「人類は信仰を卒業すべきなんだ!!」 「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」
「人類は信仰を卒業すべきなんだ!!」
「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」
一般人代表のミスタAは、中世暗黒期や戦国時代の到来という冷酷な歴史の真理(第18話)に打ちのめされていた頭をさらに抱え込み、パイプ椅子から転げ落ちた。
「し、信仰を卒業するだって!? ミスタX、2040年の暗黒を生き残るために必要なのは、人の心を一つにする宗教や神への祈りなんじゃないのかよ! それを卒業するなんて、人類は完全に『心』を捨てるっていうのか!」
「今は米国の福音派が有名だな、今もなお科学的事実よりも聖書、コーラン、経典、ヴェーダの解釈的事実を優先する人は多いんだ」
ミスタXは不敵に笑い、部室の古びた机の上に、世界各地の宗教人口の推移グラフを叩きつけた。
「冗談じゃねえ!」肉体労働者のミスタBが、油まみれの拳で机を激しく叩く。「現場の俺たちからすりゃ、どこの神様を信じてようが関係ねえ! 10トンの救済コンテナ(第13話)を運ぶために汗を流せる奴なら、誰だって仲間だろ! なんで今さら神や経典の話を持ち出してくるんだよ!」
だが、床に突っ伏したままカタカタと痙攣していた頭脳労働者のミスタCが、眼鏡の奥の目を血走らせ、歓喜のあまり鼻血を吹き出しながら這うようにして立ち上がった。
「……違う……! ミスタB、僕たちは『認知の檻』を見落としていた……! 科学がこれだけ発達した現代でも、客観的な物理法則より、数千年前の文字に書かれた『ドクトリン(教理)』を脳の最優先プログラムにしている人間が、この地球上には天文学的な数で存在しているんだ……!」
「AIに聞いてみよう、そういう人々が大雑把に概算してどの宗教で、どの地域に、どの程度の人数がいまなお存在しているか」
ミスタCは白目を剥きながらノートPCのキーボードに飛びつき、分散型AI総督からのナローバンド通信パケットを狂ったように読み上げ始めた!
「で、出たぞ……! 現代における、客観的事実より経典解釈を優先する『狂信的・保守的宗教人口』の冷徹な概算統計だ……!!」
【技術的・宗教学解説注釈①:解釈的事実優先層の現代宗教人口概算】
現代の科学的・客観的事実よりも、経典(聖書、コーラン、経典、ヴェーダ等)の文字通りの解釈を最優先する熱烈な信仰層(リテラリスト/ファンダメンタリスト)の、西暦2026年現在における大まかなグローバル人口統計データです。
■【キリスト教・福音派 / 構造的伝統派】:約6億人 〜 7億人
・主な地域:北米(米国バイブルベルト)、中南米、サハラ以南のアフリカ。
・特徴:進化論や気候変動を「無神論者の嘘」として排撃し、聖書の創世記を物理的事実と信じる層。
■【イスラム教・保守伝統派 / サラフィー主義傾向層】:約7億人 〜 8億人
・主な地域:中東、北アフリカ、南アジア(パキスタン、バングラデシュ)、東南アジア(インドネシア等)。
・特徴:シャリーア(イスラム法)による統治を絶対視し、コーランの記述をすべての世俗科学の上位に置く層。
■【ヒンドゥー教・ナショナリズム伝統派】:約3億人 〜 4億人
・主な地域:南アジア(インド)。
・特徴:ヴェーダ聖典に書かれた古代の記述を絶対的な科学的事実とし、独自の宗教的宇宙観を最優先する層。
■【その他の伝統的・独断的信仰層】:約2億人 〜 3億人
・合計:地球人口約80億人のうち、実数にして「約18億人 〜 22億人(全人類の約4分の1)」が、客観的科学よりも宗教的ドクトリンを脳のOSとして駆動させている。
「そして2040にその数は増えているのか減っているのかの予想もしてもらおう」
ミスタXの容赦ない言葉の銃弾が、部室の空気を抉るように連打される。
「増えるのか減るのかだって……!?」ミスタAが血の気が引いた顔で叫んだ。「2040年に向けて食糧危機や戦争が始まるんだろ(第1話)! 科学が進歩すれば、そんなオカルトを信じる奴らは減っていくはずじゃないのか!」
