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クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱の商人に偽装中です。  作者: かわち乃梵天丸
第一部 クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱ランクの商人に偽装しました。
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ダンジョン踏破コンテスト3 *

 一斉にダンジョンの入り口に入るべくゼロ層になだれ込む生徒達。


 皆、第一層への入り口を目指す!

 

「いそげー!」


「一層への降り口は狭いから、先に降りるんだ!」


「渋滞に巻き込まれて団子状態になると降りるのに時間掛かるぞ!」


「ここで一気に集団から抜け出して差をつけるんだ!」

 

 それを見ていた者達がいる。


 監視員だ。


 大講堂で巨大モニター越しにコンテストの様子を見ている者達だ。


 参加者がルールに乗っ取って進行しているのを見るのと同時に、才能を持つ新たな人材をスカウトする為に監視していた。監視員達は国でも有名な者達であった。

 

 勇者育成師団団長 ガウス・クエイク。

 王宮政務文官 マルス・ブリーズ。

 第二騎士団団長 ロック・ブラッド。

 第二魔導師団 サイラ・バースト。

 

 その他にも国の内政や軍事に携(たずさ)わる幹部クラスが一〇人程集結していた。


 司会役のマルス・ブリーズがモニターを見ながら進行をする。

 

「これは物凄い事になりましたね。いきなり全員が、人とは思えない速度で猛ダッシュを始めました!」


「その中に、頭一つ抜け出した集団が有るな」


「あれはカシマグループですな。【迅速】スキルと呼ばれる高速移動のスキルの宝珠をグループ全員が手に入れた様です」

 

 *

 

 鹿嶋グループは爆走をした。


 鹿嶋が迅速での高速走行をしながら得意げにグループメンバーに話す。

 

「どうだい? 俺の作戦は? 【迅速】による速度はこのような競争では最大の武器だ!」


「鹿嶋さんすげーっす! さすが知将っす!」


「そうだろ! そうだろ! 俺はこの知略でサッカー部を地区大会の優勝にまで導いたんだ! 今回のダンジョン踏破コンテストも俺が優勝をかっさらってやるよ!」


「ちなみに、サッカー部の時の知略はどんな作戦だったんですか?」


「相手チームにハニートラップを仕掛けたんだ!」


「すげー知将っす! どんなエロい罠なんだろ?」


「それはな、試合前日に相手チームのキャプテンの家に女の子を差し向けてやったんだ。抱きついて、次の試合に勝ったら付き合ってあげるって迫ってな!」


「マジっすか? それでしっぽりした事して、試合本番で疲れちゃって勝てなかったんですね」


「何も無かったけどな」


「えっ? じゃあどうして勝てたんです?」


「ハニートラップは失敗したけど、試合の日に相手のキャプテンが俺の顔見たらビビッて顔を真っ青にして体調不良で退場したな。きっといかがわしい事をしようとした事が俺にバレたと思ってビビったんだろう。ぶははは!」


「鹿嶋さん、ひでぇっす! そんな事されたら絶対に勝つ気無くなりますわ! ちなみにその女の子は何処から連れて来たんですか?」


「俺の女装だ。これでもなかなかいけるんだぜ。後で見せてやるよ、ぶははは!」


「あーなるほど、そりゃ酷いっす。鹿嶋さんに付きまとわれるなら絶対に試合で勝つ気無くなりますわ」


「いや、纏わり付くのは俺じゃなくておネェだよ?」


「鹿嶋さんが女装したおネェでしょ? それ絶対に鹿嶋さんの女装だとバレてますよ」


「マジかぁ?」


「今頃、地区ブロックで話題になってるかもしれませんよ。うちの学校のキャプテンはおネェだってね」


「マジかよ!!!」

 

 鹿嶋の叫び声がトンネルの中に響いた。

 

 *

 

 先頭の方で雄たけびが上がった。


 だが、最後尾の俺達からは何が起こっているのかはうかがい知れない。


 俺はシステムちゃんに聞いてみた。

 

『この行列の先頭で何が起こってるんだ?』


『一層への出口を目指してみなさん全力で走っています。鹿嶋君のグループが先頭ですね。たぶんこの速度はグループ全員が【迅速】スキルを使っています』


『嘘だろ! グループ全員が迅速持ちかよ!』


『既に先頭は150メトル地点まで到達しています』

 

