三音整流
朝。実技室。輪っかライトは中、掲示はALT-02(暫定)と評価カード1.0。
その下に小さな追記紙が一枚。
【追記】
三音整流——合図(短音)のまとまりを明確化。1秒以内の連続音を一塊とカウント。
最後の音の終わり→二拍静止→再開。非走者は退避線内で白点を見ない。
志水が短音器を二台、窓際に反射板を一枚。音の反射/連鎖をわざと起こす準備だ。
「今日は三音を整える」ルナが指で三本の線を作る。
「数えるのは最後、待つのは二拍、見ないのは白点」
(胃評議会、静かにスタート)
—扉が開き、黒鐘イツキが入る。監督者へだけ会釈。見学席に楓。
ミレイユ教官は白板前、三ノ宮は机でメモを整える。
◆口頭要約(30秒)
三ノ宮が顎で合図。「短く」
「目的:三人交互の合図誤読をゼロに寄せる」
「手順:合図は1→A/2→B/3→C。1秒以内の連続音をまとまりとし、最後の音の終わりから二拍静止。走者のみ白点、非走者は退避線で床白線」
「評価:誤読0/R-10継続/逸脱<5%、EP-1=各自1回」
「例外:E-12b(外部音)に従い、名目干渉−2」
ミレイユが一行足す。「前静0.5拍/後静0.5拍——合図の前後は半拍、耳を黙らせる」
(三語で言えば『前後半拍』。覚えやすい)
◆演習1:反射で増えた音(誤って数えない)
志水が窓際の反射板へ向け、短音器でピッピと二回。その0.2秒後、反射がピと返る。
合計三音に聞こえる。
胸の中にポコン……。
A:三と数える / B:まとまり=二として処理
「B。二」
理由は短く。「1秒以内のまとまり。最後→二拍」
—俺(A)→イツキ(B)→楓(C)で回す。交代の二拍、視線は白点。非走者は退避線の内側で床白線。誤読は起きない。
ログ(反射)
合図誤読:0
逸脱:0.6%(カイ)/0%(イツキ)/0.5%(楓)
EP-1:イツキ「合図→止まる」を合図後に一回
◆演習2:連鎖音(1→2へ伸びる)
短音器を1回→0.7秒→1回と鳴らし、1秒以内で二音化。途中で樋の水滴がコトンと割り込む。
胸の中にポコン……。
A:E-12bで二拍を足す / B:まずまとまりを優先
「B→A」
——まとまりを二として取り、最後の終わりから二拍。
水滴はE-12bで延長不要(最後の音に吸収された)
ミレイユが白板に一行。「外部音がまとまり内なら吸収」
ログ(連鎖)
誤読:0(A→Bで運用)
E-12b:適用なし(吸収)
EP-1:楓「交代=白点」を交代時に一回
◆演習3:隣室の合図(別系統の混入)
廊下から、別班の1回合図がかすかに聞こえる。志水が意地悪く0.9秒差でこちらの2回合図を重ねる。
耳がどちらも拾う。
胸の中にポコン……。
A:近い音を優先 / B:監督者の視線方向を基準に決める
「B。視線方向」
ルナが即補足。「合図の主体=監督者。視線でこちらを指定。前静0.5拍で耳を一度黙らせる」
—前静0.5拍→ピッピ→後静0.5拍→二拍静止。カウントは2で確定。誤読なし。
ログ(隣室)
誤読:0(主体=監督者で線引き)
協調:楓が休憩帯に水を配り**+1**
◆微調整(三語で落とす整流メモ)
白板に三行、ルナが書く。
『最後で数える』
『前後半拍』
『視線で主体』
三ノ宮が付け足す。「名付け→圧縮は増やしすぎない。この三行で十分」
(覚える場所が三つなら、胃評議会も静か)
◆小さな事件:非走者の“見ちゃった”
最後の巡回。交代の二拍、退避線の内側で真白がつい白点を見てしまう。イツキの肩が一瞬だけ揺れた。
胸の中にポコン……。
A:続行 / B:干渉−1で記録→言い換え
「B。記録→言い換え」
ルナが静かに言う。「白点禁止→床白線」
真白は素直にうなずき、次の二拍では床白線へ視線を落とす。揺れは消える。
ログ(“見ちゃった”)
干渉:−1(記録)→次ターン修正
誤読:なし
EP-1:俺が終端前に一回「時間の穴→静止」
◆仕上げ(R-8へ)
三人で1→2→3を二巡。誤読0のまま、テンポはたん、たん、たん。
集計(本日)
R-8(ALT-02通算)
誤読:0
逸脱:0.6%/0%/0.5%(A/B/C)
EP-1:各1回(被りなし)
追記:外部音がまとまり内なら吸収、前後半拍の運用OK
ミレイユがまとめる。
「数えるのは最後、待つのは二拍。前後半拍で耳を黙らせる。主体=監督者で線を引く」
三ノ宮がスタンプを一つ。「三音整流、掲示追記。ALT-02は一週間の中日。次はR-10に届く」
イツキは白板を一度だけ見て、会釈。こちらは見ない。
けれど、前後半拍の沈黙だけは、同じタイミングで置けている気がした。
胸の中にポコン……。
A:この学園で静かに暮らす / B:全力で勝ちにいく
「保留」——最後で数える。焦らない。盛らない。言い切らない。今日の速度は、それでちょうどいい。




