冒険者ギルド5
大聖堂には生徒たちが集まっていた。
皆、三日も訓練を続けたせいか自信がみなぎる勇者らしいイイ顔になりつつあった。
そんな中に遊び呆けてた俺が混じると場違い感が半端ない。
大聖堂に来ただけで生徒達からクスクスと笑い声が上がるぐらい。
「噂のEランクが来たぞ」
「ダメ男キター!」
「バカ山だぜ、バカ山」
「相変わらずショボい顔してやがるぜ」
陰口叩くのはいいんだけど、聞こえない様に言ってくれない?
雑魚の戯言って言うのは解ってるんだけど、なんかムカつくんですけど。
この前ランク絡みで俺に絡んできたバカが居たせいか、今回は吉田さんと田中君が気を利かせてくれて俺の横にずっと一緒に居てくれたので絡まれることは無かったが、かえって周りから注目を集めることになって視線が痛い。
大聖堂にはいつの間にかデカい黒板が置かれていて、棒グラフが書かれている。
黒板にはグループメンバーの合計レベルがグラフになって書かれている様だ。
しかもグループ名まで付けられていた。
圧倒的にレベルが高いのはAグループ。
田中君と吉田さんのグループだ。
メンバーは二人だけなのに既に合計レベルが64。
一人あたりレベル32か。
たった三日のレベリングの割には物凄く頑張ってるな。
多分騎士団のトレーナーがダンジョンの深層で二人に代わってモンスターを倒しまくって経験値を二人に流し込むパワーレベリングしたんだと思う。
次に高いのはCグループでレベルが62。
4人のグループだから平均レベルは16ぐらい。
普通の冒険者が死ぬ気でレベリングして3ヶ月ぐらい掛かるレベルだ。
みんなレベル高いね。
このまま頑張って魔王を倒せるぐらいの勇者様になってくれよ。
この前、俺に絡んできた荒川と隅田が在籍するのはDグループ。
レベル18で、平均レベルは4ちょっと。
Bランクの在籍するグループの中では一番低い。
それだけじゃなく全グループを含めた成績の中で下から2番目の成績だ。
ちなみに最下位は俺の所属するグループだ。
Bランク勇者なのにCランク勇者よりもLVが低くて明らかにダメっぽい感じ。
荒川と隅田が足を引っ張っているんだろうな。
この前の威勢良さと違い部屋の隅で背を丸めていてかなり委縮してる感じだ。
吉田さんに連れられて俺も黒板の前に立つ神官にレベル報告。
俺のレベルを神官が見て、目を白黒させる。
「平均レベル4が最低と思ってたら、勇者なのにさらに下の平均レベル2なんて奴がいたのか」
呆気に取られながら黒板に書き込む神官。
俺の所属するJグループは、合計レベル8。
訓練を続けている女の子達のレベルはもう少し上がってるかもしれないが、俺が覚えているのはレアゴブリン倒した時にレベルが2に上がったのを確認しただけなので全員2で報告させて貰った。
憶測や予想でレベルを報告して『実はそこまで到達していませんでした! さーせん!』では問題になるだろうからな。
Jグループの合計レベルを見て荒川と隅田が喜んだのは言うまでもない。
神官が俺のレベルを見て怪訝そうな顔をする。
「Eランクとは言え、少しレベルが低すぎはしないか? サボってまともに訓練しなかったんじゃないのか?」
「すいません。初日に怪我をしてずっと寝込んでました」
「そうか、怪我か。なら仕方ないな。もうすぐコンテストが有るから、怪我の分を取り戻して頑張れよ」
「コンテスト? なんですかそれは?」
「聞いてなかったか。コンテストとは、。あっ王女様が来た。いまからその説明が有るからしっかりと聞いておくんだぞ」
王女は頭を下げると、話し始める。凛と通った聞きやすい声だ。
「みなさん、毎日の訓練お疲れ様です。本日はもう皆さんも耳にしているとは思いますが、コンテストについてお話ししたいと思います。30日の訓練が終わった後に、訓練の総仕上げとしてダンジョン踏破コンテストを予定しています。このコンテストは訓練の成果を見る為に行われるもので、コンテストの結果で新たなグループ別けやランク付けを行おうと思っています。なおコンテストの上位3グループには報酬を用意しています。コンテストの詳しい内容については後ほどお伝えしますが、何か質問等ございますか?」
それを聞いて『ハイ!』と言う大声と共に、気持ちいいぐらいにビシッと手を上げる吉田さん。
その大声にクラストップを独走する勇者様の自信がみなぎっていた。
「その報酬とはどのような物ですか?」
「今実物をお見せしましょう」
その声と共にいくつもの台車に載せられたアイテムが王女の前に運ばれてきた。
装備やアイテム各種が載せられている。
たぶん目玉は鎧。
田中君や吉田さんが今着てる英雄装備だ。
アイテムはスキル宝珠だろう。
「数に限りが有りますが、英雄装備や各種スキル宝珠等を用意してあります。数が限られているので先着順になりますがここに無いものでも私達が出来る事なら極力叶えたいと思います」
ランクBの生徒から手が上がる。
こいつは鹿島だ。
たしかサッカー部所属で運動神経が抜群。
性格も良く女の子達にモテモテだ。
「ランクBの鹿島です。今暮らしてるのが大部屋なのですが、個室に変更してもらう事も出来ますか?」
「もちろん出来ます。それ以外にも食事の変更も出来ますし、休暇を与えるような事も出来ます」
「おー!」とあがる歓声。
個室なんて貰って何をする気なんだろう?
まさか大部屋じゃ出来ないいかがわしい事を女の子とするなんて考えて無いだろうな?
クラスメイト同士、近くの生徒と話し合う囁き声がそこらじゅうから聞こえてくる。
そして次々にされる質問。
「王女様の着てる様なドレスを貰う事は出来ますか?」「できます」
「街の外を旅行してみたいんですがいいですか?」「護衛付きで3日程度よろしいならば、できます」
「戦闘に役立つスキルが欲しいのですが?」「宝珠として用意してあります」
「ユニークスキルの宝珠が欲しいのですが?」「全てでは無いですが用意してあります」
「専属のメイドさんが欲しいのですが」「できます」
「出来る事は何でも」ってそういう事なのか。
本当に何でもして貰えそうだな。
ならば俺を勇者候補から外すなんて事も出来るのかな?
ダメ元で試しに聞いてみるか。
俺も質問してみた。
「ランクEの高山です。俺は低ランクなのでクラスメイトのみんなと比べると役立たずで、この場に居るのが辛いというか場違い感に苛まれています。そこで俺を勇者候補から外してもらうなんて事は出来るでしょうか?」
さすがにこの質問には王女は即答しなかった。
神官のお偉いさんとしばらくの間ヒソヒソ声で話し合い、話を纏めた後に答えた。
「戦力の主力になるランクの方であればそのような報酬はご遠慮願いたいのです」
やはりダメか。
そりゃ、召喚したのに解放とかあり得ないよな。
だが王女は一声飲んだ後、続けた。
「ただ、主戦力とならないCランク以下であれば極力希望に沿いたいと思います」
え?
うそ?
まじ?
勇者から外して貰えるのか!
マジかよ!
マジで勇者から解放して貰えるのかよ!
これで迷宮幽閉ルートから完全に回避!
最悪の運命ルートから逃げられるじゃないか!
一気にテンション上がって来たぜ!
絶対ダンジョン踏破コンテストで勝ってやる!
俺はそう心に決めた。