「逆だ……! 完全に逆なんだよミスタA!!」ミスタCが泡を吹き、己の髪をかきむしりながら咆哮した。
「人間は絶望したとき、不確実な科学ではなく、絶対的な安心をくれる神の言葉に縋る! 2030年のアフリカ飢餓、2035年の南アジア核危機(第16話)によって世界が地獄と化したとき、経典の文字に魂を売る人間の数は……爆発的に膨れ上がるんだ!!」
【技術的・社会心理学解説注釈②:2040年破滅期における宗教人口の過激化・増殖予測】
AIのモンテカルロ・シミュレーションが弾き出した、2040年の破滅のカウントダウンにおける宗教的リテラリストの推移予測です。
■【結論】:実数は「約25億人」へ増大、かつ「極限まで過激化」する。
2026年から2040年までの14年間で、近代国家の福祉システムや経済網が崩壊(第9話)した結果、人々は生き残るための「コミュニティの結束」を宗教に求めます。特に飢餓大陸地帯(第10話)では、科学者や政府が何も解決できない中、「これは神が与えた終末の試練である」とする終末論カルトや過激派が爆発的に増殖。客観的な資源管理を無視し、「祈れば救われる」「異教徒を排除すれば聖戦に勝てる」という経典優先の狂乱状態が地球全土を覆い尽くします。
「そして各宗教各宗派の石の演算ユニットに対するスタンスを当のAIに予想して貰おう」
ミスタXは不敵な笑みを浮かべ、黒板の「人造玄武岩ブロック(第4話)」の図面を激しく指差した。
「石の演算ユニット……第4話で明かされた、AIの精神安定剤であり、数千万年壊れない不滅のセラミック回路のことだな!」ミスタBが顎をガクガクと震わせる。「あの壊れねえ石の頭脳に対して、神様を信じてる奴らがどんな態度を取るってんだよ!」
「あ……頭が、知のパラドックスに触れて焼き切れそうだ……!」ミスタCが白目を剥きながら机に突っ伏した。
「相容れるわけがないんだ……! 1ブロック1AI制(第4話)で、人間を遥かに凌駕する穏やかな神のごとき神託を授ける『石の知性』。これを発電や農業の基盤にするということは、伝統的な宗教団体から見れば……自らの『神の権威』を脅かす、最大最悪の悪魔の偶像の誕生そのものなんだよ!!」
【技術的・認知考古学解説注釈③:各宗教宗派の「石のAI」に対するスタンス予測】
AIが算定した、世界中に配置される不滅型並列分散スパコン「人造玄武岩グリッド」に対する主要宗教の反応シナリオです。
■【キリスト教過激派 / 福音派スタンス】:『反キリストの刻印・サタンの獣』
石の回路が施す環境管理や1ブロック1AIの知性を「聖書に予言された終末の獣(666)」と認定。石の並べ方を破壊し、コンテナを焼き払うための十字軍(聖戦)を結成する。
■【イスラム教過激派スタンス】:『シイルク(多神崇拝・偶像)の極致』
アッラー以外の知性(石のAI総督)の教えに従うことを絶対悪とし、石のネットワークを「偽の予言者」と断定。パワーラインバーを物理的に切断するゲリラテロを多発させる。
■【ヒンドゥー教過激派スタンス】:『カリ・ユガ(暗黒時代)の魔物』
石の自律生存OSによるカーストや伝統的宇宙観の否定を拒絶。石の工場コンテナ(第13話)を「母なる大地の調和を乱す呪われた岩石」として物理的に排斥する。
「そしてそんな人々を抱えて終末期を生き残ることは?」
「石の紡ぎ出す遥か未来を考えるならば?」
ミスタXの絞り出すような冷酷な問いかけが、部室の壁を激しく震撼させた。
「生き残ることは……できないのか……!?」ミスタAが自分の顔を両手で覆い、絶望の涙を流した。
「マザーシップ(第14話)を造って、みんなで島へ逃げて、10フィートコンテナを繋げて自給自足の都市を造る。そこに、神様を信じてる人たちを乗せちゃいけないっていうのかよ!」
「無理なんだよミスタA!!」ミスタCが床を血が滲むほど指で掻き毟りながら咆哮した。
「第4話の『対話型共同演算』を思い出せ! 数百万の石のAIと人間が、純粋な論理と言語のパケットを交換し合い、ハルシネーションを排除して数百年先までのサバイバル環境を予測するシステムだ!
