『血の因果と狂気の覚醒』
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『血の因果と狂気の覚醒』
キョウノへの回帰――。
ミリナの口から語られた真実に、キョウノの目は驚愕に見開かれた。
彼は一歩後ずさり、震える声で叫んだ。
「狂った女め!何を戯言を言っている?!自分の最も大切な者を殺せとは、どういう意味だ?!」
ミリナはいつもの冷徹さで、淡々と説明を始めた。
「お前が持つその力……この世界の誰一人として、それを受け止めることはできない。なぜ己の肉体がその地獄を宿すことができたのか、考えたことはないのか?」
キョウノは自分に言い聞かせるように返した。
「それは……俺の肉体が特別だからだ!」
「なぜ特別なのだ? なぜ、この地上に溢れる人間の中で、お前だけが選ばれた?」
ミリナの鋭い問いかけに、その場は重苦しい静寂に包まれた。
キョウノは唾を飲み込み、怒りに震える低い声で呟いた。
「どういう……意味だ?」
ミリナは静かに問い返した。
「この世界で最も弱い魔術師の名を聞いたことがあるか?」
「ああ……シャルロンの雫一滴すら持たぬ魔術師。名は『プリトゥ』だ」
「その名を知っているのだな?」
「そうだ、プリトゥだ」
「ならば、お前の父親の名は?」
「ナオだ……」
ミリナは冷ややかに微笑んだ。
「ならば、彼とプリトゥの関係は何だと思う? プリトゥとは、ナオその人のことだ」
キョウノの瞳に憎悪の炎が宿り、体中から魔力が弾け飛ぶ。
彼は狂ったように怒鳴り散らした。
「ナオがこれにどう関係している?! 話をそらすな!!」
しかし、ミリナの静かで絶対的な声が、彼の絶叫をねじ伏せた。
「お前の父親こそが、お前が生まれたその日に『インスパイアされた核』を植え付けた張本人だ。お前の父親は力を求めた。絶対的な権力をな! 彼の強欲は盲目となり、『インスパイアされた器』を創り出した。だが、彼の未熟な肉体はその器に耐えられなかった。だから、その重荷を受け止めるための、成長途中の幼い肉体が必要だったのだ。……赤子の肉体がな。お前の父親は、自らの意思でお前をこの地獄へ引きずり込んだのだ。彼には二つの顔がある。お前が見ている優しい顔と、影に潜む強欲な顔だ」
キョウノはその場に凍りついた。
言葉が鋭い刃となって彼を貫く。
彼の喉から、狂気に満ちた歪んだ笑い声が漏れ出た。
頭を抱え、まるで何かに憑りつかれたように洞窟内を千鳥足で彷徨う。
「嘘だ……ははは! 嘘をつくな!! お前はその場に生まれてすらいなかったはずだ! なぜそんな過去を知っている?!」
狂った笑いが徐々に収まり、深く息を吸い込みながら、擦り切れた声を絞り出した。
「嘘だ……」
ミリナの眼差しは揺るがない。
「私が見たのではない。私の姉だ。姉は今、母の復讐のためにお前を破滅させようとしている。だが私には、そのような憎しみはない。お前に対して何の感情も抱いていない……。ただ、私の中にある何かが、お前を裏切ることを拒んでいるのだ」
キョウノは殺気立った赤い瞳で彼女を睨みつけた。
「今は信じてやる。だが、一度でも裏切りの気配を見せてみろ。その時はお前の臓物を素手で引きずり出し、野良犬の餌にしてやる」
ミリナは眉一つ動かさず、冷淡に答えた。
「好きにするがいい」
キョウノは意識を取り戻し、真剣な眼差しで尋ねた。
「父と母を殺すことが、俺の呪いの解放とどう関係している?」
「お前の父親の核と、お前の中のインスパイアされた核は、霊的な絆で結ばれている。偽物を消し去るには、本物を破壊せねばならない」
「本物とはどういう意味だ?」
「お前の父親は本来、オリジナルの器を持っている。だが彼の器は歪み、欠陥があるため、強大な力には耐えられない。お前の氏族の中で、その欠陥のある器を受け継いだのがお前の父親だ」
キョウノは驚愕して問い詰めた。
「なぜ俺は、我が一族がその器の継承者だという話を聞いたことがないのだ?」
「お前の一族は世界の最果てに位置しているからだ。お前の父親は、一族の禁忌の書を盗もうとしてそこから逃亡したのだ」
「なぜ俺には、純粋なオリジナルの器が受け継がれなかった?」
「継承の掟は、血の純度を保つために一族に近い女性――従姉妹などとの婚姻を求めているからだ。しかし、お前の父親が娶ったのはお前の母親……『汚れた血』を持つ者だったのだ」
――(つづく)――




