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塾長との面談 1

 何でだろう。なんで塾長に呼ばれるんだろう…

 それはもう絶対にハルちゃん絡みだと思うんだけど、あいつ、私が昨日家から追い出すように送って行った事とか、私が相当気持ち悪がったとか、ある事ない事じいちゃんに言い付けるようなしょぼい真似してないよね?

 …いやぁまさか塾長がそんな事で私を、わざわざ呼びつけて注意したりはしないだろう…だって仮にも塾長なんだから…仮じゃないけど。あんな飄々とした、普段は公正にしか見えない塾長も自分の孫だけにはやたらとひいきが強いとか…

 私、そんなくだらない事で首になったりしないよね?



 少しビクビクしながら塾長室に入ると「やっぱりね~」と塾長が言った。

 何?やっぱりて何?

「まぁいいから座って座って」と来客用のソファに掛けさせられる。

 やっぱりて何の事?

「なんかお茶飲む?」と聞かれるが私は、『やっぱり』、が気になるし怖い。

「…いいえ。あの…やっぱりって…」

「中野さんを面接した時に『あっ』と思ったんだよね。ほら、ここだったよね?面接したの、この部屋この部屋。なつかしい?」

いや、なつかしくはないよね。塾長室にも書類の提出でたまにだけど入る事はあるから。

「なつかしいね~」と塾長は言った。

「…」


 塾長が少しの間、遠い目をしてから続けた。「あの時主任の先生がいなかったから私が面接したよね?」

「はい」

「ハルカにね、高校生の時に彼女はいないのかって聞いたら好きな子はいるって言ってたんだよ。いや、私たちはその頃県北に住んでてね、私が鏡が原町で病院をやってたもんだから。…それでハルカは当時ケイタイを持ってなかったんだけど、女の子から家に電話がかかってくる事が結構あってね。でもそのたびに居留守使ったりするから、気になって聞いたんだよ。私が電話取ることが多かったもんだから。ほら、モテモテなのを良い事にいろんな女の子と付き合ってマズい事になってるんじゃないかと心配にもなったからね。そしたら小さい時に隣に住んでた女の子の事がずっと好きなんだって。ねぇ?」

「…」

ねぇ?って言われても…それに県北で病院やってたって、何者なんだ塾長。

「それでも大学は他県に行ってしまったし、彼女が出来てね、帰省したとき連れて来た事さえあったのに別れてしまってね、別れるきっかけになったのもその、隣に住んでた女の子なんだって言うんだよ」

「…」

 塾長は「ふん?」という感じでニコニコして私を見つめるが、私は受け答える事ができない。

 ニコニコしてるけれど、やっぱりこれは責められてるんだよね?私。



「昨日はお宅にお邪魔したみたいで」

「…はい」

塾長はまだニコニコと笑っている。

 いつまで続くんだろうこの尋問みたいなやつ。

「まさかね、その女の子が誰の紹介でもなく、たまたまうちで働き始めるなんて、世の中っていうのはいろいろ不思議な縁でつながっているよね?そう思わない?」

「…」

「だってその時ちょうど主任がいなくてさ、私が面接したし」

「…はい」

「そういうのって『運命』、みたいな感じがするよねぇ?」

「…」

「しない?」

「…」


 どうなんだろう…するっちゃあするけど、しないっちゃあ、しない。

 いや、やっぱ、する。するけど…そんな事塾長に聞かれるのもどうかと…

「それで私は孫可愛さに中野さんにこういう話をしてるんじゃなくて、まぁ気を付けなさいっていう事なんだけど」

気を付ける?何に?その『運命』みたいな事に?

「いや」と塾長が言うのでビクッとした。

私が何にも答えていないのに否定したからだ。

「…えっと、それは…」ハルちゃんが私に好意を持ってくれる事に?

「気を付けるっていうか、きちんと自分を持ってだね、ハルカがいろいろ言ってきても流されないようにって事なんだよ。まぁ私が言うまでもなく中野さん、しっかりしてるから大丈夫だと思うけど」

「…」

「あれ?」塾長は面白そうに言った。「しっかりしてないの?」


 

 え~とこれはどういう事だ?

 あくまでも私を立ててくれながら、孫と付き合うなって言ってるの?こういうの、ドラマとかで良くあるよね。「私の大事な孫と付き合うな、うちの大事な跡取りだから」みたいな。

 そんな事言いそうな人には見えなかったのにな、塾長。孫の事だとしても、相変わらずで淡々と傍観するようなイメージなのに。

 それにハルちゃんとは付き合う気はないけど私。私の好きな人は泉田先生だし。


「どう?」と塾長が言うが私は何と答えたらいいのかわからない。別に好きな人がいるので、とか塾長にカミングアウトするのもどうかと思う。

 …いやでも、母さんも塾長と同じような事言ってた。流されないようにって。

「…はい…あの…気を付けます」

どんな答えを望まれているのかわからなくて曖昧に返事をしたのに、塾長はふんふん、とうなずいてくれた。



「なんかさ、思い入れが激しくて気持ち悪いんだよね、ハルカは」

「え?」

「気持ち悪いって思っただろう?」

「…」

「だって中野さん、他に好きな人がいるもんねぇ?」

「えっ!?」

本気で驚く私だ。


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