異世界ポテチ2
ポテチいいね。
さっそく作るか。
材料はジャガイモ、植物油、塩。
これだけだ。
素材がシンプルでいいね。
早速注文と……あ、これも水の時みたいにそのまま出て来そうだな。
塩や油を床にぶちまけたらシャレにならない。
そうだな。先に桶作るか。
『木の棒100本頼む』
『ご注文ですか? ありがとうございます』
目の前にどさどさーと現れて床の上に積み上がる木の棒。
それを片っ端から桶に加工。
桶と言ってもバケツみたいな感じな。
取っ手の付いてる桶だよ。
霊園とかに置いてある杓子と一緒に使う水桶みたなの。
あんな感じの桶さ。
一〇〇本の木の棒から二〇個の桶が出来た。
木の棒五本で桶一個かな?
まあそんなもんだろう。
ではポテチの材料を注文だ。
『塩と油を桶に溢れない程度に入れてくれ』
『ご購入ですね』
『うむ』
『お買い上げありがとうございます』
桶にずざーと注がれる油と塩。
結構な量だが残ったら桶ごとアイテムボックスにいれればいいだけの話だ。
ついでにアイテムボックスからジャガイモを一つの桶に入れて貰った。
桶は水が一〇リットルぐらい入るので段ボール箱ひと箱までとはいかないけど、ジャガイモでも結構な数が入る。
さてと、調理開始するか。
でも、さすがに寝室の部屋で調理するとヤバいかな?
窓一つないからこんなとこで調理したら確実に一酸化炭素中毒コースだよな。
ここでの調理は諦めて外行くか。
でも、大神殿の外で調理なんてしてたら目立つしな。
うーん。
素直に厨房借りるか。
たしか黒マッチョが厨房がどうのこうの言ってたよな。
俺は食材の入った桶を抱えて厨房に向かう事にした。
さすがに桶三つともなると結構な重さだな。
でも俺にとったら大した重さじゃない。
後から考えたら、アイテムボックスに入れたまま運べばいいだけの話だったが。
俺はジャガイモと塩と油の桶を三つ抱えて、厨房を探す。
五分ほど彷徨っていると厨房を見つけた。
薄暗い部屋だ。
石のかまどがいくつも並んで井戸もある。
既に夕食が済んだ後なので調理人は帰った後みたい。
厨房にはテーブルで雑談をしている黒マッチョとメイドさんだけが居た。
メイドさんは以前ホウキとチリトリを部屋に持って来てくれたあのメイドさんだ。
「お、へっぽこ勇者、どうした? なんか注文に来たのか? 残念だったな、今日はもう店じまいだぞ」
なんだよ。
俺、厨房じゃへっぽこ勇者って呼ばれてるの?
ひでーな、おい。
まあ、厨房を借りに来た身だ。
事を荒立てずに話を進めよう。
「すいません。ちょっと厨房を借りに来ました」
「なんだ、食事の注文じゃないのか」
「ジャガイモが手に入ったので、故郷の料理でも作ってみようと思いましてね」
「いいけど、あんまり散らかすなよ。あと、使った後ちゃんと掃除しろよ」
「はい」
俺が桶からジャガイモを出して下ごしらえを始めようとしたらメイドさんが驚いた表情をする。
「うわー! このジャガイモ凄いね。大玉だし、全然傷んでないし! こんなの見た事ないよ!」
「おう、確かに凄いな。どこで買って来たんだよ?」
どうみてもスーパーで売ってる様な普通のジャガイモなんだけど、凄いのか?
