マグロが消えた! *
ミドリアの偽装討伐が発覚してしばらくすると、エリザベスが息を切らせて戻って来た。
「はぁ、はぁ、はあ、港町まで行って来たけど野盗は何処にもいなかった。くそー! タカヤマにもう一度撫でて貰いたかったのに!」
地団太を踏んで悔しがるエリザベス。
俺はそんなエリザベスを抱き抱えると頭を撫でてやった。
「港町まで偵察に行ってくれたのか。よしよし、ありがとうな」
「はうん! 気持いいぞ!」
俺がエリザベスの頭を撫でると喜びながらも不思議そうな顔をする。
「撫でてくれるのは嬉しいんだが、わらわは野盗をやっつけてもないのになんで撫でてくれるんだ?」
「真面目に頑張ってくれたからな。ご褒美だ」
「そ、そうか。もっと頑張るぞ! もう一回偵察に行ってくる!」
「いや、もういいからここでゆっくりしてな」
「でも、それだと撫でて貰えないだろ」
「頭なら、何度だって撫でてやるから。ほれ! なでなで!」
「うっくー! 気持いい!」
「それに今日は頑張ったご褒美に添い寝もしてやるからな」
「ほ、本当か! タカヤマ!」
「ミドリアが譲ってくれるらしい。ミドリアは今日一人で床の上で寝るんだよな? なぁミドリア」
「わ、我が君……そんな……」
「ふふふ! ついにわらわの愛と努力がタカヤマに認められたのだ! 既に飽きられた前妻は離縁してタカヤマの前から去るがいい!」
「爬虫類の分際で何を言い出すんです!」
「いや、俺もエリザベスのいう事には少しだけ支持したいな」
「わ、我が君……わたくしを捨てると言うのですか?」
「嘘つく嫁とか要らないし」
「我が君……」
「これに懲りたら二度と俺に嘘を吐くんじゃないぞ」
「はい……」
落ち込むミドリアをイジメるのは少し可哀想だったが、俺を騙そうとしたんだから二度とそんな気が起こらなくなるまで反省してもらう事にした。
ミドリアはこの世の終わりの様な顔をして落ち込んでたので、二度と俺を騙す事はないだろう。
*
馬車はすぐに港町ポーティアに着いた。
ポーティアでマグロの仕入れをしようと漁師のアングラーさんの元に向かう。
ロココさんがマグロの買い付けをしようとしたが、アングラーさんの表情は曇っていた。
「すまねぇ、ロココ。今日は黒鮫の在庫が無いんだ」
「もしかして黒鮫料理の評判を聞いて他の奴が買い占めたのか?」
「いや、そんな事は無い。少なくとも俺のところの黒鮫はロココにしか卸さない」
「じゃあ、どうしてなんだよ?」
「出たんだよ。あいつが?」
「あいつってまさかのあいつか?」
「そうだ。海の魔王が出たんだ。普段この辺りじゃあんまり見かけない鮫や黒鮫がかなりの数揚ってておかしいとは思ってたんだが、魔王に大洋の漁場を追い出されてこの港近くの漁場まで逃げて来てたんだな」
海の魔王ってなんだ?
エリザベス以外にも魔王が居るのか?
エリザベスやミドリアみたいなものなのか?
そんなのが漁場で暴れてたらたまったもんじゃないな。
「海の魔王って?」
俺のつぶやきの様な声にロココさんが答えた。
「タカヤマは知らないか。海の魔王とは水龍リバイアサンだ。あいつは何を考えてるのかよく解らないが、漁場を見つけるとめちゃくちゃに荒らすし、下手に手を出すと怒り狂って洪水を呼び起こして港を沈めたりするとんでもない奴なんだ。漁師の中では最悪の悪魔と恐れられている。リバイアサンが出たら奴が去るまでしばらく漁が出来なるんだよ」
「まじか? せっかくマグロが売れ出したと言うのに……早くも売れ筋の商材は終わりかよ!」
「わらわが楽しみにしてたマグロが食べれないのか?」
「そうだ。リバイアサンがこの港に居るうちは食べれない」
「そんな化け物、わらわがたおして、」
「お待ちなさい! 水属性のリバイアサンは火竜のエリザベスさんには相性が悪過ぎますわ! 闇属性のわたくしが倒しますわ! 我が君! わたくしの活躍を見ていて下さい! リバイアサンを倒し我が君の信頼を再び勝ち取ってみせますわ!」
ミドリアは大きな羽根を背に生やすと水龍の暴れる海へと飛んで行った。




