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思惑 2

 来た時と同じように泉田先生と並んで塾へ帰ったが、泉田先生が階段を上がって行ってしまうと、高校生のクラスの女の子3人が、私が入ろうとする小学生担当の控室の前に現れた。

「中野先生?」と呼ばれる。

はい?と返事をすると3人はしげしげと私を見まわした。

 「私たち~」と一人の子が言う。「今度入って来たハルカ先生のファンなんですよ~。でも~~彼女がいるんですかって聞いたら~~中野先生が彼女だってハルカ先生が言うんで~~」

あ~~と思う。

「冗談ですよね?」と二人目の子が笑顔で言う。

「マジほんとなの?」と少しバカにしたように言う3人目の子。

マジほんとじゃないの。と心の中では答えて声に出してはこう言った。

「本当じゃないですよ」ニッコリ。


 

 3人とも肩より少し長いサラサラの髪にぱっちりした目。目立つ化粧もしていないけれど薄めにきちんとファンデーションを付けてまつ毛もブローしている。

 私なんか高校生の時にはファンデーションも付けた事なかったな…。今度の泉田先生とのドライブの時には、この間の飲み会より可愛い化粧してみよう…。彼女たちの顔をぼんやり見ながら考えていたら話がまだ続く。

 「でも中野先生?」最初の子だ。さっきより喋り口がきつい。「小学生の時1回付き合って、離れ離れになったけど今回運命的に再会して、もうたぶん来年くらいには結婚するってハルカ先生言ってんだけど?絶対ないよね、そんな話。ほんとだったら超々びっくり超ありえないんだけど」

「「絶対冗談だよね?」」後の二人が声を合わせた。

 どうしたんだろ…ハルちゃんの嫌がらせに加速度が付いてないか?


 「楠木先生とは幼馴染なんだよ」と私は出来るだけ穏やかな声で言う。「ねぇ?楠木先生どんな感じでそれ話してた?」

「え~…ニコニコしながら?」語尾上がりで二人目の子が答えた。「そうじゃなくて、私たちほんとじゃないの確認しに来てんだけど」

ああ、確認ね?私はまたニッコリして答えてあげる。「付き合ってませんよ。楠木先生と遊んでたの小1の時とかだよ?それを付き合ってたって言う子なんかいないでしょ」

「いるかもしれないじゃん!」一人目の子がキレ気味だ。

「今さぁイズミィと一緒に帰って来たよね?」二人目の子。「イズミィとはどういう関係?」

「職場の先輩と後輩」

「それで、ハルカ先生と今は?」

3人目の子のその質問の声がが大きかったので、私は思わず「しっ!」と注意してしまった。こんな話他の生徒や先生に聞かれたくない。

「…それって」と私は心配になって聞く。「楠木先生、あなたたちだけに言ったんだよね?」

 3人がそうだと言うのでほっとする。


それから3人はごちょごちょ話してから私をじっと見つめる。

「じゃあやっぱハルカ先生ふざけてんだ~~」「なんで何狙いで~~?」「わかった!他に彼女がいてさぁ、それごまかすためとか…」と3人で言い合っている。そして最終的に私に聞いて来る。

「何で~~ねぇ中野先生、なんでハルカ先生はそんな嘘付くんですか~~?」

「ごめん、私次の授業の準備あるから」

3人にニッコリ笑うと、うざっ、と小さい声で呟くように言われた。

 うざくないっつの!


 が、3人はまだ私を引き止める。手のひらを返すように私に甘えた声を出した。「中野先生~~、ハルカ先生の番号教えてくださ~~い。ハルカ先生とラインした~~い」

 めんどくさっ!!

 泉田先生に余計な事を言われた仕返しに教えてしまおうかと思ったが我慢して、それも知らないと言って3人を追い返した。が、仕事が終わって塾を出るまでに、追加で高校生女子5人、中学生女子6人、小学生女子3人が、ハルちゃんとハルちゃんだけではなくミノリ君の連絡先も私から聞き出そうとしに来た。

 小学生まで!

 絡みが面倒だったので、最初の3人に思ったようにすぐ教えてしまおうかとも思ったが、それでも連絡先なんて全く知らない事にした方が無難だと思いなおす。誰か一人にでも教えたらあっと言う間に塾全体に広がりそうな気がするし、そうなると後でかえって面倒くさい事に巻き込まれるに違いない。

 どっちにしろ面倒くさい!

 帰りまでにハルちゃんが顔を見せたら言いたい文句はたくさんあったのに、ハルちゃんは姿を見せなかった。




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