 俺はシステムちゃんからの報告を受けて焦っていた。


 まさかノーマークの鹿嶋グループが先頭を取るなんて思いもしていなかったからだ。

 

「まいったな」


「どうしたのよ?」


 俺が独り言の様につぶやくと石川が心配そうに聞いてきた。

 

「トップは田中君のグループでは無く鹿嶋グループだ」


「なによそれ!?」


「皆、俺達の予想以上に強いのかもしれない」


「じゃあ、私達も本気出すわよ! プランBで行くわ。プランBで!」


「プランBってなんだよ?」


「本気モードよ!」


「マジか? 本当にアレやるのか?」


「やるわよ! わたし達は負ける訳にはいかないの。だから手段は選ばないの! ここでやらなければ、いつやるのよ! さあ、いくわよ!」


 手足にミドリア特製の靴を嵌めて壁走りを始める俺達。


 この靴はミドリアがクララに作らせた靴で、加速度が掛かっていれば壁から落ちることのない優れものの蜘蛛の糸で出来た靴だ。


 団子状態のクラスメイトの頭上を一気に走り抜け先頭へと躍り出た!

 

「今よ! 高山、思いっきりいきなさい!」

 

 俺は鹿嶋グループの三十メトル先を目掛けて巨大な水入りの水槽をいくつも落とす。

 

 バリケードだ!


 縦横高さ一メトルの立方体のバリケード。


 それが百個以上無造作に積み上げられ通路を完全に封鎖した。


 それを見て上がる怒声!

 

「きったねーぞ! 高山!」


「何で通路を封鎖する!」


「このクズ野郎が!」

 

 一抜けを阻まれた鹿嶋グループから呪いの言葉が次々に投げかけられる。


 足止めを食らって怒り狂う鹿嶋達。

 

「くっそ! なんて物を落としやがる!」

 

 でも、妨害はこれで終わらない。


 他の生徒達が鹿嶋に追いついた所で、石川が合図をする。

 

「香川ちゃん、長野さん! 行くわよ!」


「はい!」


「はいですぅ!」

 

 水の入った水槽に次々に投げ込まれる炎結晶。


 水は一瞬に熱湯へと変わり、爆発的な勢いで膨れ上がる!


 エリザベスが以前風呂屋前の噴水で見せた水蒸気爆発!


 それが同時に数十の水槽で起こった!

 

 ──どごーん!

 

 吹き飛ぶ木箱! 吹き飛ぶ熱湯! 辺りは騒然とした!

 

「あちちち!」


「なにしやがる、高山!」


「なんてひどい事する奴等なんだ!」


「サイテーだな! 高山!」


 ちょいまてよ!


 なんで俺だけ罵られる?


 これ俺の考えた作戦じゃねーし!


 作戦立案、実行とも石川だし!


 俺知らねーし!


 俺止めたし!


 そんな俺の気も知らずに石川が吠える!

 

「ふふふ! わたし達の妨害はまだまだこれからよ!」

 

 石川はアイテムバッグの中から新たな結晶を取り出す。

 

「熱かったでしょう? 次は氷結晶よ! 少し冷やしてあげるわ!」

 

 床にまき散らしたお湯に石川達は小粒の氷結晶を投げる。


 すると今まで湯気だったものが急激に冷やされ霧と変わり視界が真っ白に変色する。


 もう目の前も見えないぐらいの霧の濃さだ。

 

「どわー! 前が見えねー!」


「目がー! 目がー!」


「あの糞野郎は何しやがるんだ!」


「糞野郎! 高山!」

 

 それ考えたの俺じゃねーって。


 やったのも俺じゃねーって!


 犯人は石川です。


 クラスメイト達は次々に視界を失い、走って来た後続が先頭とぶつかり転倒をする。


 辺りはパニック状態だ。

 

 *

 

 監視員達は騒(ざわ)めいていた。

 

「なんて酷い事をする連中なんでしょうか?」


「この戦いを見て私は思いました。魔王相手に戦うのならばこのぐらいの非道さと、勝ちへのこだわりは必要なのかもしれないと」


「なるほど、そう言われてみるとそうですね」


「我々は騎士道を芸術にまで昇華してしまった為、綺麗事ばかりにこだわってしまい勝つ為の貪欲さを欠如していたのかもしれません。このような者達は魔王討伐に是非とも必要な人材だと思われます」


「ふむ、なるほど」

 

 勇者を辞める為に頑張っている石川達で有ったが、逆に騎士達からは魔王討伐の要としてめちゃくちゃ評価されまくっていた。

 

 *

 

 石川が叫ぶ!

