異世界ポテチ4
勝ち誇った表情をして俺の正体を魔王と言い放ったリリィさん。
ちょい待てよ!
なんで魔王なんだよ!
と、脊髄反射で思いっきりツッコミたくなる気持ちを押さえて冷静に分析を始める。
なんでこいつは俺の事を魔王とか言い出したんだ?
ゴブリンの大群をアイテムボックスの中に吸い込む姿を見たらそう見えるかもしれないが、間違いなく辺りには誰も居なかったはず。
ここは冷静にその判断の基準となった物を引き出して誤解を解くしかない。
俺は言葉を選びつつ話し始める。
「なんで、俺が魔王だと思ったんだ?」
リリィさんはドヤ顔で俺に人差し指を突き付ける。
「証拠その1! 魔王センサーが反応してる!」
「なんだよそりゃ! そんなもん聞いた事ないぞ!」
「これだ!」
それはどう見てもダウジングロッド。
日本でかつて流行った針金をL字型に曲げたヤツだ。
そんな物まだ信じてる奴がいるのかよ。
バカかこいつ。
「ほうら反応してる! 見てみろ! お前を指示して針金が動いているぞ!」
確かに俺の方向を向いてプルプルと針金が動いているが……。
俺はリリィさんがダウジングロッドの先を見ている間にそっと位置を移動。
針金は俺が元居た場所を指示し続ける。
「おい! 全然違う位置を向いてるじゃないか! そんな物で俺を魔王呼ばわりしたのか?」
「あ、あれ? おかしいな? な、なんで? 水源探しとか犯人探しに使えるはずなのに?」
「それはオカルトだって検証結果が出てるんだよ。水源は元々水が出そうなとこで出るまで掘ってりゃ出て当たり前、犯人探しは捕まえた後の厳しい取り調べで犯人とされた人がネををあげただけ。つまり冤罪も含まれているんだよ!」
「なんだって!」
「だから俺は魔王じゃない!」
「まだだ! もう一つ証拠が有る!」
「まだあるのかよ」
リリィさんは人差し指をビシッ!と俺に向かって突き立てる!
「証拠その2! ゴブリンを一瞬で葬り去った!」
「俺、そんな事してないぞ?」
捕獲はしたがな。
「ふふふ、タカヤマ。シラを切る気かね? 僕はテキトーに証拠も無しに言ってるんじゃない」
「さっき、オカルトを証拠に俺を魔王と決めつけたじゃないか!」
「ぐぬぬぬ」
「証拠ってあの魔光機とかいうヤツだろ? あれどう見てもゴブリンと俺が映ってるだけで、どこにも倒してるとこは映って無かったぞ」
「ふふふ、甘いなタカヤマ。ちゃんと証人が居るのだよ、証人が!」
「証人て? 見てた奴がいるのか?」
「そうだ!」
まずい!
これはマズイ!
これは俺が真の勇者であることの決定的証拠じゃないか!
「誰なんだよ! そいつは!」
「撮影者だ! 撮影者が居なければ魔光機を使う事は出来ないからな。ふははは!」
うは!
撮影者かよ!
スゲー当たり前過ぎてビックリなんだが!
普通、撮影者とは別人を挙げるだろ?
なんだかもー。
リリィさんはなんかスゲー当たり前のことを凄いドヤ顔で言い出してるよ。
でもおかしいな。
確か俺が索敵スキルを使ってゴブリンの群れを見た時には、辺りにはどこにも人の気配なんて無かったけどなー。
『セットしたのは範囲哨戒のスキルだから動きの無い人や敵対心を持たない人は映りませんよ』
『あ、そうか。そうだよな。でも辺りに人が居た記憶が無いんだよな』
『隠匿スキルを使ってたんですかね』
『マジか! それか! あそこに人が居るなんて思ってなかったから注意深く見て無かったよ。くー、やられたな』
ま、今回は俺の完全な落ち度だな。
うまく誤魔化すしかないだろ。
とりあえず、すっとぼけておくか。
「え? 本当にそんな人居たんですか? 俺が覚えてる限り、俺がゴブリンの巣に行った時は辺りにそんな人影はどこにもなかったけど?」
「ふふふ、甘いよタカヤマ。僕は君がボロを出すのを見越してゴブリンの巣を見て来てくれと言った時からゴブリンの巣の近くに撮影者を潜伏させておいたんだよ」
「そんな時からなのかよ!」
「そうだ! まいったか!」
「隠匿スキル持ちの名うての盗賊でも潜ませてたのか? 気が付かなかったぜ」
「いや、潜んでいたのは僕の父ちゃんだ」
「あのモヒカンマッチョが? あいつ、隠匿スキルなんて持ってたのか?」
「僕の父ちゃんをアイツ呼ばわりするなよ! 確かに隠匿スキルも持って無いダメ親父だけどさ」
「隠匿スキル無しで潜んでたのか? あのガタイじゃすぐ見つかるはずなんだけどな?」
「地面に穴掘って、地面の中から首だけを出して草むらからずっと監視してたんだよ!」
「マジか! ちょっとその姿は想像したくねー。地面からモヒカンだけが覗いてる光景、それは引くわ」
「ふふふ。目的の為なら手段は択ばない父ちゃんだ。母ちゃんを口説き落としたのもシツコイぐらいの粘りだったからな! なのでしっかりと見せて貰ったぞ。タカヤマがゴブリンの大群を炎の一撃で焼き尽くすとこを!」
焼き尽くす?