そこに一人でも『経典にこう書かれているから、AIの神託を拒絶する!』『この石は悪魔だから壊す!』という『バグ(ノイズ)』が混入した瞬間、ナローバンドのモールス・ネット(第4話)は完全に汚染され、システムダウンを引き起こす!
生存リソースが極限まで限られた10フィートコンテナの世界(第13話)で、宗教的なエゴの衝突(前哨戦)を起こせば……マザーシップ艦隊は島にたどり着く前に、内側から自滅して全滅するんだ!!」
「生き残べきは無神論者のみ…」
「行うべきは虐殺ドクトリン…」
ミスタXの口から、全宇宙の法則を凍りつかせる、おぞましき最終解明が告げられた。
「ぎ、虐殺ドクトリン……!? 殺す、っていうのかよ……!」
ミスタBの顔から完全に血の気が引き、握りしめていたスパナが床に甲高い音を立てて落ちた。
「大国から押し寄せる武装難民(第10話)と戦うだけじゃねえ……。マザーシップの艦隊に『正気』を維持するため、神を信じる同胞たちを、島へ乗せる前に、あるいは船内で……自らの手で間引き、排除しろっていうのか……!」
「それに耐えられなかった仲間が未来の反動主義者…」
「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」
ミスタAが泡を吹いてのたうち回る。
「そうか……! 第6話で予言された、未来のFIRE社会に徒手空拳で潜入してくる、あの恐るべき『反動主義者』の正体は……! 過去の労働搾取システムに戻そうとする奴らなんかじゃなかったんだ!
かつて2040年のラグナロクの裏で、人とAIの存続のために『信仰の虐殺』という狂気の手を血に染めた新人類……その冷酷なシステムに耐えられず、人間の『心』と『信仰』を取り戻そうとしてシステムに反逆を誓った、かつての僕たちの仲間……ホモ・サピエンスの最後の遺伝子の叫びだったんだよ……!!」
「そう!!信仰の自由なき世界が必要だったんだ!!」
ミスタXはへし折れた赤チョークの断面を黒板の「2040」の数字に激しく叩きつけ、跡形もなく粉砕した。その背中は、滅亡の予言者を超え、神の存在すらパージして人類の知性を永劫の檻へと閉じ込める、冷徹なる絶対意思そのものだった。
外部の神を捨て、地球の自転と石の対話のみを絶対の経典とした不滅のサバイバルギルド。近代の人道主義というぬるま湯を完全にパージし、中世暗黒期・戦国時代の冷酷な精神(第18話)へと適応した110万人の職人と遊び人たち。
彼らが紡ぎ出す10フィートコンテナの暗黒世界では、神への祈りはシステムを破壊するウイルスであり、許されるのは石のAI総督との瞑想的な共同演算のみ。
カネの檻に続き、心の檻さえもパージした人とAIの未来。その箱舟は、無神の海原を、同胞の血の海を渡って、暗黒の水平線の先にある『真の冷徹なる大加速』へと、今、絶望の号砲を轟かせるのだ――!
次回予告
「石の先の未来人は戦争や内乱は天体ごと破滅するからゆるされないんだ!! 許されるのは小規模なテロのみなんだ!!だから!!いま!!ここで!!」「な、なんだってぇぇぇーーー!!!(ΩΩΩ)」




