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第1話

私たちは学校の体育館にいた。今、先生から与えられた仕事をこなしている。図書委員の私が本来やるべきことではないのだけれど。


「今日のお祝いに、アイスでも買いに行かない?」


私は埃をかぶった体育用具を拭きながら、今やっている作業を少しでも早く終わらせようとしていた。


彼の質問を無視しようかとも思ったけれど、そうするのはさすがに変な気がした。今この部屋にいるのは、私と彼だけなのだから。誘いはきっと私に向けられたものだ。


返事をしようと思った。場の空気を少し軽くするための答えを。


「………いいえ、ありがとう。今は忙しいから」


「本当に忙しいの? いつも通り本を読んでるだけじゃないの。この暑さの中、僕の提案のほうがよっぽどいいと思うけど」


彼は私に背中を向けたまま話していた。私はボールをかごに入れ続け、頬のあたりに少し汗が伝った。どうやらこの体育館のエアコンは壊れているらしく、今日の暑さはいつもより一段とひどかった。


「昨日さ、青春恋愛ものの本を読んだんだけど、要するに、今僕たちがやってることもその話の一部に含まれるって書いてあったんだよ」


「……"僕たち"って、私と君のこと?」


「違う」


「……じゃあ?」


「……誰のことじゃなくて、何をするかってこと。君は"僕たち"に注目しすぎで、何をするかを見てない」


少し間があった。


少し震える彼の背中を眺めた。埃だらけの倉庫の床を掃いている彼を見ながら、笑いをこらえているのか、それともくしゃみをこらえているのか、そのとき私には判断できなかった。


「つまり君は、青春とは誰かのことじゃなくて、することのことだと?」


「そんな感じ」


「………」


「それはそれとして、君が本当に本を読んでいたとは思わなかった」


「たまに少しだけ読むんだよ、それ以上はしないけど。知識を少し得て、頭を少し整えるためにもなるから。だから四つ目のクラスメートくんから学びたいんだよ」


「私はそんなに大したことないよ、教えられるほどじゃないし」


「うん、君に教えてもらうとは言ってないよ。自分で学びたいってこと」


彼は大きく息を吸って、そのまま埃にむせ、しばらく何度かせき込んで、それからくぐもった笑い声を上げた。私は見ようとは思わなかった。


「アイス食べてくればよかった、少し後悔してる。喉が乾いてきた。君は?」


「…….少し」


彼にもちゃんと仕事をしてほしいと思った。私がボールやネットなどの散らかったものを集中して片付けているというのに。


「今の学校のカリキュラム、本当に変わったよね。本来なら休んでいい時間なのに、体育倉庫でたむろしてるんだから」


いかにもやる気のない生徒らしいことを言っていた。でも私は少し同意してしまった。私たちは教育のコマではないはずなのに。それにこれは学びというより、罰に見える。


「君が自分から手を挙げたんじゃないの?」


「でも手を挙げなかったら君が誘うと思って、先に僕が言ったんだよ。このクラスメートは少し無口だから。だから今、僕はここにいる」


「私についてくることで時間を使ってもいいの?」


彼がマットを巻いて何度か叩いているような音が聞こえて、少し困惑した。機嫌が悪いのか、それとも仕事に張り切っているのか。


「お金持ってる?」


「え? ああ、これ? 破れたらどっかに隠しておけばいいかな」


「先生に報告する」


「先生が誰かに報告する?」


「本気で言ってる?」


眼鏡がずり落ちてきたのを少し直して、汗もついでに拭いた。小さなタオルが私に向かって飛んできた。私はそれを受け取った。


「どういたしまして、クラスメート」


「……まだ何も言ってない」


「ありがとうって——ほら、代わりに言っといてあげた」


ゆっくりとそのタオルを使って、汗と少し積もった埃を拭いた。タオルの端に名前が書いてあるのが見えて、私は少しの間ぼんやりとした。


部屋に短い静寂が訪れた。


彼は今私のすぐ目の前で笑いをこらえていた。私と彼の距離は数歩ほど。少し赤くなった顔で後頭部をかいているのを見て、どうやら私は彼のプライベートなものを使ってしまったらしい、と気がついた。


「ふふ、深く考えなくていいよ。特別扱いってことで」


特別扱い? 彼は本当に笑い出した。私はこの気まずい状況を冷静に受け流しながら、ゆっくりとポケットからミントのあめを取り出して口に入れた。さわやか、ひんやり。


「……どうして君みたいな人が、私に近づこうとするの?」


その言葉が口から出ていた。


「誰かと一緒に居続けて、そこで育っていける人を探してるから。死んだら命は一本の木に置き換えられるって言うじゃない。だから僕の残りの種を受け取ってくれる人を探してるんだ」


「……君はそれを信じてるの?」


「信じてない!」


「冗談だよ、はははっ! 本当はただ、誰かと一緒に小さなことをしたいだけ。アイスを食べたり、海を眺めたり、何でもいい、とにかく君と。」


「私以外ではだめなの?」


彼は少し首を振った。それから私に向かって微笑んで、ときどき小さく笑った。


種が育つだとか、完全な戯言に聞こえた。そして小さなことをする? 本当に青春を無駄にするだけだ。そんなことは一人でもできるし、それに学校の勉強のほうがよっぽど大事だ。