俺はそんな事した覚えは無いんだが?
きっと見てないな。
うん、絶対見てない。
ゴブリンの大群の撮影は出来たけど、俺がアイテムボックスにゴブリンを捕獲する現場は見て無いはず。
ならば、適当に話を作ればどうにかなるはずだ。
「あ、あれな、これのせいなんだ」
俺はアイテムボックスから取り出したゴブリンポータルを手に取る。
「これは何だ?」
「これはゴブリンを召喚し続ける機械の様だ。これが巣に設置されていたんだが、これをアイテムボックスにしまったらゴブリンも消えたんだ」
「じゃあ、ゴブリンが大量発生したのも突然消えたのもそいつのせいなのか?」
「たぶんそうだ」
「そうなのか……。タカヤマは魔王じゃなかったのか。魔光機の画像をねつ造までしたのに意味なかったな」
「おい、待て! 今なんて言った! ねつ造とか聞こえたんだが?」
「な、何にも言ってない!」
「ねつ造と間違いなく聞こえたんだが! 何をねつ造したんだよ!」
「拡大したのをちょっと。さ、最初の魔光機の画像は本物だったんだぞ!」
「はあ!?」
詰め寄る俺。
リリィさんは俺から目を逸らす。
「ご、ごめんよ。僕、旅の商人から見せて貰ったあの画像がどうしてもタカヤマにしか見えなくてさ、それで2個目の魔光機の画像をねつ造してみたんだ。商人が言ってたのは大津波の様なゴブリンの大群を黒い影が消し去ったって言ってたから……ごめん!」
「俺魔王じゃねーから!」
「うん、魔王じゃないよ」
「父ーちゃんの話は?」
「あれも全部嘘」
「やっぱりな」
あの大柄なモヒカンマッチョが潜伏とか出来そうな気がしないわ。
もう少しうまい嘘つけよ。
「うん、ほんとごめん。ところで、これ動いてない?」
「これって?」
「ゴブリンを呼び出す機械」
「あ、なんか動いてそうだな」
ゴブリンポータルは動き続けていた。
チカチカと光っているゲージらしいものが満タンになると、それと同時にゴブリンを呼び出した。
目の前に召喚されて現れるゴブリン。
リリィさんはゴブリンが暴れ出す前にサクッと処理した。
俺は慌ててポータルをアイテムボックスに収納する。
「タカヤマの言う通りにこれで、ゴブリンの大群を呼び出してたんだね」
「これがゴブリン大量発生の原因だな。リリィさんが設置したんじゃないんだよな?」
「僕はこんなの見るの初めてだよ。ダンジョンの中にはこう言う魔物の召喚機があると聞いた事は有るけど、実際に見るのは初めてだな。誰が設置したんだろう?」
その時!
突然真っ赤な魔法陣が俺の足元に現れた!
魔族の召喚魔法陣だ!
直径10メートルサイズのかなり大きなもの。
教室に現れた魔法陣と同サイズだ。
このままではリリィさんが召喚魔陣に巻き込まれてしまう!
俺はリリィさんを抱き抱えると魔法陣の外に投げ飛ばす。
リリィさんは!?
間に合った!
リリィさんは召喚魔法陣の外だ!
だが俺は魔法陣から逃げ遅れた!
光る魔法陣に飲み込まれ再び俺は召喚されてしまった。




