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おあいこ 2


「リツ!」言ったのはハルちゃんだった。

 なんでここにハルちゃんが…

 ちっ、とミノリ君が大きく舌打ちするのが聞こえた。

「来なくていいのに!」とミノリ君がハルちゃんに言う。

「リツ!」

またハルちゃんに大声を出されてびくっとしたが、その私の肩をミノリ君に、ぎゅううっとそのまま後ろから抱きしめられた。ガタっと椅子が鳴ったが私は立ち上がれない。部屋に入ったハルちゃんが結構な勢いでミノリ君の手を払いのけると私の腕を掴んで、思い切り引っ張りながら冷たい目をして言った。

「すぐこんな事になるんだね」

え…


 くすっとミノリ君が笑い「笑うな」とハルちゃんが言う。

「お前ふざけんな」

「別にふざけてない。今からりっちゃんにレポート見てもらうとこだから。兄ちゃんこそ邪魔だよ。なにしに来たの?昨日ばあちゃんが誘った時には断ったくせに」

「リツが来るって言ってたら来てた。リツもオレには黙ってたよね?」

「…奥さんに黙っててって言われたから」

「リツの家に行ったらここだって言うから。とにかくお前、オレに嫌がらせするためにリツにちょっかい出すの止めろって。全然面白くないし、お前それ、リツに対してもすげぇ失礼だから」

「でもりっちゃんはショック受けてるから」

あ~ミノリ君余計な事言った。


「兄ちゃんと兄ちゃんの元カノの写真、じいちゃんが嬉しそうに見せたから。下にいたくなさそうだから部屋に連れて来たんだよ」

ちっ、ハルちゃんが舌打ちをしてから、う~~と唸った。「…仕方ねぇな、オレも今リツの家でアルバム見てきたから」

はぁ?

「リツの母さんが嬉しそうな顔して元カレとの写真見せてきた。なんかプリクラで撮ったような、すげぇイカれたメッセージ付きの…」

「私が捨てたやつ!!」

なんで母さんが拾ってんだ!

 ハルちゃんが言った。「オレだってショックだった…オレがショック受けてんのに、リツの母さん大笑いしてた。…ていうか、リツ、リツもショック受けてるって事はオレの事ほんとは…」

「バカだな」と言ったのは私ではなくてミノリ君だった。「ほら、りっちゃん、兄ちゃんこんなにバカだから」

 ハルちゃんはそれには応えずに私の腕を強く引っ張って、結局ミノリ君の部屋から私は連れ出された。



「あら、ハルカ」

私とハルちゃんがリビングに戻ると奥さんが言った。「昨日は来ないって言ってたくせに。ケーキ食べる?」

ハルちゃんは首をふる。

 私はハルちゃんにまだ腕を掴まれたままだ。

「痛いから」と離してくれるように言うと、「痛いようにしてんの」と私を見ずにハルちゃんは答える。

「ハルカ」奥さんが小さい子に注意するようにたしなめた。「痛いようにしちゃダメよ」

「離してよ」掴まれていない方の手で掴んでいるハルちゃんの手をはずそうとしたが、そのままソファに掛けるように促され、そこでやっと離してくれた。ハルちゃんも隣に掛け、そしてテーブルに肘をついて、うなだれた頭を手で支える。そして唸るように言った。

「見たかったんだよね…リツのお母さんに『見る?』って聞かれて。リツの写真、勝手に見たのわかったら、またリツが機嫌悪くするんだろうなって思ったけど、お母さんはいいよって言ってるし、オレは見たいし、じゃあ見ちゃえって思って見たけど、あぁもう!やっぱ見なきゃ良かった…。実際さ、リツと彼氏を見た事あったけど、あの時より衝撃がデカかった…なんでだろうな」

衝撃か…私も母さんに写真を拾われていたショックと、さらに今になってそれをハルちゃんに見せられたショックが大き過ぎる。どういうつもりなんだ母さん。帰ったらどうしよう…家庭内暴力に走るかも私。

 母さんといい、マキちゃんといい、ミノリ君も塾長夫妻も全員、私たちの事を本気で面白がってるよね?



 ミノリ君もリビングに降りて来た。

「何してたの?」と奥さんがミノリ君に聞く。「ハルカが大声出してたじゃない。あんたまさかりっちゃんを押し倒してたり…」

「してないしてない。そんな、ばあちゃん、さすがにもうちょっと順序踏まないと犯罪になるよ。兄ちゃんが勝手に部屋に入って来て、勝手に大声出しただけ。りっちゃん、オレ学校行くしそろそろ送ろうか?もう帰りたいでしょ?」

思い切り頷いてしまって、しまった、と思い、今さら奥さんの顔いろを伺ってしまう姑息さだ。


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