「だんご? アイス? チョコ? 他に何がおいしいと思う?」


「蒸しパン?」


「わあ!……でも、あまり興味ないかな。もうパンには飽き飽きしてて」


私はただ小さく「そう」と答えた。


しばらくして、ふたりで用具を所定の位置に並べ直し、各かごに貼った小さなラベル通りに整理し終えて、体育倉庫の扉を閉めた。


彼は私の前を軽やかに歩いていた。よく振る手を揺らしながら、その合間に、私に向けられた彼の視線に気づいた。返ってきたのは微笑みと、少し細められた目だけだった。


しばらくして、私たちは近くの食堂へと歩いた。私は冷たいアイスティーと、湯気の立つ温かい蒸しパンを少し注文した。彼は手に持ったアイスをなめていた。


「で、君は将来どうするつもりなの?」


「えっ、君は?!」


「君に聞いてるんだから、返さないで」


「もう答えた」


「君自身のことを聞いてるんだよ。ちゃんと聞くから」


彼は顎に手を当てて、まっすぐ私を見た。私は考えた。答えを探しながら、彼はアイスをなめながら私を見続けていた。


「…….将来は作家になって、働いて、自分の生活を支えたい」


「………」


「聞いてる?」


彼はただ少し眉を上げて、小さくうなずいた。口の端がほんの少しだけ上がるのが見えた。私は蒸しパンをまた一口食べた。うん、おいしい!


私たちの会話の合間に、誰かがテーブルに近づいてきた。振り向くと体育の先生だった。さっきの仕事を確認しに来たらしい。それにこんなことなら、私は図書館でもっと静かに本を読めたはずなのに。


「よくやった、元気な生徒くん。仕事が早いじゃないか。運動部に入ってみないか?」


「……すみません先生、ちょっと無理です。図書委員として少し忙しいので」


「四つ目のクラスメートくんが来ないなら、僕もそうする」


「……ついてこないで」


「どっちがついてきてるの?」


「"君"以外に誰がいるの?」


「ここには先生もいるよ。先生もついてきてるの?」


「まったく、おまえたちはまるで恋人同士みたいだな。些細なことで言い合って」


「………」


「先生には内緒にしといてくださいよ、へへ」


ふたりがのんびり話している横で、私はただ無表情のまま聞いていた。そして温暖化のせいですっかり溶けてしまったアイスティーをまたすすった。*あまい!*


先生が離れていくと、彼はくすくすと笑った。私はポケットから小さな本を取り出してゆっくり読み始めた。彼のほうを見ようとは思わなかった。


その日の授業が終わると、私は図書館へと向かった。いつも座っているテーブルに置いてある本を、4〜7ページほど読むつもりだった。扉を開けると、本のにおいと木の粉の香りがふわりと漂ってきた。


彼がいつもの私の席に座っていた。そこにあった本を当たり前のように読んでいた。この人は本当に礼儀というものを知らないのだろうか? 私が用意していた本を読むなんて、本当に胃の中のものを全部出したくなった。


「やあ、クラスメート。ここはエアコン効いてるね」


「こんな寒い部屋で本を読んでたら眠くなりそう。でも少しは頭が落ち着くかな」


私はゆっくりと無表情のまま歩いて、彼の真正面に座った。ゆっくりと、彼は顔を隠していた本を下ろした。


「人が話してるとき、聞く練習はしてないの?」


「………してる」


「証拠は?」


「今、聞いてるから」


「じゃあ、僕が何を言ったか言ってみて?」


「部屋のこと」


「それから?」


「エアコン」


「ちゃんと聞いてたんだね。ふふ」


彼は再び小さく笑いながら、本で少し顔を隠した。


「来週の日曜の朝、ふたりでどこか行かない?」


「…….ごめん、その日は友達と行く予定があって」


「えっ、このクラスメートにも僕以外に友達がいたんだ」


「…..それがどうかした?」


「嘘ついてない?」


「……少し」


「少しってどのくらい?これくらい?」


彼は人差し指と親指の先を合わせて測るような仕草をした。今の彼の年齢にしては、とても子どもっぽいと思った。


「まあ、そんな感じ」


「あらら……このクラスメートは少し嘘をついてたんだね、えっへん」


彼は少し咳払いをしながらそう言った。馬鹿にしているように聞こえた。それに日曜の朝に何かするなんて、エネルギーの無駄遣いだ。そういう理由をつければ、少しは誘いをかわせるかもしれない。


「もう決まってるよ」


少し首を傾けながら、小さく笑った。


「病気の友達を助けに行くなんて——優しいじゃないか。じゃあまたね」


彼は立ち上がって、読んでいた本をテーブルに置いた。私の返事も待たずに振り返って手を振った。私の視線は彼が読んでいた本のタイトルに向いた。「幸福の王子」。私はその本を手に取って、彼が鉛筆で線を引いた文字を見た。消しゴムで消そうとしたけれど消えなかった。その中に一つ、シンプルな言葉があった。


*「どんな小さな親切も、どれほど崇高な意図よりも、ずっと価値がある。」*


もう一度、その言葉をかみしめた。意味がよくわからなかった。やっぱり直接会って、これがどういう意味なのか聞かないといけないかもしれない。


ただ今日だけ、靴をしまいながら、ロッカーの扉に手をかけたまま、何度か、考えた。


家に向かって歩きながら、何度か、手の甲を額に当てて、自分が熱を出していないか確かめた。そして今この瞬間、自分が本当に生きているかどうかも。心臓の鼓動が一歩一歩に合わせて響くのを感じながら、私は歩みを速めた。


その午後の風が顔に当たって、一瞬、涼しさを感じた。


初めて、その日を——少し、楽しみにしていた。

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