 

「今よ! 高山! とどめをさしなさい!」


「十分混乱してるし、これで十分じゃね?」


「いいからやりなさい! 獅子はいかなる時も手を抜かないの!」


「わかったよ。やりゃいいんだろ? やれば!」

 

 俺は湯けむりの中、大混乱するクラスメイトの中にゴブリンを投下した。


 その数百匹。


 俺はゴブリンに指示を出す。

 

『けがをさせない程度に暴れろ。武器や防具なんかを取り上げて混乱させてやれ』


『御意!』

 

 ゴブリンは湯けむりで視界を奪われたクラスメイト攻撃を始める。


 クラスメイトの中に飛び込むと武器を取り上げてバリケードの向こうに放り投げたり、鎧を引き剥がしたりして大暴れだ。


 魔法使いの風の呪文で霧が晴れるとパンツ一丁になって呆然とする男子や、ローブを脱がされて下着姿になりうずくまる女の子が何人もいた。

 

「石川さん、さすがにこれはやり過ぎだよ!」

 

 田中君が激怒していた。

 

「こうなったら僕も本気でやらせて貰うから! 光輪剣!」

 

 田中君の剣の先から光の輪が放たれ、天井を走り回る俺達に向けて飛んできた!


 光の輪は天井に当たるとトンネルのレンガを剥がし岩肌を曝(さら)け出す。


 当たったら痛そうじゃないか!


 これ、目からビーム並みにヤバい攻撃だ!


 でも、石川は難なく避けていた。

 

「そんなヘッポコ攻撃、効きませんからねー!」


 ちょ!


 おま!


 何!


 なに煽ってるんだよ!


 舌を出して笑いながら、ネズミの様にちょろちょろ天井を走り回る石川。


 石川の煽り文句にムカついたのか、他の生徒達も天井に張り付いてる俺達に向かって物凄い数の攻撃を放つ。


 矢!


 炎弾!


 氷矢!


 土塊!


 凄まじい数の弾幕が俺達を襲う!


 これは流石にヤバい。


 怒りを買い過ぎた。


 主に煽ってたのは石川だが、どうもその矛先の殆どは俺に向かってるっぽい。


 やべーよ!


 なんで俺だけ嫌われる?


 どうにか日本に帰れたとして、俺はスクールカーストの最底辺のハブられ者確定じゃね?


 マジやべーよ!


 て、そんなこと考えてる暇はない。


 日本に帰ってからの事は後で考えるとして、いまはここをどうにか切り抜けないと!


 俺はゴブリンに指示を出す。

 

『俺達に攻撃している奴らの手を止めろ!』

 

 が!


 返事は無かった!


 ゴブリンは混乱して同士討ちをしていた。


 どうなってるんだ?


 なんでゴブリンが混乱している?


 俺が混乱したからゴブリンも混乱したのか?


 ゴブリンは使い物にならない!


 ならば次に取る作戦は!

 

「ここは危険だ! 一層に逃げるぞ!」

 

 俺が叫ぶがだれも返事が無かった。


 天井を見ると誰一人居なかった。


 ちくしょー!


 俺を置いて先に逃げたのかよ!


 だが一層側出口を見ても石川達はどこにも居なかった。


 あれ?


 どこ行った?


 ふと地上を見ると次々に天井から落ちていく三人を見つけた!


 どうなってるんだ!


 この靴を履いていれば走ってる限りは天井から落ちないんじゃなかったのか?


 俺は天井から飛び降り、地面に横たわる石川、香川ちゃん、長野さんを回収すると抱(だ)き抱(かか)えて、脱出!


 猛ダッシュで一層へと向かった!


 だが、さすがに三人も抱えていると足が重いしバランスが取り難い。


 いつもの様なスピードは出ない。


 迅速を使って追って来る鹿嶋達に捕まりそうになりながら、一層の奥深く迄退避した。

 

「ここまで来たら大丈夫だろう。こいつらみんな天井から落ちやがって一体何が有ったんだ?」

 

 するとシステムちゃんが言った。

 

『石川さん達から、神速スキルが消えています!』

 

 システムちゃんは俺にとんでもない事を告げた。

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