短語更新
午後。講義棟の小教室。ホワイトボードの真ん中に**「短語辞書 β→1.0」。
机には色カード**(緑/黄/赤)、小カード(三行+四問)、足型ゲージは…今日は出番少なめ。
三ノ宮が指で三本を立てる。「一、曖昧語を削る。二、三語テンプレを整える。三、EP-1の短句を磨く」
ミレイユ教官は板書役。志水がログ束を持って立つ。ルナはタイマー、楓と長谷、真白はサンプル役。
見学席の端に黒鐘イツキ。会釈は監督者へだけ。こちらは見ない。いつもどおり。
(胃評議会:糖分→是。終わったらドーナツ)
◆四問で固定(今日の場)
ルナが短く整える。
「対象=短語、場所=小教室(運用帯=前方4m)、主体=生活指導(三ノ宮)、時間=午後の90分」
【基準線】
三音整流=必須(最後で数える/前後半拍/視線で主体)。
退避線=一足幅。走者のみ白点(四角版)。例外:E-12b、名目干渉−2、支援は休憩帯+1。
◆棚卸し(いまの辞書)
志水が読み上げる。使用頻度トップ10と問題点。
『お願いします』→長い/曖昧
『大丈夫です』→意味幅が広い(OK? 不要?)
『なるほど』→返事だけで動かない
『見てて』→視覚合図の誘発(運用外に近い)
『後で』→時間幅が広い
三ノ宮が顎でコツ。「言い換え候補を三語で」
◆案出し(三語テンプレの更新案)
白板に候補を貼っていく。三語固定、半拍の沈黙→三語が前提。
お願いします → 『受ける→私』/『頼む→君』
大丈夫です → 『OK、進め』/『不要、止め』
なるほど → 『把握、実行』/『保留、照合』
見てて → 『白線、見て』(退避線内で)
後で → 『十分後、再開』/『次休憩、話す』
わかりません → 『質問、ひとつ』
もう一回 → 『二拍後、再』
急いで → 『速度、一定』(落ち着けの言い換え)
ルナが一行足す。「“名付け→圧縮”は増やしすぎない。辞書は薄く強く」
◆演習A:机上→実地(交差帯テスト)
運用帯に黒円+四角白点+退避線。合図は短音器。A=俺、B=イツキ、C=楓。
前静0.5拍→ピッ→後静0.5拍。A=俺が反応→当て(軽)。交代の二拍末尾でEP-1を短く置く。
「時間の穴→静止」
ピッピ。B=イツキ。**0%**で通過。
ピッピッピ。C=楓。「交代=角」を二拍の中で置いてから動く。
途中、見学の一年が手サインを上げかける——ルナが半拍沈黙→三語で即時。「口で三語」
ログ(A)
被り率:0%
三語率:92%(『白線、見て』が新規採用)
EP-1:A=『時間の穴→静止』/C=『交代=角』
干渉:手サイン→言い換えで回避
◆演習B:列と割込み(食堂シミュ)
長机でトレイ列を再現。一足幅点線。合図は卓上ベル。
チン。先頭の一年が**「大丈夫です」**とつぶやく——曖昧!
胸の中にポコン……。
A:そのまま流す / B:三語テンプレへ言い換え
「B。言い換え」
俺:「OK、進め」
楓:「不要、止め」
—状況に合わせてどちらかを選ぶだけで意味が狭まる。列は滞らない。
背後でガタッ(トレイ)——E-12b。
最後の音の終わりから二拍静止。再開。
ログ(B)
曖昧語→削減:**『大丈夫』→『OK/不要』**に置換成功
E-12b:成立×1(延長不要)
三語率:95%
◆演習C:寮ロビー(曲がり角と言い換え)
壁沿いテープの角で広がりがち。長谷が**「見てて」**と言いかけ——止まる。
胸の中にポコン……。
A:見てて / B:白線、見て
「B。白線、見て」
—退避線内で床白線を見る。視線干渉なし。角は基準=テープ端で置き直し。
ログ(C)
名目干渉の芽:**『見てて』→『白線、見て』**で回避
曲がり角:半拍沈黙→置き直しで±0
◆更新案(短語辞書 1.0)
白板を三列に区切る。
I:運用短句(EP-1候補)
『合図→止まる』
『時間の穴→静止』
『交代=角』
『前後半拍』
『退避=一足』
II:三語テンプレ(会話)
『OK、進め/不要、止め』
『把握、実行/保留、照合』
『白線、見て』
『十分後、再開/次休憩、話す』
『質問、ひとつ』
『二拍後、再』
『速度、一定』
III:運用注意
手サイン=運用外(干渉−1)→口で三語
方位=短語で記述(『影=南濃』など)※EPとは別枠
辞書は薄く強く(増やしすぎない)
三ノ宮が判を置く。「1.0案、採用」
◆仕上げ一本(更新後の確認)
運用帯で1→2→3。前後半拍→最後→二拍。
A=俺:合図後にEP-1「前後半拍」。
B=イツキ:二拍末尾でEP-1「退避=一足」。
C=楓:交代時にEP-1「交代=角」。
配管のコトッにE-12bで二拍。被りなし。揺れなし。
集計(本日)
三語率:96%(過去最高)
被り率:**3%→1%**に低下(言い換え辞書の効果)
EP-1:三者各1回(配置=先/末尾/交代)
干渉:手サイン0(口三語へ定着)
ミレイユが二行で締める。
『曖昧→三語』
『薄く強く』
(胃評議会:ドーナツ→満場一致!)
◆配布(ポケット版 1.0)
志水が二つ折りカードを配る。片面はI〜IIIの要点、裏面は四問の枠。
『最後で数える/前後半拍/退避=一足』
『対象/場所/主体/時間』
—受け取った一年が親指サインを上げかけて、口で三語。「ありがとう、助かる」
三ノ宮がうなずく。「それ、採用」
◆廊下(二択)
掲示に**『短語辞書 1.0:配布』の小紙が増えた。歩幅は二人分、少し遅れて一人分。
テンポはたん、たん、たん**。
胸の中にポコン……。
A:この学園で静かに暮らす / B:全力で勝ちにいく
「保留」——曖昧→三語。言葉が短いと、足もそろう。今日の速度は、これでちょうどいい。




