかどるとアドバイスしただけやけど。既にやってきてるなんて真面目やな。昨日言ったばかりやぞ。
「おお、イメージ像を描いてきてたんか。どれどれ、文字多いな!」
しかも細かっ! 文字で絵の周りが真っ黒なのよ。
「これイメージできるんか?」
「1年以上前からずっと考えてきたんで!」
「魔石1個じゃ足らんぜ。めっちゃ苦しくなるけど量を増やすしかねえな」
大吉さんの皿には山盛りの魔石を積んでやった。食えるだけ食うのが一番やな。おかわりもあるぜ。
「ハナマルさんばっかズルか! オラにもなんかくれ!」
「ええぞ。如月さんはどんなイメージがあるんや」
「オラは変身ヒーローみたいな感じがよかです。戦うときにゃ姿ば変えて、戦いが終わると日常さ戻るとばい」
「なるほど……甘いな。そんなんできたら真っ先に俺がやっとんのじゃ! 見ろ、この姿! 二度と戻れねえから覚悟しろ!」
「ひい!」
でもできたら面白いから大吉さんと同じ量の魔石を置いてやる。存分に苦しむがいい。
「佐々木さんも要望あるならなんでも言ってええからな。色々教えてあげるよ」
「サキ姉にだけ優しくない!?」
シンパシーを感じるわけ。共通点が多いと嬉しいやんか。優しさをいっぱいあげたい。
「いえ、大丈夫です」
「サキ姉サキ姉!」
佐々木さんに何かを耳打ちする清水さん。ふたりは仲が良いみたいやな。
「ケーさんはあの診断テストをご存知ですよね」
あー、あれね。めっちゃ便利やし、的確よな。あれ誰が作ったんやろうな。悪魔の花嫁なんてまさに的中やんけ。あんな悪魔みたいな嫁は他に知らんぞ。
「知ってるぜ。どんな診断結果やったか、参考のために3人から聞いとこうか」
大吉さんは魔物。望みは叶いそうやな。
如月さんは勇者。変身ヒーローにはなって欲しくないな。グロいモンスターになって欲しいわ。
佐々木さんは火の剣士。非現実的やな。こんな診断結果もあるんか。
「火の剣士か。こんなん大火傷するのに戦えるわけないやんな。なんなんやろうなこのテスト」
「製作者あんたでしょ!!」
間をおかない素晴らしいツッコミやな清水さん。でもズレてんのよ。
「俺じゃねえぜ。こんなん作る知識は俺にないしな」
「いやいやいや! じゃあバスでのアナウンスはなんだったし! 元奥さんのことでしょ!」
「あー、悪魔の花嫁やろ。ひでえヤツよな。人の嫁を罵りやがってな。本当のことやけど」
ん? なんやその顔。キョトンとして。
「え、じゃああの診断テストの製作者はロミ教官?」
「そもそもなんの話か全くわかりません。置いてけぼりであります」
「どちらかが嘘をついているはずです」
「そんな嘘ついてなんの意味があんのや。まあええわ。話を進めようぜ。佐々木さんは診断結果を信じるわけね。それで?」
「教えてください。私に火の剣士の適正はあるんでしょうか」
「そんなの俺が知るか」
しかし突き放すのは可哀想なんで、ざっくりと火を操るモンスターのイメージを伝えてやった。俺が戦ってきたモンスターの中には火を吐く小型モンスターもいるにはいた。その直後に自爆したけど。
あれは最後の手段なんよな。火力に身体が耐えられない。ドラゴンなら当たり前のように使ってくるけど。あれはモンスターとは別格の存在やし。
「というわけで、火を使う剣士なら油か可燃ガスを貯める臓器と火を放つ噴射口をセットで作る必要があるぜ。残念やが耐火性の高い身体は一朝一夕じゃ作れねえ。やるとしたら燃料タンク代わりの臓器に触手を繋げて火炎放射器にするイメージやな」
かなりサイボーグっぽいモンスターになりそうや。
「その案は却下です。8時間のうちに私なりのイメージをまとめます。私にも大量の魔石をお願いできますか?」
「大量に食べたら間違いなく死ぬぜ佐々木さん。俺が用意したのは魔物から摘出した天然の魔石と違って、不純物を完全に取り除いてある魔石やが。そこまでしても魔石は猛毒なんや」
「1個でも死ぬことはあるんですよね」
「せやで。ほぼほぼ死ぬ。でもチャンスやんか。賭けに勝って大成功すりゃ、一生魔石を食べられる体になるんやぞ。体を改造し放題だぜ」
「私はそんなの望まないので大きな賭けはしません」
三人の皿に大盛りの魔石を載せた。ツンとするほど甘くて良い匂いがする。他のみんなは匂いを嫌がって離れた。
今までで一番良い出来の魔石だ。神と神の魔石のハイブリッド。俺の体内から生み出した高純度の魔石。摂取すれば俺自身も強くなれる究極のエコ魔石。人類の歴史を塗り替える永久機関の源。
これから3人は今までの人生におさらばする。せっかくの晴れ舞台だからドンと盛り上げていこう!