さすがにシステムショップで買ったとは言えないので、俺はテキトーに話を合わせる。
「冒険者ギルドのクエストの途中で見つけたんですよ」
「ほう、そうなのか」
俺は早速下ごしらえを始める。
井戸から桶二つに水を張る。
一つ目の桶でジャガイモを洗い、愛用の十徳ナイフでジャガイモを薄切り。
本当は皮を剥いた方がいいんだけど、まな板が見つからなかったので手に持ったまま薄切りする事にした。
すると見ていた黒マッチョがため息をつく。
「あーあ、そんないいジャガイモを細切れにしちゃって何やってるんだよ。もったいない」
「でも、こんな薄切り見た事ないですよ? 透けるぐらい薄いし。わたしにやれって言われても出来そうもないですし。どんな料理が出来るか楽しみです」
「こんな薄切りにしちまって……どうせ煮込んでポテトスープとかにするんだろ? あーあ、もったいねー!」
俺は黒マッチョのため息を無視してひたすら作業を続ける。
もう一つのタライみたいな大きさの桶に張った水の中に極薄切りをしたジャガイモをさらす。
水の中にさらすことで揚げた時に黒くなる原因のデンプンをジャガイモ表面から取り去るので綺麗に揚るんだ。
持って来たジャガイモの八割ぐらいを薄切りにしたら水を張った桶が満杯になったのでそこでやめた。
大体ジャガイモ五〇個ぐらいかな?
結構な数だ。
今度はカマドに火を入れて、鉄製の揚げ鍋に植物油を注ぐ。
しばらくすると油温が上がっていい匂いが辺りに立ち込める。
「なんだろ? 嗅いだ事の無い、いい匂いの油ね」
メイドさんが俺の持って来た油にしきりに感心している。
こっちの世界には植物油は無いのかな?
「そう言われるといい匂いだな。いつも使ってるオークの脂身の油とは明らかに違う匂いだ」
「これは植物から採った油なんですよ」
「植物から油が取れるのか? 嘘だろ、おい!」
黒マッチョはそれを聞いて驚き、目を丸くしていた。
油がいい感じの温度になったので、火を弱め薄切りジャガイモを油の中に投入。
そして一分程度ですぐに揚げ網を使って油から引き上げた。
「もう出来たのか! はえーな!」
「でも、なんかすごくいい匂いがするわ。おいしそうね」
「めっちゃうまそうな匂いだ!」
なんか二人ともいい歳した大人なのによだれを垂らしてて怖い。
おまけにポテチに顔近づけすぎ!
よだれが付くだろ!
黒マッチョのよだれフレーバーポテチとか要らねーから!
次々揚るポテトチップ。
山の様なポテトチップが揚った。
それをアイテムボックスから取り出した新しい桶に入れ軽く塩を振る。
早速試食だ。
ポテチを指先で摘まむ。
見た目は綺麗に揚ってるな。
黄色くていい感じ。
それを口に運ぶと……。
サクリ!
うん!
上出来!
ポテチだよ!
ポテチ!
味も、食感もポテチその物!
すごくいい感じだ!
俺は次々にポテチを揚げる。
桶4個分のポテチが出来上がる。
あまりにも物欲しそうにしている二人にも小皿山盛り1杯分のポテチをあげた。
飛び付く二人。
「うんまー!」
「おいしー!」
「なにこれ? これ本当にジャガイモなのか!」
「ほんのり塩味と、濃厚なジャガイモの味。たまらないわー!」
「サクサク! なんじゃこりゃ! この食感初めてだぞ!」
「こんなもの食べた事ない! 揚げ物なのに全然しつこくない! いくらでも食べれる!」
異世界人にもポテチは大好評だった。
あまりにも美味しかったのか二人とも食べた直後は放心状態だった。
「いやー、薄切りポテトがあんなに美味いもんだとは思わなかった」
「異世界の料理はすごいわね」
「俺さ、おまえがあんないいジャガイモを薄切りし始めたから、料理音痴が何やってるんだと頭抱えてたんだけどな。そんな無駄するなら俺の息子や娘にそのジャガイモ食べさせてやるから寄こせ!と言いたくなったのに、こんなおいしいジャガイモ料理になるとは思わなかったぜ」
「うん、美味しかった。お母さんや妹にも食べさせてあげたいな」
「俺も、息子と娘と嫁にも食わせさせてやりたいぜ」
「じゃ、食わせてやれよ」
「え?」
「ええ??」
俺はポテチ入りの桶を二人にひとつづつやった。
「いいのか?」
「いいの?」
「また作ればいいから、それはやるよ」
「ありがてー!」
「ありがとう!」
二人は涙を流しながら感謝してくれた。
その日から黒マッチョやメイドさんの俺に対する扱いがかなり良くなった気がする。




