第93話 外の現実
ルーカが戻ってきてから、数日が経った。
腕の傷はもう塞がりかけている。
だが、彼の目は以前より静かだった。
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焚き火のそばで、レオンが尋ねる。
「向こうはどうだった」
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ルーカは少し考えてから言った。
「強い」
一拍。
「でも、冷たい」
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誰もすぐには言葉を返さない。
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「防衛線はきちんとしてる」
彼は続ける。
「命令は速い。
動きも速い」
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「集中だからな」
マルタが言う。
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「そう」
ルーカは頷く。
「全部、中央から来る」
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彼は地面に棒で線を引く。
大きな円。
そこから外へ放射状の線。
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「中心がここ」
棒で円の中央を叩く。
「町はここ」
線の先を指す。
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「命令は、ここから来る」
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単純な図だ。
だが、空気が少し冷える。
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「問題があるのか」
誰かが言う。
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「問題はない」
ルーカは答える。
「速いから」
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一拍。
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「でも」
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彼は線の先を指す。
「ここが壊れても、中心は止まらない」
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誰も動かない。
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「町が一つ消えても?」
マルタが聞く。
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「別の町が補う」
ルーカは静かに言う。
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合理的だ。
連合としては正しい。
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だが、町としては違う。
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「お前たちは」
彼は続ける。
「例外なんだ」
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「例外?」
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「この町は、
集中してるのに分散してる」
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レオンが苦笑する。
「変な構造だ」
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「向こうでも話題になってた」
ルーカは言う。
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「何て?」
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「面白い」
一拍。
「でも、長くは続かない」
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沈黙。
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「なぜ」
私が聞く。
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「中央は、
成功例を制度にする」
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その言葉は、静かに落ちた。
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焚き火の火が揺れる。
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「模範都市だろ」
ルーカは言う。
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模範。
その言葉はもう何度も聞いた。
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「模範は、広げられる」
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彼は線をもう一本引く。
円の中心を囲む四角。
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「制度になる」
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その図は、単純だった。
だが、未来を示している。
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「つまり」
マルタが言う。
「この町のやり方が、
連合の形になる?」
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「なるかもしれない」
ルーカは答える。
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「でも」
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一拍。
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「そうなったら、
この町のやり方じゃなくなる」
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焚き火がぱちりと鳴る。
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分散を守るために借りた集中。
それが今、
連合の未来として
使われようとしている。
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私は火を見つめる。
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構造は、
成功すると広がる。
広がると、
元の意味は薄れる。
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三か月の期限はまだある。
だが、
この町の選択は
もう町だけの問題では
なくなり始めていた。
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